【ベトナム】【コロナを超えて】ヤマト、提案力で供給網確保[運輸](2020/09/23)

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【第13回:ヤマトホールディングス】「限られた状況で、顧客の要望にどう応えるか」――。物流大手ヤマトホールディングス(HD)の現地法人ヤマトロジスティクスベトナムは、新型コロナウイルスの影響で航空便など輸送網が止まる中、顧客のサプライチェーン(調達・供給網)確保のため、新たな配送ルートの提案などを行ってきた。スマートフォンなどを活用した非接触型の引っ越しサービスなどにも挑戦し、今後も環境に適応したさまざまなサービスを提供していく考えだ。

ヤマト365エキスプレスは、ベトナムで日本のノウハウを生かした「クール宅急便」を手掛ける。社会隔離中も感染対策を徹底し配送業務を継続した(ヤマトロジスティクスベトナム提供)

ヤマト365エキスプレスは、ベトナムで日本のノウハウを生かした「クール宅急便」を手掛ける。社会隔離中も感染対策を徹底し配送業務を継続した(ヤマトロジスティクスベトナム提供)

ヤマトHDは、ベトナムに、主に企業間物流を担当するヤマトロジスティクスベトナムと保冷小口配送サービス「クール宅急便」などを手掛けるヤマト365エキスプレス、そして2016年に買収したマレーシアに本拠地を置く陸上幹線輸送事業会社OTL社のベトナム法人の3つの会社がある。

「新型コロナによって、顧客やパートナー、スタッフとのコミュニケーションの重要性を痛感した」――。ヤマトロジスティクスベトナムの松田弘社長は、コロナ禍での事業をこう振り返る。新型コロナでは人だけでなくモノの流れも止まり、北部に工場を置く製造業の企業からは「原材料が届かない」といった声があった。これまで原材料の輸送は主に航空便で対応していたが、飛行機の運航が停止となり、輸送方法の見直しを迫られた。そのため、これまでの輸送方法に比べ時間はかかるが、海上輸送やトラック輸送へ変更するなど、顧客やパートナー、スタッフと相談しながら進めたという。「関係者と課題や問題を密に共有することで、新たな提案ができた」(松田氏)。限られた状況で顧客の要望に100%応えることは困難だったが、その時々の状況に応じた提案や、早いタイミングで顧客と相談をしていたため、大きな混乱はなかった。

中国とのクロスボーダートラック輸送では、国境の税関での渋滞が課題となった。ベトナムは検疫が厳しく時間がかかり、実際にスタッフが現地に行き、渋滞の状況を確認することもあった。ただ、企業側もそれを見越し余裕を持ったスケジュールを組んでいたため、大きな問題は発生しなかった。

■社会隔離中も配送は継続

コロナ流行時のクロスボーダートラック輸送では国境の税関での渋滞が課題となったが、スタッフなどとの連携で大きな問題は発生しなかった(ヤマトロジスティクスベトナム提供)

コロナ流行時のクロスボーダートラック輸送では国境の税関での渋滞が課題となったが、スタッフなどとの連携で大きな問題は発生しなかった(ヤマトロジスティクスベトナム提供)

倉庫での作業や引っ越し業務の現場は、「3密」(密閉空間、密集場所、密接場面)になりやすい。各拠点では、人事総務部を責任部署として明確化し、マスク着用や手洗い、消毒、検温の徹底はもちろん、定期的な換気に加え、政府による通達や感染状況など最新情報をスタッフに日々提供した。また4月の社会隔離措置のときは完全に在宅勤務にし、緩和された際も部署ごとに出社人数を制限した。ヤマトロジスティクスベトナムのスタッフは、主に輸送マネジメント業務を担当しているため在宅勤務を導入しやすかったが、ヤマト365エキスプレスでは、社会隔離中も配送業務を継続していたため、多くのスタッフが出社していた。社会隔離が始まった当初は、業務の休止も考えたが「できるところまでやりたい」というスタッフからの要望もあり、病院の近くを極力通らない配送ルートに変更するなど感染防止対策を徹底し、業務を続けた。

引っ越し作業では、荷物の搬出の際に既に顧客が日本に帰国してしまい、立ち会えないことがあったため、スマホのビデオ通話を活用するなど手探りながらも新たな作業方法で対応した。

■非接触型サービスの考案が課題

新型コロナによって「人が集まるリスク」が注目され、物流領域でも倉庫などの自動化などが課題となる。松田氏は、営業時の非接触対応や倉庫の自動化は、日本のノウハウを生かせるとみる。

コロナで利用が拡大した電子商取引(EC)については「EC事業者の進出が今後さらに進めば、倉庫管理を含めた総合物流や、それを支えるシステムへの需要が高まる」と話す。ベトナム国内では、既にEC利用者とそれによる荷物の配送は増え続けている。配送の増加には注目はしているが、「単純に『宅急便』や『バイク便』を開始しても価格競争に陥る」(松田氏)と指摘。勝ち残るためには、倉庫からの一貫した配送や追跡可能なシステムを開発するなどEC事業者に対する新たな付加価値の提供が不可欠と考える。

■企業向け輸配送マネジメントサービス開始

現在パートナーと連携し、パートナーのトラックなどリソースを活用する輸配送マネジメントサービスを一部で導入している。ただ、そうした輸送の際は、品質の担保が必須となる。そのため日本で培ったサービスをマニュアルに落とし込んで仕組み化し、パートナーもヤマトグループと同品質のサービスが提供できるよう管理・徹底している。同グループのマニュアルなどを活用し、パートナーと共有する準備を進めている。

松田氏によれば、ヤマト365エキスプレスが「クール宅急便」をベトナムで開始した17年に比べると、配送業者の中で食品に対する意識が変わってきている。当初は「トラックに氷を詰めれば配送できる」「腐っていたら返品すればいい」という安易な考えがあったが、大手小売店は品質が悪いと荷物の受け取りを拒否するようになり、荷主が温度管理の徹底を要求するようになってきたという。日系の食品企業や小売業者がベトナムに進出する中、日本で培った小口保冷配送サービスのノウハウが新たな顧客の取り込みを後押しするとみられる。

また同国では、コロナに加え米中摩擦によって中国から生産移管した企業が増えており「物流拠点としてベトナムのニーズは確実に拡大する」と松田氏は話す。同国に工場を設置しても、サプライヤーや顧客が中国にいるという事例は多く、中国から、または中国向けの輸送需要は大きい。中国からの原材料の調達や輸送については、クロスボーダートラック輸送や航空便、船便など今後も最適な方法を提案し、生産移管する企業のサプライチェーンに貢献していきたいと強調した。

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