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【ベトナム】供給網の乱れ、高度化の礎に[経済](2020/06/19)

新型コロナウイルスの影響で、ベトナムのサプライチェーン(供給網)に混乱が生じた。調査によれば、地場企業の7割以上が中国などからの原料・部材輸入で問題に直面。在ベトナムの外資企業にも影響が出た。専門家は「同国政府は『組立工場』からの脱却に向けた製造業の高度化を推進するだろう」と指摘。米国際開発金融公社(DFC)もサプライチェーンの構築に関心を示している。

新型コロナの影響でベトナム製造業など7割以上が供給網の問題に直面した。写真は北部ラオカイ省の第2キムタイン国境ゲート(VNA=NNA)

新型コロナの影響でベトナム製造業など7割以上が供給網の問題に直面した。写真は北部ラオカイ省の第2キムタイン国境ゲート(VNA=NNA)

製造業のコンサルティングを手掛けるCELベトナムが同国の製造、小売り・卸売り、貿易商社などを対象に実施した新型コロナの影響調査(3月下旬から4月、有効回答は82社)で、全体の75%が「サプライチェーンに影響を受けた」ことが分かった。業種別では、製造業の86%、小売・卸売業の85%、貿易商社の80%の供給に問題が生じた。

いずれの分野でも、第1四半期(1~3月)、通年ともに業績低迷の要因となる見通しで、売り上げ計画から平均22%の下振れが見込まれる。CELは、第1四半期は「在庫」でカバーできた部分もあるが、供給停止が通年の業績に響くと分析。サプライチェーン寸断による混乱は、生産遅延だけでなく、物流コストの増加などを招き、利益を圧迫すると説明した。

商流が止まった原料や部材の最大の調達先は、中国が42%と最も多く、欧州が25%、中国を除くアジアからが24%だった。このうち原料輸入の影響が大きく、中国調達の内訳は、原料輸入(22%)、完成品(10%)、部品(4%)などだった。

他方、対象企業の84%が事業継続計画(BCP)を導入していたが、実際に対処できたのはわずか4分の1にとどまったという。

■供給網の寸断、外資企業も影響

各国の在越商工会議所などの調査でも、ベトナム進出企業のサプライチェーンへの影響が報告されている。

在ベトナム米国商工会議所(AmCham)の調査(2月末時点)では、製造部門の53%が調達に問題があると回答。在ベトナム欧州商工会議所(EuroCham=ユーロチャム、4月上旬調査)でも、「サプライチェーンの寸断」は事業インパクトの要因の上位3項目の一つで、回答企業の40%が問題を深刻に受け止めていた。

日本貿易振興機構(ジェトロ)ホーチミン事務所とホーチミン日本商工会議所(JCCH)が実施した調査(3月末)によれば、製造業の6割が「サプライチェーンへの影響がある」と回答し、非製造業でも25%に影響が出た。企業は、「在庫調整」(29%)や「調達先の変更」(27%)、「設備・原材料の変更」(17%)、「稼働率の抑制あるいは向上」(15%)などの措置を講じた。

■「脱中国」で米国の関心高まる

CELのジュリアン・ブラン氏はNNAに、今回のパンデミック(世界的大流行)により「ベトナムの供給基盤の脆弱(ぜいじゃく)さが強調される形になった」と語る。「米中貿易戦争などを背景にベトナムへの製造移転は進んでいたが、安価な労働力に頼る『組立工場』にとどまっている」。

新型コロナ感染が増えた直後から、ベトナム各産業界からは中国依存の構造変革を訴える声が上がり、同氏もこれを機に「時間はかかるが、政府が製造業の高度化を加速させる方針に出るだろう」と予測する。

今月初めには、米国の政府系金融機関であるDFCのアダム・ボーラー最高経営責任者(CEO)が、ハー・キム・ゴック駐米ベトナム大使と会談し、ベトナムを含む大メコン圏(GMS)における米国のサプライチェーン構築支援への関心を表明。これに先立ち実施された大使館と米国企業とのオンライン会議でもベトナムの投資誘致政策への質問が相次ぐなど、「脱中国」の動きとともに、ベトナムへの投資に注目が集まっている。

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