【ミャンマー】不服従運動、貿易にブレーキ[経済](2021/03/17)
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ミャンマーで、国軍に対する「市民不服従運動(CDM)」の拡大を背景に、貿易額が急減している。2月13~26日の2週間で、輸出は4億3,000万米ドル(約468億円)で前年同期比55%減、輸入は3億2,000万米ドルで61%減と、ともに大きく落ち込んだ。製造業の稼働率低下や、税関をはじめとする官公庁の機能不全、金融機関の休業などで、貿易の停滞が深刻化している。
国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーなどから、NNAが輸出入概況をまとめた。週ごとに貿易統計を発表していた商業省のホームページは、閲覧できない状態にある。
輸出額と輸入額は年明け以降、増加基調で推移した。輸出は、1月1~15日の6億1,700万米ドルから16~29日には9億5,000万米ドルに伸びたが、クーデターがあった2月1日を境に暗転。2月12日までの2週間は7億7,000万米ドルに、26日までの2週間は4億3,000万米ドルと週を追うごとに落ち込みが加速した。
前年同期との比較でも、12日までの2週間は中国の春節(旧正月)にあたり同国への国境経由の輸出が伸びて前年同期を上回ったものの、続く2週間は前年の半分の水準にも届かなかった。
輸入の減少はより深刻だ。1月29日までの2週間は9億1,000万米ドルだったが、2月12日までは4億9,000万米ドルに、26日までは3億2,000万米ドルに急減した。新型コロナウイルスの感染拡大により中国からの輸入が停滞していた1年前と比較しても、26日までの2週間は61%減少している。
■「ヤンゴンの輸出9割減」
輸出入の急減は、CDMへの参加者が幅広い業種に及んでいることが最大の理由だ。港湾の船舶代理業務を行う船舶代理局(SAD)の職員や、トラック運転手らが勤務を拒否。政情不安の高まりを受けて、ミャンマーへの寄港を敬遠する海運会社も相次ぎ、物流が滞った。
3月12日付フロンティアによれば、国内の貿易量の7割を占めるとされる最大都市ヤンゴンの港湾で、貨物の滞留が深刻化している。貨物取扱業者やトラック業界関係者らは、「輸出量は平常時より9割減、輸入は8割減」と口をそろえる。
■必需品の輸入に不安
CDMの長期化は、輸出品の確保にも影響を与えている。国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーによれば、東部モン州では、銀行の休業で送金が困難になった結果、ゾウコンニャクの原料を調達できず、加工施設が操業を一時停止した。
共同通信によれば、カジュアル衣料品「ユニクロ」と低価格ブランド「ジーユー(GU)」を展開するファーストリテイリングの取引先の縫製工場が14日、放火被害にあった。同社は、それまでにもミャンマーからの調達について「一部商品に生産や物流の遅延」が生じていることをNNAに認めている。放火被害でさらなる影響が懸念される。ロイター通信によれば、スウェーデンのH&Mは、ミャンマー工場への発注を見合わせている。
懸念されるのは、海外から輸入される必需品の不足だ。ロイター通信によれば、CDMで銀行が休業に追い込まれていることを受け、海外の石油元売り業者が信用状での決済を渋るようになってきている。世界の燃料価格をまとめたサイト「グローバル・ペトロール・プライシース」によれば、ミャンマーのガソリン価格は、クーデターから3月8日までに2割上昇。物価高騰の兆しが出てきた。
大手コメ輸出業者のソ―・トゥン氏はフロンティアに、「仮に燃料が不足するようになれば、産業機械や建機、交通機関が止まってしまう」と懸念を示している。