【タイ】日系各社がSUVを積極投入[車両](2020/07/15)
タイの自動車展示・販売会「第41回バンコク国際モーターショー」がきょう15日、首都バンコク近郊で開幕する。新型コロナウイルスの感染拡大後、大規模な自動車展示会が開催されるのは世界初という。新車販売が大きく落ち込む中、日系各社は需要が拡大するスポーツタイプ多目的車(SUV)を中心に新モデルを投入し、市場の回復を促す。
タイの自動車市場でシェア3割を握る首位のタイ国トヨタ自動車(TMT)は、今月9日に世界初公開した、主力車「カローラ」シリーズの新型SUV「カローラクロス」をはじめ、6月に発表した1トンピックアップトラック「ハイラックス・レボ」とSUV「フォーチュナー」の新モデルなどを展示する。
ホンダオートモービル(タイランド)は、同展示会に合わせて13日に発表したばかりのSUV「CR―V」の新モデルのほか、フルモデルチェンジした小型セダン「シティ・ターボ」、今年5月に発表した乗用車「シビック」の「ターボRS」モデルの新カラー「イグナイト・レッド(メタリック)」など8モデルを展示する。
タイ日産自動車(NMT)は、今年5月にタイで発売した、独自のハイブリッド技術「e―POWER(イーパワー)」を搭載したSUV「キックス」などを展示し、同車のプレミアモデルを発売する。販売台数は500台限定で、アクセサリーのパッケージのほか、「プレミア」のキッキングプレートとバッジがつく。ボディーカラーは2色で、販売価格は109万9,000バーツ(約374万円)から。キックスは、バンコク東郊サムットプラカン県の工場で生産している。
マツダセールス(タイランド)は、今月2日に発売したクロスオーバーSUV「CX―3」の新モデルを展示・販売する。4つのグレードがあり、販売価格は76万8,000~104万8,000バーツ。最大10万バーツの割引や特典を付与する。同社は、2020年度第1四半期(4~6月)のタイにおけるクロスオーバーSUV市場でトップシェアを獲得している。
■三菱自、エクスパンダークロスなど訴求
ミツビシ・モーターズ・タイランド(MMTh)は、今年3月に発売した新型クロスオーバー多目的車(MPV)「エクスパンダークロス」と中型SUV「パジェロ・スポーツ・エリートエディション」をアピールする。エクスパンダークロスについては、8月31日までに予約すれば、89万9,000バーツの特別価格を適用するとともに、9月30日までの納車が可能という。
このほか、ピックアップトラック「トライトン」、小型セダン「アトラージュ」などを展示している。MMThの一寸木守一社長兼最高経営責任者(CEO)は、同社の19年の完成車の輸出台数が28万5,400台でメーカー別で最多だったと説明し、「ベスト輸出ブランド」を強調した。
■スズキ、セレリオの6月販売5.4倍増
スズキ・モーター・タイランドは、タイで販売する全モデルを展示。その中でも、3列シート7人乗りクロスオーバー「XL7」(エックスエルセブン)を訴求する。SUVの外観デザインとMPVの使い勝手の良さを融合させたモデルで、パワートレーンは1500ccガソリン・エンジン、車体構造に軽量・高剛性のプラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を採用している。価格は49万9,000バーツから。
天野実社長は、今年1~6月のタイの新車販売台数が前年同期に比べおよそ4割減に落ち込んだのに対し、同社は9%減にとどまったと説明。また、新型コロナの流行を受けた社会的距離(ソーシャルディスタンス)の確保の動きは、自動車選びにも波及しており、少人数向けの小型車が選ばれる傾向があると説明した。同社の場合、小型ハッチバック「セレリオ」の6月の販売台数が466台となり、前年同月比5.4倍に急増したという。
■いすゞは11モデル展示
いすゞ自動車のタイ販売会社トリペッチいすゞセールス(TIS)は、1トンピックアップトラック「D―MAX(ディーマックス)」を中心にアピールしている。前川敏章社長は、数年前にタイ市場に投入されたモデルながら、消費者から根強い支持を得ていると強調。今回のモーターショーでは、「D―MAX Vクロス4×4」など11モデルを展示している。
■感染防止策を徹底
第41回バンコク国際モーターショーは、バンコク北郊ノンタブリ県の展示場「インパクト」で今月26日まで開催される。開催時間は平日が正午~午後10時、土日・祝日が午前11時~午後10時。当初は例年通り3月に開催される予定だったが、新型コロナの感染抑制のためにタイ政府が非常事態宣言を発令したことを受けて3回にわたり延期され、ようやく開催にこぎ着けた。
タイ国内では新型コロナの第1波が収束しているが、第2波に備え、来場者にマスク着用やアプリ「タイ・チャナ(Thai Chana)」を使って入退場時間の記録を義務付け、赤外線サーモグラフィーカメラによる検温や消毒の実施、社会的距離の確保などを徹底している。
各メーカーのブースにも出入り口が設けられ、タイ・チャナの使用が求められる。TMTの菅田道信社長によると、同社のブースでは入場者の上限を180人(スタッフを除く)に設定。これを超えた場合は入場制限をかけ、入場待ちの希望者にショートメッセージサービス(SMS)で案内通知を送る。また、1時間ごとに清掃と消毒を行う。
同展示・販売会を主催するグランプリ・インターナショナルは、並行してオンラインで「バーチャル・モーターショー」を開催するほか、各メーカーもチャット機能などを駆使してオンライン販売を実施する。
TMTによると、タイにおける1~5月の新車販売台数は前年同期比38.2%減の27万591台。タイ工業連盟(FTI)は、通年の販売台数が50万~70万台にとどまり、新型コロナの影響が長引いた場合、19年の約101万台から半減するとの見通しを示している。