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【ミャンマー】日系企業に退避の動き拡大[経済](2020/04/06)

ミャンマー政府が新型コロナウイルス感染症の水際対策で、国際旅客便の運航許可を例外便に限ったことを受け、在留邦人の日本への退避が拡大している。ミャンマーで確認された同ウイルスの感染者は5日正午までに累計21人と比較的少ないが、今後拡大した場合の医療体制に不安があるためだ。日系企業の中には、事業継続のため責任者だけが残留するケースのほか、全員が一時帰国して遠隔での事業継続を決める会社も目立ち始めた。一方、工場を操業するメーカーには安定運営を重視して退避しない例もあり、各社の対応は分かれている。

外出を控える人が増え、閑散としたヤンゴン市内の幹線道=4日(NNA)

外出を控える人が増え、閑散としたヤンゴン市内の幹線道=4日(NNA)

ミャンマー政府は3月31日~4月13日まで、国際空港への民間旅客機の着陸を禁止した。ただ、日本とミャンマーを結ぶ唯一の直行便(成田―ヤンゴン)を飛ばす全日空は、日本政府とともにミャンマー側と協議し、例外的に帰国便に限った運航を13日まで継続できる見込みになった。

14~24日は、従来の週7便を週2~5便で運航する計画を明らかにしているが、ミャンマー側による封鎖措置が延長される可能性は残る。また、日本側の検疫強化で海外からの航空便の受け入れが抑制され、ミャンマーからの便も減便となる恐れが出てきた。

ミャンマーの感染者数はまだ近隣国より少なく、拡大の初期段階にある。感染者が出ると、付近一帯が予告なく封鎖されるなど、生活の不便は出てきているが、最大都市ヤンゴンでは、地元での食料品や医薬品の供給に支障はみられない。日本食を含むレストランは、現時点で持ち帰りメニューの提供が認められている。

■医療体制を懸念

ただ、医療面では、新型コロナの感染を判定できる施設がヤンゴンの国立衛生研究所1カ所しかないほか、重症化した患者を適切に治療できる病院や隔離施設が少ないなど、課題は多い。英国は3月中に、医療リスクを理由に自国民への退避勧告を出した。日本政府も3月末、ミャンマーの感染症危険情報レベルを、それまでの「レベル1(十分注意してください)」から「レベル2(不要不急の渡航は止めて下さい)」に引き上げている。

日系企業では、駐在員の帯同家族や子どもの大半が、3月中に既に帰国した。空路の封鎖を受け、駐在員についても、帰国を決める会社が4月1日以降に急増している。

最大都市ヤンゴンに拠点を構える日系の金融大手は、空路封鎖の状況が今後も改善しない場合には、約10人の駐在員のうち、ミャンマー人の家族がいる1人を除き、全員が退避する方向で準備に入った。同社幹部は「フライトの運航存続が保証できなくなり、医療面のリスクが増したことが最大の要因」と説明。10日からのティンジャン(ミャンマー正月)前に、日本とミャンマーを結ぶテレワークができる体制を整える計画だ。

オフィスワークが多い商社や銀行のほか、建設大手などでも、現地法人の代表とコアメンバー数人を残して退避するケースが目立っている。

■ティラワでは通常操業も

一方、工場を稼働させている製造業では、通常通りにミャンマーでの事業を続ける会社もある。ヤンゴン近郊のティラワ経済特区(SEZ)に工場があるメーカーは現時点で退避は行わない意向で、駐在員9人全員が工場や販売店の管理に当たる。同社はインドや日本の工場は稼働を停止しているが、ミャンマーでは当面、生産を続ける。幹部は「300人を超える従業員が休まず出勤している。今後の原材料の輸入状況は現時点で見通せないが、可能な限り生産活動を行う方針」と話す。

例年であれば、ティンジャン(ミャンマー正月)に向けた催事でにぎわうモールも、必需品を求める人だけが行き交う=4日、ヤンゴン(NNA)

例年であれば、ティンジャン(ミャンマー正月)に向けた催事でにぎわうモールも、必需品を求める人だけが行き交う=4日、ヤンゴン(NNA)

大手飲料メーカーでは、家庭での備蓄などに伴う需要増から生産を伸ばしており、全7人が退避せず業務に当たる計画だ。ティラワSEZの運営会社、ミャンマー・ジャパン・ティラワ・デベロップメント(MJTD)によると、新型コロナの影響で、駐在員の退避や減産に踏み切る企業は出ているが、事業を停止する企業は5日時点で、日系以外を含め出ていない。

ミャンマー政府は、外国人の入国を減らすため、商用を含む全てのビザ(査証)の新規発給を4月末まで停止している。ビザの延長・更新手続きは国外では行えない。企業にとっては、いったん出国した場合に現状の体制維持が難しくなる懸念がある。

ミャンマーは2011年の民政移管後、日本企業の進出が増えた。ミャンマー日本商工会議所(JCCM)の加盟企業は、3月時点で約420社となっている。

決済などを含む現場の運営が現地人だけでは困難な場合も多く、各社は事業継続のためのかじ取りに厳しい判断を迫られている。

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