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【ミャンマー】NLD代表組織の台頭に弾圧[政治](2021/03/08)

ミャンマーでクーデターにより全権を掌握した国軍に抵抗する、国民民主連盟(NLD)の議員らが立ち上げた独自組織「ミャンマー連邦議会代表委員会(CRPH、Committee Representing Pyidaungsu Hluttaw)」が「臨時政府」としての動きを活発化している。外交担当者や閣僚代行を選び、自らの正当性を内外に発信。傘下の自治組織も増えた。国連に公認されず、国内でも統治の揺らぎにいらだつ国軍側は、同組織の活動が反逆罪に抵触すると発表して弾圧を強めている。

CRPHへの支持を示しながら行進するデモ隊=2月28日、ヤンゴン(NNA)

CRPHへの支持を示しながら行進するデモ隊=2月28日、ヤンゴン(NNA)

クーデター後、NLD党首のアウン・サン・スー・チー氏ら幹部を含む主要メンバーは拘束されたままだ。CRPHは、昨年11月に行われた選挙結果の正当性とNLD政権の維持を目的に発足した。総選挙で当選したNLDの議員ら17人で構成する。これまでに4人を経済、労働などを担当する閣僚代行に据えた。対外的には、慈善家として知られる北西部チン州のササ医師(Dr. Sasa)を国連特使に選出。米国にも事務所を置く。

CRPHは、これまでに武力行使で抗議デモの参加者など50人以上の犠牲を出した国軍の最高意思決定機関「国家統治評議会(SAC)」を、テロリスト団体と糾弾する声明を発表。また、5日に行われたミャンマー問題に関する国連緊急会合の前には、自国民の保護義務を果たす意志がない国家に対し国際社会が「保護する責任」を負う「R2P」を、適切な組織の協力により発動することなどを求めた。ササ医師は、欧米の民間放送局の番組にも出演し、国際世論の形成を図っている。

国内ではクーデター後、国軍が治安維持を名目に新たな地域組織を各地に設置すると発表し、多くの地域で担当者を任命したが、住民が激しく反発。最大都市ヤンゴンや第2の都市マンダレーなど各地で、CRPH傘下の別組織が発足した。ヤンゴンでは、軍の施設があるココジュン郡区(ココ諸島)を除く全郡区で設立された。

民主派の市民の大半がCRPHの支持者だ。ヤンゴン在住の主婦、スー・スー・エーさん(43)は「CRPHには、武力から住民を守る力はないが、国軍のように弾圧はしない。一刻も早く、選挙で選ばれた真の政府であると国際社会に認識してほしい」と話す。

■国軍、反逆罪を適用

国軍側はCRPHへの弾圧を強めており、5日夜には、労働担当の閣僚代行を務めるゾー・ワイ・ソー氏を訴追した。軍政に抗議を示すため医療従事者が業務を放棄する市民不服従運動(CDM)を扇動した容疑だ。

さらに、CRPHを反逆罪(刑法122条)に抵触する違法団体として取り締まるとも発表した。有罪なら死刑もしくは終身流刑か、22年の懲役が科される重罪となる。国軍は、CRPHに流れる海外からの資金の監視も強めており、CRPHの活動を抑え込もうとしている。

昨年の総選挙では改選議席の8割以上をNLDが獲得。欧米や日本を含む海外の監視団は、選挙は公正に行われたと表明していた。

7日、治安部隊への抗議が路面に書かれたヤンゴン中心部の通り。終日、バリケードが築かれている(NNA)

7日、治安部隊への抗議が路面に書かれたヤンゴン中心部の通り。終日、バリケードが築かれている(NNA)

国連は現在、クーデターを起こした国軍側を正式な政権と認めていない。国連のブルゲナー事務総長特使(ミャンマー担当)は5日の会見で、自国のクーデターを糾弾して国際社会の支援を求め、国軍に解任されたミャンマーの国連大使、チョー・モー・トゥン氏の任務継続を支持する姿勢を示した。

ミャンマーで事業を行う外国企業も国軍側との接触にちゅうちょしている。軍事政権は外国投資の誘致拡大を主要施策に掲げ、ミャンマーにある各国の経済団体に面談を呼び掛けたが、米国、欧州連合(EU)、イタリアの3団体は連名で、これを拒否する声明を出した。ミャンマー日本商工会議所(JCCM)も断った。

■正式政府とまだ認められず

一方、現時点では国際社会や経済界がCRPHを正式な臨時政府として認め、今後の解決に向けたテーブルに着く段階には至っていない。CRPHには行政機構がない上、NLD政権下の閣僚の大半が今なお拘束中で、組織に加われていない。構成メンバーがNLD所属者に偏っていることも理由だ。

4日にミャンマーの市民を支援する独立組織を立ち上げた元国連調査団メンバー、クリストファー・シドティ氏は「正式に政府代表と認識されるには総選挙で選ばれた全議員が代表になることが重要だが、逮捕者もおり、現状では難しい」と指摘。ただ「CRPHが、軍事政権よりも、国際社会に対して強く正当性を主張できていることは確かだ」と加えた。

同じ独立組織に参加する李亮喜氏(国連の元ミャンマー担当特別報告者)は、CRPHが全ての少数民族が参加する組織になることが、国連や国際社会に正統な政府と認められる一条件になるとも提言する。

弾圧が強まる中、CRPHはササ医師を前面に立て、東部カイン州(旧カレン州)を拠点とする少数民族政党のカレン民族同盟(KNU)などとの対話を進めている。

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