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【マレーシア】全国で都市封鎖、1日から[経済](2021/05/31)

マレーシアのムヒディン首相は28日夜、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化しているとして、6月1日から生活に不可欠な業種を除いて経済や社会活動を停止するロックダウン(都市封鎖)を全土で実施すると発表した。期間は同14日まで。実施に伴って貿易産業省は30日、製造部門で操業が可能な18業種を公表した。今回の措置に対し、経済界からは給与補助や融資の返済猶予など企業への支援策を求める声が上がっている。

ロックダウンの期間中は国内の検問所をこれまでの600カ所から800カ所に増やし、移動制限の取り締まりを強化する(内務省のフェイスブックより)

ロックダウンの期間中は国内の検問所をこれまでの600カ所から800カ所に増やし、移動制限の取り締まりを強化する(内務省のフェイスブックより)

ムヒディン首相は「(28日に)1日当たりの感染者数が8,000人を超え、陽性者数は7万人を突破した」と述べ、医療機関の対応能力が逼迫(ひっぱく)していることからロックダウンに踏み切ると説明した。

現時点でロックダウンの期間は6月1~14日とし、新規感染者を減らすことに力を入れる。その後に「第2段階」として4週間、大規模な集会などを禁止した上で、いくつかの経済部門の操業を再開する。さらに「第3段階」で、現行の厳格な活動制限令による規制に戻すことを目指す。ほぼ全ての経済部門が感染防止のための標準作業手順書(SOP)を順守した上で操業可能となるのは、第3段階以降となる。実際の第2、第3段階への移行時期は、新規感染者数の推移や全国の病院の対応能力などに基づき決定する。

ムヒディン首相は、経済や社会活動を完全に停止することに伴い、近く企業への支援策を打ち出す考えを示した。また全国の病院の対応能力を引き上げるほか、早期の集団免疫獲得に向けて1日当たりの新型コロナワクチンの接種回数を引き上げる方針も打ち出した。

■自動車などは10%の出社可能

貿易産業省は30日、製造業および製造業関連でロックダウン中に操業が可能な18業種を公表した。電気・電子製品や石油・ガスなど13業種では全従業員の60%まで、自動車や鉄鋼など5業種では10%まで出社を認める。

ロックダウン中に操業する企業は、企業の操業状況を確認するための「新型コロナウイルス感染症インテリジェント・マネジメント・システム(CIMS)3.0」<https://notification.miti.gov.my/login>を通じて、操業許可証を入手しておく必要がある。同システムに未登録の企業については、31日午後1時から新規登録を受け付ける。

■100万人以上が失業の恐れ

ロックダウン実施の決定を受け、業界団体からは政府に対し支援策を求める声が相次いだ。

マレーシア製造業者連盟(FMM)は29日に声明を出し、「中小企業が新型コロナの影響から回復途上にある中でのロックダウンは、事業の継続と雇用に壊滅的な打撃を与え、100万人以上の失業者を出す恐れがある」と指摘した。

その上で、政府は企業向けの緊急支援を行うべきだとして、▽3カ月以上の融資の返済猶予▽給与補助金制度の復活▽公的年金に当たる従業員積立基金(EPF)などへの拠出金の支払い停止・猶予▽輸出向けの受注を抱える製造業者への生産能力の半分での操業容認▽港湾、倉庫、物流サービスなどでの輸出入業務の継続容認▽24時間運転が不可欠なプラント・炉・窯などの保守作業の容認――などを求めた。

マレーシア経営者連盟(MEF)も同日付の声明で、「服用が必要な苦い薬」だとしてロックダウンに理解を示しつつも、「企業が事業を継続できるよう、給与補助や融資返済の猶予といった支援策が必要だ」と主張した。

同連盟のサイド・フセイン会長は「昨年3月に敷かれた厳格な活動制限令でほぼ全ての経済活動が停止した際のように、経済損失は1日当たり24億リンギ前後に上る可能性がある」と指摘。財務省は以前、ロックダウンを実施すれば280万人が職を失い、中小企業の4割が廃業に追い込まれるとの試算を示していたとして、「(期間中に操業が可能な)生活に不可欠な業種に含まれない零細企業などは存続できなくなるだろう」と訴えた。

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