スタートアップの資金調達・ビジネスマッチングサイト

【ミャンマー】米国が貿易・投資枠組み停止[政治](2021/03/31)

クーデターを起こしたミャンマー国軍の市民への弾圧が激しさを増す中、米政府は29日、民政移管後に締結した貿易・投資枠組み協定(TIFA)の停止を発表した。日本は茂木敏充外相が30日、新たな政府開発援助(ODA)を凍結していると説明。抗議活動による混乱も収束しておらず、経済失速に歯止めがかからない状態だ。

米通商代表部(USTR)が29日、ミャンマー政府と締結していたTIFAで合意している全ての取り決めを停止すると発表。期限は民主的に選ばれた政権が復活するまでとし、明示していない。ミャンマー産品の輸入関税を引き下げる「一般特恵関税制度(GSP)」も、見直しを検討するとした。

TIFAは、民政移管後の13年に両国が合意した。両国が、外国投資や貿易を促進するための規則や行政能力の強化を目指し、年1回以上の会合を持つことなどを規定。16年には、TIFA推進に沿い、100以上のミャンマーの個人・団体が、米財務省外国資産管理室(OFAC)の制裁対象(SDN)リストから除外された。しかし、停止を機に、再び貿易や金融に関する制裁が検討される恐れもある。

クーデター後の2月下旬にODAの新規案件を停止する検討を開始したと明らかにしていた日本は、茂木外相が30日の参院委員会で「経済援助の新規案件はない」と表明した。

日本の支援は、ミャンマー初の経済特区(SEZ)開発や道路、鉄道、港湾などのインフラ整備、市民の生活に関わる医療、教育分野など広範囲にわたる。多数の進出日系企業も携わることから、進行中の案件については個別での見直しが実施されている。

案件が停止されれば大きな打撃となるが、進出する日本企業の幹部は「人道的な見地からは、どうしようもないところまで来ているかもしれない」と話す。クーデター後、国軍の銃撃などで死亡した一般市民は、29日までに累計で510人だ。

世界銀行は26日、ミャンマーの20年度(20年10月~21年9月)の国内総生産(GDP)成長率が、クーデター後の混乱でマイナス10%に落ち込むと予測。地元の中小企業経営者は「民政移管前の世界に戻ってしまうのか」と嘆いた。

国軍の弾圧が長引き、各国の対応は色分けが鮮明になっている。米国と足並みをそろえる欧米は、英国が国軍系複合企業1社を制裁対象とした。

欧州連合(EU)は開発計画の支援凍結を表明したが、GSPの停止については検討を見送っている。GSPの恩恵を受ける縫製業にとってEUが最大の輸出先であり、影響が大きいことが背景だが、「EUが米国の方針発表を受けて、一歩踏み込む可能性も出てきた」とみる業界関係者もいる。韓国は3月に入り、開発協力事業の再検討と軍事協力の停止を発表した。

■静観する隣接国

一方、国境を接する中国やインドは、暴力停止を訴えるものの国軍を非難せずに静観を続ける。27日の「国軍記念日」に行われた軍事パレードにも、武器などの提供で関係が深いロシアとともに、国防部門の外交官が出席した。

国民民主連盟(NLD)の議員らが設立した「ミャンマー連邦議会代表委員会(CRPH)」が支援を求める国連は、安全保障理事会が中国、ロシアの反対から厳しい介入措置に踏み切れない。欧米などの経済制裁は相次ぐが、国際社会が一丸となった事態打開への圧力はかけられないままだ。

シンガポールなどが強い非難を表明する東南アジア諸国連合(ASEAN)も、内政不干渉の立場を堅持している。国軍記念日のパレードには、軍事政権のタイや独裁体制のベトナム、ラオスの3カ国が参加した。インドネシアやシンガポールが、ミャンマー情勢の打開を話し合う特別首脳会議を提唱している。

関連記事

公式Facebookページ

公式Xアカウント