【シンガポール】ASEAN加盟国の非難強まる[政治](2021/03/03)
東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の間で、ミャンマー情勢に対する非難の声が高まっている。同国国軍による発砲などで多数の犠牲者が出ているためで、シンガポールのリー・シェンロン首相は2日、「国軍による致死的な実力行使は受け入れられない」と強い口調で批判した。加盟各国の他の閣僚からも、事態の収束に向けて早急に対応する必要があるとの声が相次いでいる。同日にはASEAN臨時外相会議が開催され、会議後にミャンマーを平和的かつ建設的に支援するとの議長声明を出した。
ASEANは内政不干渉を原則としており、各国のミャンマー対応には温度差がある。ただ主要国の首脳や外相らは、ミャンマーの情勢に懸念を深めている。ASEANで一致した対応を取るため、合意形成に向けた地ならしの協議が進められている。
シンガポールの情報通信省によると、リー・シェンロン首相は2日、ミャンマー問題について英BBCのインタビューに応じ、「民間人や平和的なデモ参加者に対する国軍の致死的な実力行使は受け入れられない」との見解を表明した。
「アウン・サン・スー・チー氏らを拘束しても問題解決にはならない」と述べた上で、釈放して平和的な話し合いが進んでほしいと訴えた。
シンガポールのバラクリシュナン外相も1日、国会でミャンマー問題について言及し、「市民への武器の使用にはぞっとする。不安定な情勢が長期化すれば、同国だけでなくASEAN全体にとっても深刻な結果をもたらす」と強い懸念を表明。ミャンマー国軍に対し、直ちに武力行使を中止するよう求めた。
ASEAN主要国の動きではこのほか、タイ外務省が3月1日、「ミャンマーの情勢を懸念を持って注視している」との声明を発表。全ての当事者に自制を促すとともに、平和的解決に向けて話し合うよう求めた。
マレーシアのヒシャムディン・フセイン外相は同日、今年のASEAN議長国ブルネイの国王と会談した際に、深刻な懸念を表明した。マレーシアはムヒディン首相が先月5日、インドネシアのジョコ大統領と会談した時に、「民主化プロセスの後退だ」といち早く今回の事態を非難していた。
2月28日には、インドネシア外務省が声明で、ミャンマー国軍のクーデターに対する抗議デモ参加者へ治安当局が銃撃し、死傷者が増えていることについて「暴力の高まりを深く懸念する」と表明。国軍の治安部隊に最大限の自制を要求した。
シンガポール国際問題研究所(SIIA)のサイモン・テイ会長は先月半ば、「ASEAN各国によるミャンマー国軍への呼び掛けは、日本や韓国、オーストラリアなど東南アジア以外の国にとってもミャンマー国軍への今後の対応を迫る上で役立つ」との見方を示していた。
■臨時会議、国軍任命の外相も出席
2日には、オンライン形式でASEANの臨時外相会議が非公式の形で開催されミャンマー情勢を協議した。同国国軍のクーデター発生後、ASEANが今回の問題を話し合うのは初めてだった。
ミャンマー国軍の外相に任命されたワナ・マウン・ルウィン氏も出席。シンガポールのCNAによると、マレーシアのヒシャムディン外相は、迅速かつ無条件でスー・チー氏らを解放するよう要請した。
会議後には、「状況を懸念する」と明記した上で、「ASEANの結束を深めるため、加盟国はミャンマーを平和的かつ建設的に支援する用意がある」とする議長声明を発表した。
ミャンマーでは2月28日、治安部隊の発砲などで少なくとも18人が死亡するなど国軍によるデモ弾圧が強まっており、国際社会からの非難の声が高まっている。1日には、国軍に銃撃されて亡くなったとされる犠牲者を追悼する集会が最大都市ヤンゴンを含む各都市で開催された。