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【ベトナム】海上運賃再値上げが収益圧迫[運輸](2021/05/28)

世界の海運大手各社が5月中旬以降、コンテナの輸送運賃を相次ぎ引き上げた。昨年後半から続く海運費の高騰は、ベトナムでも輸入穀物や鉄などの原材料高騰を招いており、輸出入に依存する大手企業各社の収益を圧迫している。4月下旬ごろに天井を打ち一度は落ち着くかに見えた海上輸送コストの上昇傾向が止まらなければ、新型コロナウイルス感染第4波で需要の落ち込みが懸念されるベトナム経済のさらなる重しになりかねない。

海運のさらなる値上げで輸出入業者の不満が高まっている=ホーチミン市内

海運のさらなる値上げで輸出入業者の不満が高まっている=ホーチミン市内

今月から海上コンテナの船賃を引き上げたのは、ドイツのハパックロイド、スイスのメディタレニアン・シッピング・カンパニー(MSC)、フランスのCMA―CGMなど。

国営ベトナム通信(VNA)などによると、ハパックロイドは今月15日から、東アジア―北米・カナダ間の運賃を20フィートコンテナで960米ドル(約10万5,000円)、40フィートコンテナで1,200米ドル値上げし、すべてのドライ・カーゴ(液体貨物などの非乾貨物以外の通常貨物)に適用した。同社は値上げの理由を明らかにしていない。

MSCは今月18日から1コンテナ(20フィート)当たり800米ドルの値上げを発表。海運需要がピークシーズン入り、用船費が上昇していることを理由に挙げた。フランスのCMA―CGMも今月中旬から、アフリカのソマリアと北ヨーロッパ、地中海、黒海、インド、パキスタンなどをつなぐ航路のコンテナ運賃を引き上げた。

3社はベトナムを含むアジア各国発着の航路でも一定のシェアを持つ世界的な海運大手で、ベトナムの輸出入品の輸送にも大きく関わっている。海運業界の国際運賃設定は欧州系大手が主導権を握っており、日系海運大手3社などが出資するシンガポール拠点のコンテナ会社オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)などが追随する可能性もある。ベトナムの輸出入業者にとっては大きな打撃になりそうだ。

■米国向けが高騰、港湾混雑理由か

南部ホーチミン市を拠点に海運・航空貨物輸送などを手掛けるブルーシー・カーゴ・ロジスティクス交通社のズオン・タイン・ラン副社長によると、海上貨物運賃は4月下旬まで数カ月間、ピーク時に比べる低下していたが、5月に入ってからは再び上昇を続けている。中でも米国向け運賃の上昇幅が最も大きい。米国西海岸向けの運賃は4月末時点では40フィートコンテナ1個当たりで4,000~5,000米ドルだったが、現在の見積もり額は1万米ドルを超えているという。

欧州向けの運賃も上昇しており、昨年の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以前は1,000~1,500米ドルの水準だったが、現在は7,000~8,000米ドルにまで跳ね上がっている。

ラン氏は、海運会社の値上げについて「港湾の混雑に起因しているのではないか」と指摘。各企業は特に米国への輸送を迅速に行いたい意向があり、アジアから北米への海上輸送の玄関口である米国西海岸の港湾でコンテナ取扱量の増加が続いている。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、取扱量の増加で港湾混雑も顕著になり、昨秋以前はロサンゼルス港があるサンペドロ湾沖で停泊許可を待つコンテナ船は数隻程度にとどまっていたが、今年4月6日時点では停泊許可待ちは20隻程度に増加し、平均停泊期間も延びている。

中部ダナン市の水産業、トゥオンフォック水産貿易社のチャン・バン・リン会長はそれでも、「われわれのようの業者は値上げを受け入れざるを得ない」と話す。運賃が高いという理由で注文をキャンセルしたり、配送を遅延させたりすれば、顧客からの信頼や評判を失うため、輸出入活動を停止することはできないという。

■コロナ前の水準に戻りづらい

海運運賃の高騰により、小規模な輸出入業者は廃業や一時休業に追い込まれているが、ある専門家はコンテナ不足が解消され、新型コロナウイルスの抑え込みに成功したとしても、コンテナ運賃が新型コロナウイルス流行以前の水準に戻るのは非常に難しいと分析する。主要な海運会社が価格設定の主導権を握っており、以前の損失を補うために高騰した価格水準を今後も維持する可能性が高いと見ている。

海外の海運大手のベトナム駐在所・代理店などには、関連業者から「運賃上昇は不合理だ」との抗議が数多く寄せられているが、こうした拠点は集荷や諸手続きが主業務で、価格決定の主導権はあくまで本社にあるという。

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