スタートアップの資金調達・ビジネスマッチングサイト

【シンガポール】オンライン消費が6割増加[商業](2020/09/24)

東南アジア諸国連合(ASEAN)で、オンラインショッピングが活性化している。地場企業らの調査によると、主要6カ国の消費者のうち、新型コロナウイルスが流行してからネットでの消費が増えたと回答した割合は約6割に上ったほか、世代間の格差も縮小していることが明らかになった。コロナ禍でオンラインに移行せざるを得ない状況になったことなどが背景にある。業界関係者からは、企業はコロナ後を見据えた事業戦略を取るべきとの声が出ている。

東南アジア主要6カ国ではコロナ流行以降、オンラインでの消費が増えている=シンガポール東部(NNA撮影)

東南アジア主要6カ国ではコロナ流行以降、オンラインでの消費が増えている=シンガポール東部(NNA撮影)

調査は、シンガポールの調査会社ブラックボックス・リサーチと米同業トルーナ(toluna)が、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムの6カ国の4,780人を対象に今年6月に実施。コロナ流行中の消費動向の変化について調べた。

調査によると、コロナ流行中にオンラインでの消費が増えたと回答したのは全体の59%。世代別では、X世代(1965~79年生まれ)が6割と最も多かった。ミレニアル世代(80~2000年前後生まれ)は59%、Z世代(90年代半ば前後以降生まれ)は56%だった。

ブラックボックスらはこの結果から「生まれたときからインターネットが身近にある『デジタルネーティブ』世代と高齢世代の世代間格差が急速に縮小している」と指摘している。

域内の消費者のうち85%が、コロナ前と比較してオンラインサービスの利用が快適だと感じ始めたことも明らかになった。特にベトナムでは9割と高く、これにシンガポールとマレーシアが85%。タイ、フィリピン、インドネシアが84%でそれぞれ続いた。

世代別では、X世代とミレニアル世代がいずれも87%で最多。第2次大戦直後に生まれたブーマー世代も85%だった。

ドイツの経営戦略コンサルティング大手ローランド・ベルガーの下村健一氏は「外出自粛でオンライン消費が増えたことは周知だが、デジタルやオンラインへの適性はあまり関係なく、世代を問わずオンラインを使わざるを得なかったことが推察できる」とコメント。一過性の消費行動ではなく、ある程度定着すると予想しているという。

日系コンサルティング会社YCPグループ(本部・香港)のマネジングパートナー兼東南アジア統括責任者、粕本晋吾氏は「オンライン以外の選択肢がない環境で、今までオンラインに二の足を踏んでいた層にも浸透した。結果として世代間格差が狭まったのだろう」と分析する。

米フェイスブックとコンサルタント会社のベイン・アンド・カンパニーが今年5月に同6カ国の消費者1万6,491人を対象に実施した調査でも、「買い物の主要チャネルが電子商取引(EC)」と回答した割合は44%となり、前年の30%から大幅に拡大していた。

■オムニチャネル方式が人気に

ブラックボックスらの調査では、域内の大半の消費者が実店舗とECを融合させた「オムニチャネル」方式での買い物が好ましいと回答していることも明らかになった。

ローランド・ベルガーの下村氏は「当社の調査で、東南アジアの消費者は比較的、利便性を追求する日用品などの購買と、買い物自体も楽しみたい嗜好(しこう)品の購買の切り分けが明確だということが分かっている。今後、日用品はオンラインで素早く買う一方、嗜好品はオンラインで下調べをした上で実店舗に見に行くという購買行動が残るのではないか」と分析した。

YCPグループの粕本氏は「ASEANでは、可処分所得が限られていることやレジャー産業が未成熟なため、オフラインショッピング自体が主要なレジャーになっている」と説明。オンラインに軸足を移しつつも、オフラインを惜しむ傾向は、オンラインへの移行期によく見られることだと付け加えた。

■購入プロセスの再構築を

コロナ禍でオンラインが消費者の購買行動の中心となる中、域内でビジネスを展開する日系企業は、コロナ後を見据えた事業戦略を構築する必要がありそうだ。

YCPグループの粕本氏は「コロナ禍が過ぎれば、オンラインの比率はさすがに低下するが、コロナ前の水準まで戻るわけではない。このまま右肩上がりで伸びていくという過度な期待は禁物だが、オンライン強化がこれまで以上に重要な施策になる」と語った。

ローランド・ベルガーの下村氏は「メーカーサイドとしては、単にオンラインが伸びるからオンライン販売を始めるのではなく、オムニチャネルの浸透もある中で、カスタマージャーニー(顧客が購入に至るプロセス)をOtoO(オンラインから実店舗へ消費者を呼び込むビジネスモデル=オンライン・ツー・オフライン)の観点で設計していく必要がある」とアドバイスした。

同氏はまた、「オンライン販売は単に『売り上げ』サイドの話だけではなく、流通コストの変化にも関わる施策のため、コストサイドのシミュレーションも含めて総合的にビジネスを組み直す必要がある」と述べた。

関連記事

公式Facebookページ

公式Xアカウント