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【マレーシア】入国手続きで政府連携に不備[経済](2020/08/18)

マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)と日本貿易振興機構(ジェトロ)はこのほど、マレーシア政府に対し、駐在員や長期滞在者の入国手続きの明確化と迅速化を求める要望書を送付した。マレーシア投資開発庁(MIDA)経由で雇用パス(EP)を取得した場合、入国時に入国管理局から本来不要な書類の提出を求められるなど、省庁間の連携に不備がみられ、日系企業から改善を求める声が出ているためだ。

JACTIMとジェトロ・クアラルンプール事務所は要望書を14日付で作成し、マレーシア貿易産業省(MITI)と経済行動評議会(EAC)にそれぞれ送付した。

要望書には、▽入国管理局・駐在者サービス課(ESD)が定める入国手続きガイドラインの標準化と全ての空港職員への周知徹底▽入管局長による入国承認状発行の迅速化▽企業が関連する承認官庁・規制機関からのサポートレター発行の徹底と迅速化▽入国優先国・地域枠「グリーンレーン」の導入▽短期出張者に対する入国制限の段階的な解除――の5点を盛り込み、改善や検討を求めた。

ESDの入国ガイドラインは、内容が頻繁に更新される上、入国時の空港職員によって対応が異なるケースが問題視されてきたが、入管とMITIの対応が一致していないことも入国に当たっての新たな障壁となっている。

具体的には、ESDの入国手続きガイドランに基づけば、雇用パス・カテゴリー1(EP1)の保有者は入管局長による入国承認状を取得する必要はない。だが、主に製造業で、管轄省庁となるMIDAを通じて取得した雇用パスを保有している場合、空港到着時に入管から承認状を求められるケースが相次いでいる。

ジェトロ・クアラルンプール事務所の小野沢麻衣所長はNNAに対し、「本来、省庁をまたいで同一の制度であるはずのところが、空港職員への周知徹底ができておらず、特に(MIDAが管轄機関となる)製造業の駐在員の入国手続きが煩雑化している」と指摘した。MIDAは製造業誘致を目的に雇用パスを含め各種申請をワンストップ(一括窓口)で受け付けており、他省庁・機関を通さないサービスが魅力だったが、「これが裏目に出ている状況で、入管との連携ができていない」と話す。

入管による承認状発行の遅れには、業務過多も背景にあるようだ。ESDは17日から、駐在員など外国人の出入国に関する申請手続き用のオンラインシステム「マイエントリー(MYEntry)」<myentry.myxpats.com.my/app/>を本格稼働。これまでは承認状の申請をメールで受け付け、人海戦術で処理するような状態だったとみられる。

入管はガイドラインで、承認状は申請から14営業日で発行し、返答がない場合は却下と規定しているが、小野沢氏によると、許可が下りるまで1カ月以上かかるケースも出てきているという。

■強制隔離で入国ちゅうちょも

日本とマレーシアの段階的な出入国制限の緩和については、茂木敏充外相が14日にマレーシアを訪問し、同国のヒシャムディン・フセイン外相と会談。両国間の駐在員や長期滞在者を念頭に置いた「レジデンストラック」について、9月上旬にも開始することに合意した。

ただ、先に訪れていたシンガポールで合意に至った、行動範囲を制限した上でのビジネス活動を認める短期出張者向けの「ビジネストラック」については先送りされた。

シンガポールと日本のビジネストラックでは、入国者が渡航をちゅうちょする要因の一つでもある14日間の待機措置が一定条件の下で免除されることもあり、マレーシアでの外相会談に期待が高まったが、現状の規制から緩和された点が見えづらく、肩透かしに終わった感が強い。

ジェトロなどは、今回の要望とは別に、マレーシア入国後の強制隔離措置についても改善を求めていく。小野沢氏によると、空港到着後に政府が指定する滞在先が決まる上、施設によっては差し入れの可否など隔離環境に差異があり駐在員には不安が大きい。「入国手続きをちゅうちょする企業が多い状況になっている」(小野沢氏)ため、マレーシア政府に要望を伝える意向だ。

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