【香港】本土に拠点置く製造業の役割強調、工業総会[経済](2021/01/28)
香港の有力経済団体の一つ香港工業総会(FHKI)は26日、香港の製造業を対象に実施した調査のリポートを発表した。香港の製造業者の中には広東省など中国本土に生産拠点がある企業も多いが、香港の各種統計で分類される「製造業」には香港に生産拠点がある企業の実績しか含まれていない問題点を指摘。香港政府に対して香港資本の製造業者の活動を詳細に把握し、支援を強化するよう提案した。
同リポートによると、本土に生産拠点がある香港資本の製造業者の2018年の生産額は約5,000億HKドル(約6兆6,900億円)で、同年の香港の域内総生産(GDP)の17.6%相当だった。ただし、香港の経済統計で定義される製造業には香港に生産拠点がある業者しか含まれていないほか、製造業に付随する研究開発、生産・ブランド管理、検査、貿易、物流、アフターサービスなどの生産・販売額は全てサービス業に計上されており、香港の製造業の経済への寄与度が見えにくくなっているという。
工業総会の葉中賢(ダニエル・イップ)会長は「仮に生産活動に付随するサービス業を加えれば、香港の製造関連企業が経済や雇用に果たす貢献度は今よりずっと大きくなるはずだ」と主張した。
調査では香港の製造業が直面している課題として、◇「チャイナ・プラス・ワン」による本土以外への生産拠点整備によるリスク分散◇サプライチェーン(調達・供給網)の変化への対応◇生産の高度化に対応できる人材開発◇香港への生産拠点回帰のための用地不足――の四つの構造変化を指摘。こうした課題に取り組む企業への政策的な支援を香港政府に求めた。
■企業の1割、香港に回帰の意向
工業総会によると、今回の調査では、本土に生産拠点を持つ香港企業の1割が香港に拠点を回帰させる意向を示した。人件費などのコスト上昇により本土に拠点を置くメリットが薄れているほか、ハイテク企業を誘致したい香港政府による助成金の支給が後押ししている可能性があるという。
要望が多かったのは、食品、プラスチック、環境保全関連などの業者が多く、一方、金型製造、電子・光学、金属製品などの業種では回帰を検討している企業は少数だった。
生産拠点を香港に移す上での課題を聞いたところ、77.4%が「製造業を受け入れる体制が不十分なこと」と回答。このほか、「工業用地が不足している」「人材育成のためのコストが高過ぎる」(いずれも69.4%)といった意見も上がった。