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【マレーシア】首都圏工場で集団感染相次ぐ[製造](2020/12/24)

マレーシアの首都圏クランバレーにある工場で、新型コロナウイルス感染症の大規模な集団感染が相次いでいる。従業員5,000人以上が感染し、国内最大規模のクラスター(感染者集団)となったゴム手袋世界最大手、トップグローブ・コーポレーションをはじめ、少なくとも大手4社が感染により工場の操業を一時停止している。政府は、外国人労働者を大量に雇用する工場の居住環境に問題があるとみている。

ゴム手袋メーカーの外国人労働者寮の査察に立ち会ったサラバナン人的資源相(中央)=21日、スランゴール州カジャン(同省提供)

ゴム手袋メーカーの外国人労働者寮の査察に立ち会ったサラバナン人的資源相(中央)=21日、スランゴール州カジャン(同省提供)

トップグローブは、スランゴール州クランにある外国人労働者寮を発端に従業員の間で感染が拡大し、同州内28カ所の工場の操業を一時停止にした。このほか、22日までにゴム手袋大手コッサン・ラバー・インダストリーズのクランの工場で990人、地場自動車シート用皮革メーカー大手のペッカ・グループのクアラルンプール・クポンの工場で246人と、3桁の感染が確認された。感染を確認した工場について、コッサン・ラバーは16~30日、ペッカは21~27日に閉鎖すると発表している。

日系ではパナソニックの現地工場で3桁の感染が確認された。パナソニック・マニュファクチャリング・マレーシアは、スランゴール州シャアラムの生産拠点2カ所で従業員2,137人の集団検査を実施し、116人の陽性が判明した。同社は地域の保健局の指示に従い、21~23日に工場の操業を停止すると発表していたが、23日に再度、27日までの延長を発表した。ただ、従業員全員の検査結果は既に出ており、感染者は116人で確定したという。

パナソニック本社の広報担当者によると、同工場は天井扇や換気扇のほか、一部地域向けに炊飯器などの小型家電を生産している。同社の拠点としては規模が大きい方ではなく、製造品目の市場規模も小さいことから、「グループ全体に与える影響は軽微とみている」と説明した。

コッサン・ラバーは23日、工場の一時停止により、年産能力が約1.5%低下するものの、2020年12月期決算に与える影響は軽微との見通しを発表した。

このほか、コンドーム製造世界最大手のカレックスやゴム手袋大手ハルタレガ・ホールディングスも、それぞれ従業員35人の感染をこれまでに確認している。

■外国人の就労環境は「現代の奴隷」

各社は、感染を確認した従業員の国籍の詳細を公表していないが、感染者の多くは東南アジアや南アジアから出稼ぎに来た外国人労働者とみられている。外国人労働者は、就労先が提供する宿舎で集団生活を送っており、劣悪な環境は人権侵害に当たると諸外国からたびたび問題視されてきた。

マレーシア政府は、トップグローブなどの例から、工場での新型コロナ感染拡大の原因が、外国人労働者の「密」で不衛生な生活環境にあるとみている。今年9月、1990年労働者住宅最低基準法の改正法を施行し、労働者の宿舎や住宅の最低基準を引き上げて査察を強化している。

23日付マレーシアン・リザーブなどによると、サラバナン・ムルガン人的資源相は、国内にある外国人労働者の宿舎の9割以上が違反状態にあるとの見解を示した。特に、ゴム手袋メーカーにおける外国人労働者の就労環境を「現代の奴隷制」と表現している。

同省労働局は21日、スランゴール州カジャンのゴム手袋メーカーの外国人労働者寮を査察し、同社敷地に隣接して設置された金属製の輸送コンテナに多数の労働者が居住しているのを見つけた。これまでの査察では、トイレなどの水回りが不潔もしくは故障している、狭い部屋に密集している、寝台にマットレスがない――など、悲惨な実態が次々と明らかになっている。

マレーシア医師会のジョン・チュー元会長は、工場での新型コロナの感染収束には、外国人労働者の生活環境の改善を急ぐ必要があると指摘。感染判明後に労働者が逃亡すると追跡が難しくなるため、「宿舎の改善が唯一の有効策だ」と述べた。

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