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【韓国】日系半導体部材が現地生産へ[IT](2020/05/28)

韓国での現地生産に乗り出す日本の半導体部材メーカーが増えている。昨年には関東電化工業(東京都千代田区)が韓国工場での生産を開始したのに続き、太陽ホールディングス(同豊島区)もこのほど工場建設を発表した。日本政府が昨年7月に輸出管理の厳格化を発表して以来、韓国ではサプライチェーン(供給網)を国内で完結させようとする機運が高まっている。このため、縛りの多い輸出から現地生産に切り替える動きは今後も続く見通しで、この供給網の再編が日系関連メーカーの「新常態(ニューノーマル)」となりつつあるようだ。

プリント配線板(PWB)部材メーカー大手の太陽ホールディングスは18日、半導体パッケージ基板向けのドライフィルム型ソルダーレジストを韓国で生産すると発表した。6月に新子会社「太陽アドバンスドマテリアル」を設立し、年400万平方メートルの生産能力を持つ工場を新設する。

ドライフィルム型は、細かい回路パターンの形成に適しているのが特長で、電装化が進む自動車やスマートフォンなどのIT機器での需要拡大が見込まれる。半導体とスマホの世界大手サムスン電子や、自動運転車の開発に力を入れる完成車大手・現代自動車のお膝元での現地生産を通じ、将来の需要確保を目指す。

ドライフィルム型ソルダーレジストで8~9割の世界シェアを持つ太陽ホールディングスはこれまで、北九州工場で生産し、輸出していた。しかし、日本政府による韓国向け輸出の厳格化を受け、韓国政府が国内生産や調達先の多角化などサプライチェーンの見直しに取り掛かったため、風向きが変わった。

同社の広報担当者は「(日韓関係の悪化で)韓国向け輸出に影響が出ている。事業継続計画(BCP)の観点からも、現地生産が必要と判断した」と述べた。

■日韓対立後に顕著化

実際に、日系半導体部材メーカーによる現地生産の動きは、日韓対立が深刻化した昨年下半期から顕著になっている。

関東電化工業は、忠清南道天安市で硫化カルボニルの製造を開始した。半導体の前工程で使われる特殊なガスで、それまで韓国では生産されておらず、韓国企業は全量を輸入に頼っていた。さらに、天安工場内に技術サポートセンターを開設し、開発面でも顧客対応能力を高める計画もある。

東ソー(東京都港区)は、子会社の東ソー・クォーツを通じて年内に半導体装置向け石英ガラスの製造を手掛ける現法を設立し、2021年の量産を目指している。

化学メーカーのADEKA(東京都荒川区)も、鹿島工場(茨城県神栖市)で生産している高誘電材料「High―K材料」など一部の半導体材料を「現地生産し、DRAM向け供給を拡大していく」(同社広報担当者)方針という。

このほか、東京エレクトロン(東京都港区)が、サムスン電子の平沢工場(京畿道)近くに「平沢テクニカルセンター」を新設するなど、顧客サポートを強化する動きもみられる。

■韓国「国内生産は歓迎」

日系企業による現地生産の加速は、韓国企業にとっても喜ばしい。国産化が成功したとしても、歩留まりの低下の懸念は根強く、「高品質が保証された日本製を使い続けたいというのが本音」(半導体業界の関係者)だからだ。関東電化工業の広報担当者は「昨年の天安工場の稼働時に、顧客の韓国企業から現地生産を歓迎された」と話した。

日本への依存度を下げたい韓国政府も、日系企業による「国内生産」は容認しているもよう。韓国半導体産業協会の安基鉉(アン・ギヒョン)常務は「韓国政府は日本政府の対応を通じ、サプライチェーンのローカライゼーション(地域化)の必要性を痛感したが、目指しているのは日系企業からの調達をゼロにする『脱・日本』ではない」とみる。

半導体部材メーカーの一連の動きは、BCPへの対応と顧客満足度の向上を目指したい日系企業と、サプライチェーンの再構築を目指す韓国企業・政府の利害一致が最大の要因と言えそうだ。

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