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【インドネシア】観光業界、新型コロナ対策に疑問の声も[観光](2020/11/26)

インドネシアの首都ジャカルタで新型コロナウイルス対策の「大規模な社会的制限(PSBB)」が延長されたほか、年末年始の連休短縮が検討されるなど、観光業界への逆風がさらに強まっている。一方で、業界関係者や専門家からは、こうした対策に感染拡大防止の効果は薄く、国民が衛生規律を順守することが重要との指摘も出ている。

政府は年末年始の連休に各地で人の移動が盛んになることを懸念している。写真は10月末の連休時の西スマトラ州パダン海岸周辺(アンタラ通信)

政府は年末年始の連休に各地で人の移動が盛んになることを懸念している。写真は10月末の連休時の西スマトラ州パダン海岸周辺(アンタラ通信)

地元ニュースサイトによると、インドネシア観光・創造経済省のプラブ・レブルシ報道官はPSBBの導入で国内旅行が制限されたほか、海外からの旅行客も激減しており、「観光客数は8割以上減少した」と指摘。観光業は多大な打撃を受けているとした。その上で、観光客がこのまま増えなければ、「観光業界は完全に立ちゆかなくなる」と警鐘を鳴らした。

インドネシアの観光分野の18協会が参加し、外国人観光客の誘致活動を行うビジット・ワンダフル・インドネシア(VIWI)事務局のハリヤディ・スカムダニ代表は、NNAのオンライン取材に対し「PSBBは経済に悪影響をもたらすため、終了するよう求めている。 PSBBを継続するならば、業界だけでなく国民にも衛生規律の順守を徹底させる必要がある」と主張した。国民の多くが衛生規律を守っていない現状でPSBBを継続しても、経済に悪影響を与えるだけとの見方だ。

ハリヤディ代表は先にも、ジャカルタ特別州のアニス知事に対して、期限とされていた今月22日でのPSBB終了を要請。ホテルやレストラン、旅行代理店などの旅行業界は既にニューノーマル(新常態)での衛生規律である「3M(『マスク』『手洗い』『距離を取る』のインドネシア語の頭文字)」への対応を進めており、これ以上、移動や営業に制限を設ける必要はないと強調していた。

しかしアニス知事はPSBBを12月6日まで延長。テンポによると、同知事はジャカルタでコロナ感染者が急増した背景には人々の移動が活発になったことがあるとの見解を示している。

■連休見直しの効果に疑問も

ジョコ大統領は23日の閣議で、年末年始の11連休について、関係省庁間で調整会議を開催し、祝日、有給休暇奨励日ともに削減を検討するよう指示した。連休で人の移動機会が増え、新型コロナの感染が拡大することを防ぐ狙いがあるとみられる。

アンタラ通信によると、スリ・ムルヤニ財務相は同日に「これまでの連休は経済にプラスの効果をもたらさず、感染を広げるだけだった」と述べ、年末年始の連休についても多角的に注意深く見直す必要があると説明。またテンポによると、政府の新型コロナ緊急対策本部(タスクフォース)のウィク報道官も24日、5月や8月の連休後に感染者が急増した事例を引き合いに出し、「年末年始の連休でも感染者が急増する可能性が非常に高い」と警鐘を鳴らした。

これに対して、政府系の分子生物学研究機関、エイクマン研究所のアミン・スバンドリオ所長は、連休を短縮するだけで新型コロナの感染拡大を止めることは困難だと指摘。依然として国民の2~3割が新型コロナの存在を信じていないことから、感染予防を人々に呼び掛けるだけでは効果がないとして、「国民がコロナの存在を認め、衛生規律を順守して行動するようになることが重要だ」と話した。

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