【ミャンマー】米欧が国軍に圧力強める[政治](2021/02/11)
ミャンマー全域で連日行われている軍事クーデターへの抗議デモで、初めて命の危険にさらされる一般市民の被害者が発生した9日、米欧が国軍を強く非難した。欧州連合(EU)の幹部は制裁の検討を表明し、圧力を高めた。国内では10日も、5日目となるデモが継続。日本などを含む在外公館や国連事務所の前で、「ミャンマーを助けて」と訴える市民の姿も増えている。
首都ネピドーでは9日、警察当局のゴム弾発砲により複数の負傷者が出たほか、女性1人が脳死状態となった。女性の病状をみた医師の1人によると、女性は頭部に銃弾を受けた疑いがあり、「手術をしても助かる見込みはない」という。女性は、10日正午時点で集中治療室(ICU)に入ったままだ。
ロイター通信によると、米国務省のプライス報道官は同日、ネピドーでの重篤な負傷者発生を受け、国軍に対し「権限を放棄し、暴力行為をやめるよう繰り返し要請する」と非難。EUのボレル外交安全保障上級代表も、「制裁を検討している」と述べた。
EUはクーデター発生翌日の2日、民主主義の勝利のために「あらゆる手段を検討する」との声明を同代表が発表し、制裁発動の可能性を示唆していたが、一歩踏み込んだ形だ。「制裁により、一般国民には打撃を与えてはならない」とした上で、個人と国軍所有の企業に対する追加制裁を検討していると述べた。
EUはミャンマーに対して、武器以外の産品をEUへ輸出する際の関税を減免する「一般特恵関税制度(GSP)」を適用。ミャンマーではGSPを活用したEUへの縫製品輸出が盛んだ。国連ミャンマー事務所によると、縫製産業には約70万人が就労しており、労働者に影響を与える制裁は避けられる可能性がある。
最大都市ヤンゴンでは、国際社会が国軍に対する圧力を強めることを願い、デモ隊が在外公館や、国際機関の事務所前で支援を訴え始めた。在ミャンマー日本大使館の前では10日、「ミャンマーを助けて」「ミャンマーに正義を」などと、日本語でメッセージが書かれた紙を持った若者が座り込み、支援を求めた。
米国大使館や国連事務所の前にも、民主化復帰への助けを求めるグループが訪れ、国際社会に支援を求めている。
■中国大使館前で非難のデモ
一方、中国大使館前では、抗議のデモが発生。参加者は「国軍の味方をするな」「中国正月の赤い封筒(祝儀)はいらない」などと記した紙を掲げた。中国は、同じ国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアとともに、クーデターへの非難を避けている。
ヤンゴンでのデモは市内全域に及んでおり、参加者は学生や活動家、医療関係者、公務員の団体、労働組合などさまざま。年齢層も幅広い。レーダン地区や中心部のスーレー・パゴダ(仏塔)付近などでは、交通渋滞が発生。レーダン地区では、当局とデモ隊がバリケード越しににらみ合いを続けているが、衝突や放水によるデモ隊の強制排除などはなかった。
幹線道路沿いのコンクリート壁を利用して、抗議メッセージを書いたポストイットを張り付ける運動も始まった。「早く民主的な世の中を」と書いた女性は「クーデターが起きてから恐怖感にさいなまれ、自分の国なのに牢屋にいるようだ」と嘆く。運動を始めたシュエ・エイ・チョーさん(26)は「もっと運動を広げ、世界の人にミャンマーで大変なことが起きていると知ってほしい」と話した。
デモは首都ネピドーや、既に多数の逮捕者が出ている第2の都市マンダレーなどでも続いている。