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【シンガポール】制限緩和の第3期、28日から[経済](2020/12/15)

シンガポールのリー・シェンロン首相は14日夕方、新型コロナウイルスの感染対策として実施している経済・社会活動制限の緩和措置について、今月28日に第3期に移行すると発表した。市中感染がゼロになる日が増えていることから、さらなる緩和に踏み切る。新型コロナのワクチンの緊急使用を承認したことも明らかにした。2021年7~9月期には、外国人を含む住民の全希望者がワクチンを無料で接種できるようになる見通しだ。

国民に「制限緩和後も感染対策の徹底が必要だ」と呼び掛けるリー首相=14日、シンガポール中心部(情報通信省提供)

国民に「制限緩和後も感染対策の徹底が必要だ」と呼び掛けるリー首相=14日、シンガポール中心部(情報通信省提供)

リー首相は国民向けのテレビ演説で、第3期への移行を明らかにした。新型コロナが終息するまでには「まだ長い戦いが続く」と述べた上で、第3期は1年以上継続する可能性が高いと説明した。

第3期の初期段階では、グループ活動や店内飲食の人数制限を現在の最大5人から最大8人に引き上げるほか、小売店や娯楽施設、イベント会場などの人数制限も緩和する。宗教行事に参加できる人数も拡大する。

首相の演説後に行われた、新型コロナ感染対策の閣僚級作業部会の会見では、国民や企業の感染対策の努力で市中感染が低水準を維持していること、検査体制が十分に整っていること、感染者の接触者追跡アプリ「トレーストゥギャザー」の利用率が約65%まで向上したことから、第3期に移行することが可能になったと説明があった。

会見に出席したチャン・チュンシン貿易産業相は、第3期の経済面での施策について、「特にMICE(会議、視察、国際会議、展示会・見本市)産業について、より本格的な制限緩和に向けてさまざまな手を打ちたい。異なる国のビジネスパーソン同士が、安全なシンガポールで商談できる環境を整えるなどしたい」と話した。

リー首相は演説で「2020年を良いニュースで終えられる。ただ第3期への移行は、感染リスクの拡大を意味する。リスクはコントロール可能な想定の範囲内に収めるつもりだが、国民全員に引き続き感染対策を徹底してほしい」と呼び掛けた。

■出勤制限、現時点で変更なし

今回の発表では、在宅勤務の原則義務化や、職場への出勤が可能な人数の制限については言及されなかった。NNAが人材開発省に確認したところ、「引き続き現在の水準を維持する」との回答を得た。

政府は9月28日以降、テレワーク(遠隔勤務)を行っている従業員の半数を上限に、職場で同時に勤務することを認めている。職場で勤務できる時間は、原則的に1人当たり全勤務時間の半分以下となっている。

第3期では、カラオケやナイトクラブなど比較的感染リスクが高い業種についても、現行の一部店舗での試験的な営業再開を継続する。今後の業界の本格的な復興につなげる考えだ。

■ワクチン、首相も接種予定

リー首相はまた、シンガポール保健科学庁(HSA)が同日、米製薬大手ファイザーとドイツのビオンテックが共同開発した新型コロナのワクチンの緊急使用を承認したと明らかにした。

作業部会によると、ワクチン到着から2~3週間以内に最初の接種を行う予定。政府として住民全員にワクチン接種を「強く推奨」し、外国人を含めて全員に無料で提供する。ただ他のワクチンと同様、あくまで個人の希望に応じて接種する。

政府は現在、ファイザーのに加え、米モデルナ、中国シノバック・バイオテックとワクチンの供給契約を結んでいるほか、他の企業とも交渉を進めている。リー首相は、21年7~9月期までに、16歳以上の国民、永住権(PR)保持者、長期滞在ビザ保有者の全員がワクチンの接種を受けられる体制を整える計画を示した。

ワクチンを巡っては安全性への懸念もある。リー首相は「ワクチンは安全だと強く信じている。自身を含む年配の閣僚は全員、真っ先にワクチンを接種し、安全だということを国民に示す予定だ」と話した。

閣僚級作業部会の共同議長を務めるガン・キムヨン保健相は、「ワクチン接種は感染対策の重要な要素のひとつにすぎない。(マスクを外してもいいなどの)感染対策規定に従わない免罪符になるわけではない」と説明。接種の有無にかかわらず、住民全員の感染対策の努力がなければ新型コロナの終息は見込めないと改めて強調した。

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