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【香港】キャセイ、99億ドルの赤字[経済](2020/08/13)

香港の航空最大手キャセイパシフィック航空(国泰航空)が12日発表した2020年6月中間期決算は、純損益が98億6,500万HKドル(約1,360億円)の赤字に転落した。新型コロナウイルス対策として各国・地域が実施している入境制限強化で旅客が激減したためだ。香港政府や主要株主による計390億HKドルの資本注入は既に完了したものの、6月時点で毎月15億HKドル前後だった現金流出は今も続いている。旅客回復の時期が見通せない中で一段のコスト削減は避けられない状況だ。

新型コロナで旅客が激減し、キャセイは巨額の赤字を計上した(NNA撮影)

新型コロナで旅客が激減し、キャセイは巨額の赤字を計上した(NNA撮影)

中間期の赤字計上は、2億6,300万HKドルの赤字だった18年以来2年ぶり。同期の赤字額としては確認できる07年以降で最大。前年同期は13億4,700万HKドルの黒字だった。

パトリック・ヒーリー会長は決算報告書で、1~6月について「70年を超えるキャセイグループの歴史で最も厳しい時期だった」と強調した。

売上高は前年同期比48.3%減の276億6,900万HKドルとほぼ半減。中でも旅客サービス事業の売上高は70.5%減の110億5,600万HKドルと極端な減収となった。

同期は香港政府などへの抗議活動に伴う社会混乱で19年後半に減少した旅客数に回復の兆しが見えたところに新型コロナの影響が広がった。1~6月の旅客数は前年同期比76.0%減の延べ438万9,000人、搭乗率は16.9ポイント低下の67.3%にとどまった。香港政府が非居住者の空路入境を禁止した後の4~5月は1日当たりの旅客数が平均500人前後で推移した。

一方、貨物サービス事業の売上高は10.4%増の126億9,200万HKドルとプラスだった。新型コロナの感染が拡大した直後の2月は、中国本土と香港向けの医療関連物資の輸送需要が急拡大した。3月も衣類や自動車部品などの輸送量が落ち込んだものの、医療関連物資の輸送需要は高水準が続いた。

売上高を地域別で見ると、主力の香港・中国本土は36.3%減の167億8,500万HKドル。日本・韓国・台湾は62.7%減の19億700万HKドル、東南アジアは50.6%減の19億3,900万HKドルだった。米州と欧州も60.9%減、63.4%減と大幅なマイナスとなった。

営業コストは32.2%減の355億9,100万HKドルと減少した。うち従業員関連のコストは14.9%減と2桁のマイナス。無給休暇の取得を要請したことが関係しているとみられる。

傘下の格安航空会社(LCC)、香港エクスプレス(香港快運航空)は税引き後の純損益が7億7,900万HKドルの赤字だった。3月下旬から運航を見合わせたことが響いた。

■旅客業務の回復困難

キャセイは6月、資金難に伴う経営破綻の危機を回避するため、香港政府と筆頭株主の英系複合企業スワイヤ・パシフィック(太古)、第2位株主の中国国有航空大手、中国国際航空(エアチャイナ)などに対する割り当て増資と政府によるつなぎ融資で計390億HKドルの資本を調達すると発表。資金は今月12日までに振り込まれたが、資金状況の先行きは楽観できない。

国際航空運送協会(IATA)によると、世界の航空需要がコロナ前の水準に回復するのは24年と予想されている。ヒーリー会長は「旅客業務は当面の間、明確に回復することはない」と厳しい認識を表明。足元で旅客の落ちこみをカバーしている貨物輸送についても、世界経済の深刻な低迷などを背景に「マイナスの影響が及ぶ」との見方を示した。

収入の多くが吹き飛ぶ中、同社はこれまで輸送能力の削減、経営陣の減給、従業員の無給休暇などさまざまな固定費削減策を進めてきたが、それでも現金の流出は4月までが毎月25億~30億HKドル、5月以降も同約15億HKドルに上っている。赤字が続けば新たに調達した資本も数年で底を尽きかねず、より踏み込んだコスト削減は待ったなしの状態だ。

キャセイの経営陣は今年第4四半期(10~12月)に、事業規模などの最適化に向けた経営改善策を取締役会に提言する予定だ。香港メディアによると、トウ健栄(オーガスタス・タン、トウ=登におおざと)最高経営責任者(CEO)は12日の記者会見で「コスト削減は不十分であり、困難を伴う決定を避けることはできない」と述べ、人員削減の可能性を示唆している。

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