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【マレーシア】首都圏で条件付き制限令開始[経済](2020/10/15)

マレーシアの首都圏クランバレーで14日、新型コロナウイルスの感染抑止策として、地域間の移動制限を含む2週間の条件付き活動制限令が始まった。政府が全業種の操業を認めたことから、企業の間では3~5月の活動制限令時に見られた混乱は起こらなかったもよう。ただ、外出が制限されることで、小売りや外食業界への打撃が見込まれる。

首都圏での条件付き活動制限令施行で、商業施設の客足は一層の落ち込みが予想される=クアラルンプール(NNA撮影)

首都圏での条件付き活動制限令施行で、商業施設の客足は一層の落ち込みが予想される=クアラルンプール(NNA撮影)

マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)の担当者は14日、NNAに対し、「首都クアラルンプール、スランゴール州、行政都市プトラジャヤの3地域の日系企業の間で大きな混乱は起きていないようだ」と話した。3~5月の活動制限令では、企業活動は生活に必要不可欠なサービスのみに限られたため、操業ライセンスの取得などで導入後に混乱が起きた。今回は全業種の操業が認められているため、現時点では深刻な影響はみられないという。

同担当者は「懸念事項を1点挙げるとすれば、首都圏から国内の他地域への出張について、政府が発表した標準作業手順書(SOP)に記載がない点だ」と指摘。ただ、他地域から首都圏への通勤時のように、マレーシア警察の移動許可書、企業からの就業許可書、身分証に加えて、訪問先からの招待状を携帯すれば、問題ないとみられると説明した。

■商業施設は客足鈍化

今回の条件付き活動制限令では、商業施設や小売店、飲食店の営業時間に制限が加えられたほか、日用品の買い出しは1世帯2人までに限定された。このため、活動制限令が緩和された6月以降、回復基調にあった小売りや外食業界に打撃を与えることが予想されている。

市場調査会社リテール・グループ・マレーシア(RGM)のタン・ハイシン社長は、「(クアラルンプール市内の)ミッドバレー・メガモールやパビリオンKL、スランゴール州のワンウタマ・ショッピングセンターやサンウエー・ピラミッドといった主要商業施設は、首都圏全体や他州からも集客している。移動制限によって客足は落ちるだろう」と指摘する。

特に、買い出しに人数制限が加えられたことや、飲食店の営業時間が午後10時までとなったことなどで「商業施設では平日の夕方から夜にかけて家族連れ客が減少する」と予想。「コスト削減のために休業を選ぶ店も出ている」ことを明らかにした。同社は、新型コロナ流行の影響で、少なくとも国内小売店舗の15%に当たる5万1,000店が閉店すると予想している。

中東の高級チョコレート「パッチ」の輸入販売を手掛けるサイデックス・マーケティングのヤジード・カヨーム社長は「スリアKLCC、バンサー・ショッピングセンター、パビリオンKL、ワンウタマに各店舗を構えているため、間違いなく売り上げに影響する」と話す。

パビリオンKLを除く商業施設3カ所では、新型コロナ感染者の立ち寄りや従業員の感染が相次いで発覚し、条件付き活動制限令の施行以前から客足が落ちていた。特に、ワンウタマは消毒作業のため11日から7日間の休業を強いられており、「売り上げに多大な影響を及ぼした」という。

飲料スタンドチェーンの「ティーライブ」や、たこ焼きチェーン「築地銀だこ」を運営するLOOBホールディングスのブライアン・ルー最高経営責任者(CEO)は「都市部、特に商業施設内の店舗は大きく影響を受けている」と認めた上で、出前需要が客足の落ち込みを補っていると説明した。

■首都圏の消費減退、経済全体にも影響か

条件付き活動制限令の対象となる首都圏は、平均家計支出が州・連邦直轄区別で上位3位を占めるため、消費減退による経済全体への影響も懸念される。マレー系公務員が住民の大半を占めるプトラジャヤの平均家計支出(19年時点)は月間7,980リンギ(約20万円)と、全国平均(4,534リンギ)の1.8倍で国内一。クアラルンプールは同6,913リンギ、スランゴール州は5,830リンギと続く。

景気対策の一環で4月から6カ月間導入された融資返済猶予措置が先月末に終了したタイミングでもあり、今回の首都圏での条件付き活動制限令の施行で、国内消費が一層冷え込むことが予想される。

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