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【中国】中国IT大手が存在感[車両](2021/04/21)

19日に開幕した上海モーターショーで、中国のIT大手が存在感を示している。インターネットサービス大手の百度(バイドゥ)、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)がそろって本格的なブースを展開。自動車分野に注力する姿勢をアピールした。自動車業界では近年、車両の電動化やIT化が進んでおり、自動車メーカーとIT企業の協力関係は深まるばかりで、こうした関係性がモーターショーにも反映された形だ。

バイドゥは上海モーターショーに初めて出展。開幕初日には発表会も行った。中国のモーターショーで、IT企業が単独で発表会を開催するのは異例だ。

バイドゥの集団資深副総裁で、スマート運転事業群の総経理でもある李震宇氏は、同社が独自開発した自動運転システムプラットフォーム「アポロ」の技術を搭載した車両が、今年後半から毎月1車種発売されるとの見通しを示した。今後3~5年でアポロ搭載車を100万台まで増やすことを目指す。

李氏は、「(自動運転車を含む)スマートカーの猛烈な発展の勢いは既に確定している」との見方を示した上で、アポロの開発がデジタル化への転換とスマート化のレベルアップを自動車メーカーにもたらすと強調。開発に対する自信をのぞかせた。

李氏によると、アポロを立ち上げてから4年で、レベル4(走行を特定の場所に限って完全自動化する自動運転技術)に対応する自動運転車の走行試験の累計距離が1,000万キロメートルに達したという。

発表会には、「新エネルギー車(NEV)」ベンチャー、威馬汽車科技集団(WMモーター)の沈暉・董事長も登場。威馬汽車は16日に発売したばかりの電気自動車(EV)「W6」に、バイドゥと共同開発した自動駐車システム「アポロ・バレー・パーキング(AVP)」を搭載するなど、バイドゥとの関係を強めている。

バイドゥの李震宇氏は、上海モーターショーの開幕日に開催した発表会で講演した=19日、上海市

バイドゥの李震宇氏は、上海モーターショーの開幕日に開催した発表会で講演した=19日、上海市

■ファーウェイは共同開発の自動運転車展示

ファーウェイは自社ブースで、自動車のスマート化を支援する事業を紹介した。ブース内に設けられた各コーナーでは、◇スマートコックピット◇スマート車両コントロール◇スマート車載クラウドサービス◇商用車・特殊車両ソリューション◇先進スマートセンサーソリューション◇スマート運転コンピューティングプラットフォーム――などに関する展示を行った。中でもクラウドのコーナーに注目が集まった。

ファーウェイと自動車メーカーの協力は既に具現化している。モーターショーに先立つ17日、EVメーカーの北京新能源汽車(北汽新能源)は、ファーウェイの自動運転システムを一部モデルに搭載した新型車「アークフォックスアルファS(極狐阿爾法S)」を発表。ファーウェイのシステムを搭載した「HI版」には3つの次世代センサー「LiDAR(ライダー)」、6つのミリ波レーダー、12のカメラなどのほか、演算能力400TOPS(1秒間に400兆回)のファーウェイ製チップなどを採用した。

ファーウェイのブースでは同車の展示が行われ、車両の周辺は黒山の人だかりとなり、市場の関心の高さを示した。また同社ブースでは欧米系自動車メーカーとみられる関係者の姿が多く見られたことも特徴だ。

ファーウェイの自動運転システムを搭載した北京新能源汽車の新型車「アークフォックスアルファS」の展示スペースには大勢の人が詰めかけた=19日、上海市

ファーウェイの自動運転システムを搭載した北京新能源汽車の新型車「アークフォックスアルファS」の展示スペースには大勢の人が詰めかけた=19日、上海市

中国メディアによると、インターネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)と広州汽車集団(広汽集団)が、モーターショーに合わせて提携関係を一段と強める契約を交わした。

こうしたIT大手と自動車メーカーの関係強化を巡って、日産自動車と東風汽車集団の合弁、東風汽車の山崎庄平総裁は、「(中国IT大手との協力について)オープンに考えている」と述べ、必要に応じて協力関係を築く用意があることを示唆した。

車載電子部品メーカーの関係者は、車両の電子化が今後一段と進むとの見方を示し、「EVは自動運転との相性がよいため、EVの普及が進めば、自動運転の普及も加速し、自動運転車が増えれば、車載電子部品の重要性がますます高まる」と強調した。

■新興NEVメーカーに新たな動き

今回のモーターショーでは、新興NEVメーカー、ブランドに新たな動きが見られた。

中でも、上海汽車集団(上汽集団)傘下のEVメーカー、智己汽車科技や、東風汽車集団のNEV部門である嵐図汽車科技(VOYAH)、浙江吉利控股集団傘下のEVメーカー、寧波極ケ智能科技(ZEEKR、ケ=きがまえに克)の3社に注目が集まった。

智己汽車は量産モデル第1号となるセダン「智己L7」を披露し、予約販売の受け付けを開始した。予約販売価格は40万8,800元(約680万円)と、ハイエンド帯に設定した。航続距離は655キロ。流線型のボディーで、空気抵抗の少なさをアピールした。インパネ部分に設けた液晶ディスプレーは運転席から助手席にまで達しており、中国で車両のIT化が一段と進んでいることを印象付けた。

嵐図汽車は量産モデル第1号となるスポーツタイプ多目的車(SUV)のEV「FREE(フリー)」を発表し、予約販売の受け付けを始めた。予約販売価格は31万3,600~33万3,600元。同車も同様にインパネの液晶ディスプレーが助手席にまで達している。

極ケはモーターショーに先立つ15日、量産モデル第1号となるセダン「極ケ001」を発売した。価格は28万1,000~36万元。モーターショーのブースでは同車を3台展示した。

これまで30万元を超える高価格帯のNEVは上海蔚来汽車(NIO)と理想汽車(Liオート)が強みを持っていたが、今後は競争が激化することも予想される。

嵐図汽車は量産モデル第1号となるSUV「フリー」を披露した=19日、上海市

嵐図汽車は量産モデル第1号となるSUV「フリー」を披露した=19日、上海市

■新興勢4強は既に“老舗”か

中国では政府の後押しもあり、2015年ごろから新興NEVメーカーが乱立したが、19年ごろに蔚来汽車、理想汽車、威馬汽車、小鵬汽車(Xpeng)の4社が頭角を現した。新興勢の「4強」とも称され、ここ数年のモーターショーで注目を集めてきたが、今回のモーターショーでは「より新しい新興勢」に注目が移った感がある。

経済ニュースサイト財経系のメディアは4強について「新興勢力の老舗ブランド」と称した。今回のモーターショーで新たな勢力が登場したことにより、4強は既に新興勢の“老舗”になったと評した。

より新しい新興勢の挑戦を受けて立つ形となった4強だが、筆頭格とされる蔚来汽車は今回のモーターショーで次世代型の電池交換ステーションを紹介したものの、大きな話題とはならなかったようだ。小鵬汽車は3モデル目となるセダン「P5」を14日に発表したため、今回の目玉とはならなかった。理想汽車は展示を行ったが、発表会の開催は見送った。

販売の伸びが目覚ましい4強だが、今回のモーターショーでは注目度が相対的に下がった印象が否めないようだ。(上海・川杉宏行)

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