【タイ】非常事態宣言を1カ月延長へ[社会](2020/07/23)
タイ政府は22日、新型コロナウイルス対策で発令している非常事態宣言の期限を7月31日から8月31日まで延長する方針を決めたと発表した。3月26日の発令後、4回目の延長となる。社会・経済活動の制限緩和の第6弾として近く実施する、外国人労働者の受け入れなどに備える。一方で、国内の市中感染は収束しており、政府の権限が強化される宣言の延長に反対する声が強まる中、宣言は公衆衛生上の目的で運用するとし、8月以降は現在禁止している集会などを認める方針だ。
政府は新型コロナウイルス感染症対策センター(CCSA)の会議での延長方針決定を受け、次週の閣議で最終的な承認を得る。タイ国家安全保障会議(NSC)のソムサック事務局長は、非常事態宣言を延長する理由として、◇出入国者の管理や隔離措置などを効率的に行う権限が必要◇中央集権的な危機管理体制が必要◇国が新常態に移行する上で非常事態宣言の効力が重要――であるとした。
非常事態宣言はこれまでプラユット首相に集会の禁止やメディアの検閲を可能とする権限を付与している。タイ国内では5月26日以降、感染が確認されたのは外国からの帰国者だけで、市中感染は出ていないため、度々の延長に「政治的な利用だ」との反発が強まっていた。先週末には、議会の解散や憲法改正を訴える学生団体などが大規模な反政府集会を開いていた。
これに対して、ソムサック氏は8月1日以降の非常事態宣言では、集会の禁止などの根拠となる「非常事態令第9条」を適用しないとの見解を述べた。その上で「宣言はあくまで公衆衛生上の目的だ。ただ、政治集会を行うには別の法律に従う必要がある」と強調した。
タイでは3月中旬に新型コロナの感染者が急速に拡大し、同26日に非常事態宣言が発令された。生活必需品を扱う小売店や工場などを除き社会・経済活動が制限されたが、5月以降は宣言を延長しつつも段階的に制限を緩和してきた。
■食品・建設業で労働者受け入れ
一方で、CCSAの会議では、制限緩和の第6弾の基本方針も承認された。新たに◇展示会の主催者◇映画撮影グループ◇カンボジア・ラオス・ミャンマー国籍の労働者◇医療観光者◇外国人富裕層向け観光VIPカード「エリートカード」の保有者――の入国を認める。
外国人労働者については、保健省とNSCの承認を受けた機関の施設での隔離(機関隔離=OQ)となるもよう。食品産業と建設業での就労を認める。
イベント主催者と映画撮影グループは、入国後にホテルを使った国の代替隔離(ASQ)や国の施設での隔離(SQ)となる見込み。イベント主催者は外国人10人につき1人の監視役、映画撮影グループには連絡係を配置することを検討している。
エリートカード保有者もASQかSQの対象となり、まずは200人の入国を認める。現在同カードの保有者は1万363人で、タイ国外に7,255人がいる。
入国する全ての外国人に、渡航の72時間以内のPCR検査、10万米ドル(約1,070万円)を補償する保険への加入などを義務付けるといい、詳細の入国手続きは今後発表するとしている。
政府は非常事態宣言の発令後、労働許可証の保有者らを除き外国人の入国を禁止してきたが、7月1日から入国制限を一部緩和。現在は◇タイ国籍保有者◇タイ国籍保有者の配偶者、両親、子ども◇タイの居住証明書の保有者もしくは居住する許可を得ている人◇労働許可証の保有者または法令によってタイでの労働が許可されている人、その配偶者、子ども◇タイ当局から認定されている教育機関に通うタイ国籍を保有しない生徒や学生、その両親もしくは保護者――などの11グループの入国が認められている。
ただし、入国に必要となる入国許可証の取得方法が煩雑な上、タイへ渡航する便を各国のタイ大使館が割り当てているため、入国できる外国人は限られている。7月22日現在、ASQの対象ホテルは26施設・2,687室となっている。
■帰国者6人の感染確認
CCSAは22日、新たに海外から帰国したタイ人6人の新型コロナ感染を確認したと発表した。市中感染は58日連続でゼロとなった。
新たな感染者のうち4人はエジプトから帰国した学生で、残りは米国とドイツから帰国した女性。
累計の感染者は3,261人で、現在の感染者は98人。回復者は3,105人、死者の数は58人で前日から変わっていない。累計の感染者に対する回復者の割合は95.2%、死者の割合は1.78%となった。
また今月上旬から中旬にかけ、隔離措置を受けなかったエジプト人兵士とスーダンの外交官の子どもの新型コロナ感染が判明したことを受け、国内で感染の可能性があった計7,207人がPCR検査を受けた結果、いずれも陰性だったと明らかにした。