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【台湾】華為規制の影響限定的か[IT](2020/08/26)

米国による中国通信機器大手の華為技術(広東省深セン市、ファーウェイ)への輸出規制強化を受け、市場では台湾サプライヤーへの悪影響を懸念する声が出ている。ただ中国同業が華為に代わって受注を埋めるとみられることなどもあって、台湾企業への影響は「限定的」との指摘もある。

米国の華為技術への輸出規制強化が台湾企業に与える影響は限定的との指摘が出ている(NNA撮影)

米国の華為技術への輸出規制強化が台湾企業に与える影響は限定的との指摘が出ている(NNA撮影)

米商務省は17日、華為への禁輸措置を拡大すると発表。華為の関連38社を新たに対象に加え、制裁を強化した。機器利用を通じた情報流出を警戒する米国は、禁輸対象の拡大によって基幹部品の供給を遮断する狙いがあるとみられる。

台湾の市場調査会社、集邦科技(トレンドフォース)はこのほど、華為への規制が台湾企業を含む半導体、メモリー、スマートフォン、液晶パネル、第5世代(5G)移動通信システムの5分野の業界に与える影響をまとめた。

半導体の分野を見ると、スマホ用アプリケーションプロセッサー(AP)では、モバイル端末向けIC設計世界大手の聯発科技(メディアテック)が今月17日以降、華為向けの出荷ができなくなった。ただ米国以外から部品を調達する中国企業などからの需要が広がる中、聯発科技はハイエンド向け製品の供給に力を入れるとみられ、5Gチップのシェアが高まると予想される。

中国半導体企業の紫光展鋭(ユニソック)は、中国系のローエンドスマホ向けのシェアを獲得する可能性がある。

華為向けの製品供給が売上高に占める割合の高い半導体関連企業は、WiFi(ワイファイ)など無線製品の設計・開発を手掛ける台湾の立積電子(リッチウェーブ)のほか、指紋認識・タッチパネル向けICを手掛ける中国企業の深セン市匯頂科技(GOODIX)や上海思立微電子科技(SILEAD)など。このうち次世代WiFi規格「WiFi6」向けに立積電子が開発した新製品は、米国の技術を含んでおらず、今後華為に出荷する可能性もあるという。

タッチコントロールICとディスプレードライバーICを統合・集積化した「TDDI」の分野では、主に聯詠科技(ノヴァテック・マイクロエレクトロニクス)と敦泰電子(フォーカルテック・システムズ)の台湾2社が華為に製品を供給。このうち聯詠は顧客と製品の分散を進めており、影響は限定的。敦泰は生産ラインが中国に集中し、短期的には影響が大きいものの、将来的には中国の別の顧客が華為分の受注を埋めると予想される。

ファウンドリー(半導体の受託製造)の分野は、台湾積体電路製造(TSMC)や穏懋半導体(ウィン・セミコンダクター)、中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)の3社が華為に多くの製品を供給していた。集邦科技は、ファウンドリー各社の影響について具体的に触れず、「TSMCは既に華為への出荷を全て取りやめ、残る2社も米国の規定を順守している」とだけ指摘した。

華為からの受注がTSMCの売上高に占める割合は従来14%に上り、企業別では2番目に高かったとされる。

■スマホ出荷が急減も

集邦科技は、華為への部品出荷が9月15日まで続いたとの前提の下で、華為の今年のスマホ生産台数を1億9,000万台とする従来の予測値を据え置いた。

一方、9月15日以降に米国の技術を含む部品を買い付けられなくなったと仮定すると、華為の来年の生産台数は3,000万~5,000万台になると見通した。華為が従来持っていたシェアを中国のスマホ各社が奪うとみている。ただ部品の供給が再開すれば、来年の生産台数は1億台まで回復するという。

DRAMやフラッシュメモリー市場も、華為の代わりに他社が需要を埋めるとの見方。世界のメモリー市場の需要は今後も変わらないと強調した。

アクティブマトリックス型有機EL(AMOLED)に関しては、華為の出荷減に伴い、パネル各社間の顧客争奪を巡る競争が激化し、パネル価格の急激な下落を招くと見通した。華為は低温ポリシリコン(LTPS)を活用した液晶の採用に積極的だったが、中国同業他社が華為によるLTPSの受注分を全て埋めることは難しく、今後はLTPSメーカーにも一定の圧力がかかると指摘した。

■利益に4.6%打撃も

台湾の金融業界では、「華為への輸出規制による台湾メーカーへの影響は限定的」との見方が出ている。

自由時報によると、台湾の投資顧問会社、凱基証券投資顧問(KGIインベストメント・アドバイザリー)は、華為からの受注を全て失った場合、台湾の上場・店頭公開企業が受ける利益への打撃は最大4.6%と予測。ただ華為による前倒し発注や華為のシェア奪取を目指すメーカーによる発注増などの要素を考慮すると、台湾企業が実際受ける今年と来年の利益への打撃は1~1.4%になると見通した。

他の金融関係者は、「華為のシェアは中国の同業他社が奪うとみられ、台湾メーカーに競争力があることを踏まえると、TSMCと聯発科技が受ける影響は限定的」と指摘。中国メーカーの半導体関連製品の買い付け先は、従来の米国から台湾や日韓のメーカーになると予想され、台湾の関連企業は長期的には恩恵が期待できるという。

ただ、華為からの受注消失分を埋める新たな受注獲得には一定の時間が必要との指摘もある。

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