【韓国】【韓流新時代】映画評論家「『表現』は社会変える力」[媒体](2020/11/03)

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韓流インタビュー企画の第8弾。今回は多くの映画祭で審査員を務める映画評論家のチョン・ジウク氏に、韓国映画の強さの源流や、新型コロナウイルス感染症が業界に与えた影響などについて、電話インタビューで語ってもらった。【中村公】

「コロナの影響で作品性の高い映画が脚光を浴びるようになったことは肯定的に評価できる」と話すチョン氏(本人提供)

「コロナの影響で作品性の高い映画が脚光を浴びるようになったことは肯定的に評価できる」と話すチョン氏(本人提供)

■強さの源流は「民主化」への熱望

――「パラサイト 半地下の家族」が米アカデミー賞で作品賞を獲得するなど、韓国映画は著しい成長をみせている。

韓国映画の強さの源流には、1980年~90年代に青年時代を過ごしたクリエーターの熱い思いがある。民主化に向かう激動の時代を生きた彼らは、今や業界の中心で活躍しており、「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督もその一人に挙げられる。

彼らの中には「表現によって社会を変えることができる」という考えが根強くある。そのため、政治との関係が深い「社会派映画」が多く生まれ、メッセージ性の強い作品が海外でも高い評価を受けている。

■故大林監督が語る「生きた目力」

――映画の作品性だけでなく、韓国俳優の演技力にも注目が集まっている。

今年4月に亡くなった大林宣彦監督は、韓国俳優の演技について「目力が生きている」と表現した。韓国俳優の演技はエネルギーにあふれ 、キスシーンなども恥じらうことなく大胆に演じる。役柄にしっかり入り込めている点も強みだろう。こうした演技力は、韓国人が持って生まれたものではないか。

韓国では政府主導の下、映画教育専門機関の創立などで、人材育成が進められてきた。そこから多くの俳優が輩出されたのは事実で、人材の底上げにもつながった。ただ、大林監督が語った「生きた目力」の演技力は、教育システムだけで培われるものではないと思っている。

■コロナで独立系映画に脚光

――新型コロナ感染症の流行は、韓国の映画産業にどのような変化をもたらしたか。

コロナ禍で集客が見込めない中、大手配給会社は大型映画の上映を相次ぎ見送った。その一方で、独立系映画は「駄目でもともと」という思いで公開に踏み切った結果、映画館での上映機会が増え、思いもよらぬ話題作が現れた。

例えば、キム・チョヒ監督の「チャンシルさんには福が多いね」は、3月の公開からコンスタントに観客を集め、10月末まで上映されるロングランとなった。これまで財閥系の大手配給会社による興行収入重視の流れが加速してきたが、コロナの影響で作品性の高い映画が脚光を浴びるようになっている。この動きは韓国映画界にとって肯定的に評価できる点だ。

――動画配信サービスの台頭による韓国映画への影響は。

米ネットフリックスの自社制作事業は、総制作費のうち一部あるいは全額を映画製作会社に投資して、版権管理を自社で手掛けるビジネスモデルだ。映画産業にとってはメリットも大きいが、映画の作品性より商業性が重視されるため、作品の質の低下やネットフリックスによる独占が憂慮される。

■日本映画の魅力は繊細な感情表現

――日本映画についてどう評価するか。

日本映画の魅力の一つに、作品の中に日本の伝統文化が普遍的な価値のあるものとして描かれている点が挙げられる。また、日本映画は人間の繊細で豊かな感情を表現するのにたけ、それがストーリーの中に溶け込んでいる点も強みだろう。

こうした長所をもっと生かすべきだ。その上で積極的な投資を得てスケールのある作品作りができれば、国際的にも高い評価を受られるだろう。

<プロフィル>

1967年生まれ。韓国カトリック子ども映画祭「ナルゲ(翼)」執行委員兼主席プログラマー、韓国外国語大学校大学院グローバル文化コンテンツ学科博士課程修了。映画評論家、文化コンテンツ批評家、韓国文化コンテンツ批評協会広報理事、西京大学校韓日文化芸術研究所研究員。第17回、第30回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ファンタスティックオフシアター・コンペティション部門の審査委員など多くの映画祭の審査員を歴任。共著に「1,000万観客映画論評シリーズ<タクシー運転手><神と共に 第1章罪と罰><パラサイト>」。

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