【香港】香港と本土結ぶリニアに注目[運輸](2021/03/26)
中国本土と香港を結ぶリニアモーターカー路線を建設する計画が注目を集めている。広東省広州市政府がこのほど示した路線図で、同市の広州東駅と香港中心部の西九龍駅を結ぶ構想が明らかになった。計画は初期段階にあるとみられるが、飛躍的なアクセス向上が期待され、本土の交通運輸省幹部は早期の開通に意欲を示した。
「(路線)建設を推進し、早期にリニアが香港まで開通することを望んでいる」。中国の王志清交通運輸次官は24日に北京で行われた会見で、リニア路線を香港まで延伸させるかどうかについて香港メディアから質問を受け、こう答えた。
中国のリニア路線建設を巡っては、広東省政府が2月上旬に発表した2020~35年の国土利用計画で「京港澳高速リニア」と「滬(深)広高速リニア」の2路線を整備する計画を盛り込んだ。
同計画で示された地図を見ると、京港澳高速リニアは同省北部の韶関から広州を経て同省珠海に南下するルート、滬(深)広高速リニアは広州から同省深センを経て同省スワトー方面へと東西に延びるルートとなっている。
地図を見る限りでは、両路線が香港に延伸されるかどうかはっきりと分からないが、明報によると、広州市政府が2月下旬に明らかにした路線図では、同市中心部の広州東駅から同市南沙を経て、香港の西九龍駅に至るルートが示された。
■香港―広州わずか20分
中国が計画しているリニアは時速600キロメートルに達する。明報によると、香港―広州間がリニアで結ばれた場合、所要時間は単純計算で20分に短縮されるという。
現在、西九龍駅と広州市郊外の広州南駅を結ぶ高速鉄道「広深港高鉄」の所要時間は約1時間、紅カン(ホンハム、カン=いしへんに勘)駅と広州市中心部の広州東駅を結ぶ在来線列車「広九直通車」は約2時間を要することから、開通後は香港から広州への日帰り出張のハードルはぐっと下がるとみられる。
本土の大都市への移動の利便性も高まる。香港に隣接する深センから北京、上海までの距離はそれぞれ2,200キロ、1,500キロ。時速600キロのリニアで移動できれば、深セン―北京間の所要時間は約3時間40分、深セン―上海間は約2時間半となる。運賃設定にもよるが、リニアと航空機との激しい競争が起こりそうだ。
■香港政府「現段階で計画なし」
直近で明らかになった二つの計画は、広東省政府と広州市政府が発表したもので、今後さまざまな段階を経て具体的に練り上げられていくものとみられる。ただ、既に関係者の関心は高いようだ。
中山大学港澳珠デルタ研究センターで教授を務めた鄭天祥氏は明報の取材に「中国で初めて都市間を結ぶリニア路線は深センか香港に駅が設けられ、北京あるいは上海と直接結ばれる可能性が高い」と指摘した。
鄭氏は、深センと香港の人口が合計で3,000万人を超えることなどを挙げた上で「経済が発展し、ビジネスのニーズは大きい」と強調。両都市の市民が利用しやすいよう「リニアの駅は深センと香港の境界に設けるのがふさわしい」と述べた。
ただ、香港政府は2月末の時点ではネットメディア香港01の取材に対して「香港政府として現段階でリニア路線建設の計画はない」としながらも、長期的な観点から、広東省と香港、マカオの3地域で一体的な経済圏を目指す「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」構想対象地域の輸送需要に対応するため「新たな越境交通インフラ需要や効果を検討する」と説明した。