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【マレーシア】入国禁止に駐在員の特例要請[経済](2020/09/10)

マレーシア製造業者連盟(FMM)は9日、政府が入国禁止にした米国や欧州などの23カ国からの、駐在員や技術者などの入国を特例で認めるよう要請する方針を明らかにした。対象国から、現地法人の要職に就く駐在員や機材設置の技術者が入国できないことで、企業の操業に支障をきたすためだ。新型コロナウイルスの感染者が15万人を超えれば入国禁止国に指定する方法の変更を求める声も出ている。

FMMはNNAに対し、国内で新型コロナの感染が再び拡大し経済活動が止まることがないよう、感染者数の多い国からの入国を禁止にした政府決定を支持する姿勢を示したものの、対象国からの完全な入国禁止は製造業に影響を与えると指摘。対象国に一時帰国中の駐在員がマレーシアに再入国できないほか、生産設備などの据え付けに必要な技術者が入国できないためだ。対象国からは投資に向けた現地視察にも来られず、海外直接投資(FDI)にも悪影響を及ぼすと懸念する。

FMMは、現地企業の要職に就く駐在員とその家族、必要とされる技術者について、23カ国からでも特例で入国を認めるよう要請するほか、技術者出張のビザ(査証)の有効期限を、入国後の強制隔離期間を勘案し、30日間から14日間伸ばすことも要請すると説明した。

9日付スターによると、ペナン州バトゥカワンのある部品メーカーでは、インドへ一時帰国したエンジニア2人が再入国できないほか、米国の発注元の2社が派遣しようとした監査チームが入国できないという。同州バヤンルパスの医療機器メーカーも、製造ノウハウを持つ米独英などからの技術者が入国できなくなり、操業に影響を及ぼすと懸念を示した。両社の幹部は「政府はケースバイケースで海外から専門性の高い人材の入国を認めるべきだ」と話す。

マレーシア入国管理局は、新型コロナの感染者数が15万人を超える、▽インド▽インドネシア▽フィリピン▽米国▽ブラジル▽フランス▽英国▽ドイツ▽バングラデシュ▽パキスタン――など23カ国からの入国を7日から禁止。入国禁止の対象は、永住者や雇用パス(EP)を持つ駐在員、機械設置など短期就労のためのプロフェッショナル・ビジット・パス(PVP)保持者などだ。観光客など短期滞在者の入国は、国を問わず3月18日から原則認めていない。

■多国籍企業の操業に影響

日本は入国禁止の対象となっていないが、日系企業への影響も皆無ではない。日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール事務所の小野沢麻衣所長は、各国に拠点を置く日本企業では入国禁止の対象国からマレーシアへの駐在員の横異動ができないほか、海外で育成したエンジニアなどを対象国から派遣できないことになると指摘。対象国からの人事異動ができないことに対する懸念の声は、日系企業からも出ているという。

在マレーシア米国商工会議所(AMCHAM)は先に、米国からの入国禁止によって、現地事業や貿易に数百万米ドル規模の損失が出るとの懸念を表明し、既に政府と同措置の緩和に向けた協議を始めている。

AMCHAMは9日、NNAに対し、政府とはまだ深い議論ができていないと説明した。その上で、駐在員など長期滞在者の入国は禁止対象の23カ国以外からでも、入国管理局の許可が必要で入国後に強制隔離措置があるなど、厳しく管理されていると指摘。米系企業も従業員の感染対策をとっており、米国からの駐在員などの入国で感染が拡大するリスクは小さいと強調した。

入国禁止国の指定については、累計感染者数が15万人を超えればリスト入りする現行の方法では、米国など一度指定された国からの入国が回復活動制限令中は認められないことも懸念する。回復者数と死者数を除いた現在の患者数が人口に占める割合で、感染リスクが高い国かどうかを判断すべきだとの見解を示した。

■対象国増えれば経済が犠牲

政府は、新型コロナの感染者数が15万人を超えた国を、高リスク国として入国禁止にする国に追加指定していく方針。冬を迎える北半球で感染が拡大すれば、対象国は増える可能性がある。

マレーシア中小企業(SME)協会のマイケル・カン会長は「各国で冬に感染者が急増することに政府が警戒することは理解できるが、国境管理を厳しくすれば経済が犠牲になり、失業や破産など社会的な問題を引き起こす」と指摘する。

同会長は、台湾のように携帯電話を利用した追跡システムを導入すれば、感染者が増えた国からの入国を全面禁止にしなくても、入国者の行動を追跡することで国内での感染拡大を防ぐことが可能となり、海外の専門家を必要とする国内事業が通常通りスムーズに進められるとの見解を示した。

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