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【インド】楽天、地場ITと提携拡大へ[IT](2020/08/27)

楽天の通信事業子会社、楽天モバイル(東京都世田谷区)は、全世界での第4~5世代(4G、5G)移動通信システムによるモバイルネットワークの提供に向けて、インドのIT・通信関連企業との提携を拡大する方針だ。2018年に提携したテック・マヒンドラに加え、ウィプロやスターライト・テクノロジーズ(STL)との連携を模索。通信事業者向けのプラットフォームを手掛けるイノアイ・テクノロジーズの買収も予定している。

楽天モバイルは、完全に仮想化された4Gと5Gのモバイルネットワーク基盤「楽天コミュニケーションズ・プラットフォーム(RCP)」を、世界の同業他社などに販売する計画を掲げている。5Gへの取り組みを加速するインドのIT・通信関連企業と組むことで、RCPの開発を加速する考えだ。

■複数社に照準

楽天の広報担当者であるヨハン・ビレット氏はNNAに対して「多くの企業と協力して、開かれたモバイル・ネットワーク・エコシステムを築くことが楽天モバイルのビジョンだ。複数のインド企業と提携済みだが、世界の消費者・企業により良いサービスを提供するために、さらなる提携を模索している」と明らかにした。

ウィプロなど、ITサービス大手を提携候補に見据える(PTI)

ウィプロなど、ITサービス大手を提携候補に見据える(PTI)

楽天モバイルはITサービス大手テック・マヒンドラと提携し、インド南部ベンガルール(バンガロール)に4G、5Gネットワークの活用に向けた開発・実験施設を設立済み。新たな提携候補はウィプロやHCLといったITサービス大手、デジタルネットワークの設計・構築・管理を手掛けるスターライトなど、複数社に上る。ITサービス各社はソフトウエア、スターライトはハードウエアのノウハウや技術がそれぞれ魅力だ。

このうちスターライトは、光ファイバーやワイヤレス技術で持つ強みを生かし、5G対応のソリューション提供に向けた事業基盤を構築する計画を明らかにしている。地場メディアによると、5G対応で本年度(20年4月~21年3月)中に300~400人の専門家を雇用する見通しだ。スターライトはインドと中国、イタリア、ブラジルの工場で光ファイバーやケーブルを生産。ソフトウエアの開発は、インドで行っている。

ウィプロも7月、米IBMの技術を活用した通信業者、企業向けの5Gサービス「5Gエッジ・サービシズ・ソリューションズ・スイート」を発表。自国でも5G試験運用に向けた動きが本格化していることから、インドのIT各社は5G関連の開発を活発化している。

■買収と現法設置で展開加速

楽天モバイルはRCPの世界販売に向けて、イノアイの買収とシンガポールでの現地法人設立を相次いで発表した。イノアイの買収発表は5月。RCPの開発強化が目的だ。

イノアイはインド中部インドールと米バージニアを拠点に、携帯キャリア(MNO)にクラウドプラットフォームのプロセス自動化システムなどを提供している。楽天モバイルは、イノアイが持つネットワーク運用ソフトウエアの技術や開発チームを、RCPの開発に生かす考え。タレック・アミン最高技術責任者(CTO)は「イノアイの買収を通じて、当社はMNO他社がシンプルに『クリック、購入、展開』できるクラウドプラットフォームを提供する」とコメントした。

シンガポール法人、楽天モバイル・シンガポール(RMSG)の設立は、6月30日に発表した。設立は昨年10月で、4月に営業を開始。RCPや最新の仮想化ネットワーク基盤を海外の通信事業者に販売する拠点となる。(アトゥル・ランジャン/Atul Ranjan)

<会社概要>

楽天モバイル

18年1月の設立。今年4月8日に日本でサービスを開始した携帯電話向けのデータ通信無制限プラン「ラクテン・アンリミット」は、6月末までに累計の契約申し込み数が100万件を突破した。6月を予定していた5Gによるサービスの開始は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け約3カ月延期すると発表。インドで実施しているネットワークの検証作業が、封鎖措置の影響で停滞したためという。

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