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【マレーシア】最長3四半期でマイナス成長も、SERC[経済](2020/04/07)

マレーシアの社会経済研究センター(SERC)はこのほど、実質国内総生産(GDP)成長率が、向こう2~3四半期連続でマイナス成長が続く、景気後退の局面にあるとの見方を示した。2020年の成長率は前年比3.0%減になると予測。マレーシア中央銀行が予測した下限値(2.0%減)を1ポイント下回る水準となる。

SERCは、マレーシア中銀が3日発表した20年見通しに対し、同日、独自の見解をまとめた。SERCのエグゼクティブ・ディレクター、リー・ヘンギー氏は6日、NNAのインタビューに応じ、「われわれのGDP成長率予測は中銀予測を上回る落ち込み幅となったが、新型コロナ問題の長期化による経済活動の混乱拡大のリスクを織り込んだ」と説明した。

また、「活動制限令を受け、中小企業の約77%が一時的に操業を停止しているほか、操業が認められている企業でも稼働率は平均40~50%にとどまる」と指摘。「28日間に及ぶ操業の制約で、今年第2四半期(4~6月)は景気が急激に落ち込み、四半期ベースで向こう2~3期連続でマイナス成長に陥る」との予想を示した。

今後の見通しについては、「世界規模のウイルス流行であるため、封じ込めから、人や企業の活動の安定化、回復までに少なくとも6~12カ月かかる可能性がある」とした上で、「マレーシア経済は長期的にU字型の回復曲線をたどる」と述べた。

企業業績の悪化により、20年のGDP成長率は項目別で「民間投資」が冷え込むと予想。SERCは前年比11.4%減と試算し、こちらも中銀予測(9.7%減)より下落幅が大きい。リー氏は「電気・電子(E&E)やパーム油、石油・ガスといった輸出指向型産業が、欧米や中国といった主要貿易相手国の需要減で苦境にある」とし、国内では、観光やホスピタリティー、娯楽、航空輸送、消費財、小売りなどの分野が大きな打撃を受けると指摘した。

雇用面では、中銀が20年の失業率予測を4.0%と、前年の3.3%から引き上げたことに触れ、「(失業率が4.0%の場合)失業者数は62万9,000人となる」(リー氏)と危惧する。企業が従業員の減給や無給休暇に踏み切る懸念に加えて、「最大の懸案事項は、中銀による個人向けローンの返済猶予期間中に失業し、猶予措置が終了した時点で返済能力を失っていることだ」と指摘した。

■感染抑止と経済成長のバランスを

リー氏は、活動制限令の延長の是非については、「新規感染者数の推移に基づき、政府が10日に発表するのを待つしかない」と述べ、「解除されたとしても、公共の場での『社会的距離』を含め、より厳しい衛生管理や予防措置を継続すべきだ」との見解を示した。

また、SERCとして、母体となるマレーシア華人商工会議所(ACCCIM)とともに、政府に対し、操業が認められる業種や要件の緩和を検討するよう申し入れていることも明らかにした。

ムヒディン首相が先月27日に発表した2,500億リンギ(約6兆2,400億円)規模の景気刺激策パッケージにも触れ、「GDPの17%に相当する規模で、景気後退による経済的損失と財政的損失を和らげる効果はあるが、工場を含め、企業の生産現場が完全に回復するまでは時間がかかり、国内の需要喚起に即効性があるわけではない」と指摘。今後、活動制限令の延長や追加の景気刺激策の検討においても、新型コロナの感染阻止と経済成長のバランスをいかに取るかが政府にとって最大の挑戦になる」と語った。

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