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【ベトナム】売上5割減など飲食店に打撃[サービス](2020/03/25)

ベトナムのホーチミン市に展開する日系飲食店が、新型コロナウイルス感染症で打撃を受けている。入国規制で観光客が激減したことや外出を避ける風潮が、マイナスに拍車をかける。同市では15日から映画館やカラオケ店、バーなどの営業が停止となり、24日には、30人以上を収容できる飲食店の営業が31日まで停止になった。日系の飲食店オーナーらにテト(旧正月)以降の事業状況と、今後の対策について話を聞いた。

新型肺炎の拡大によって、繁華街のカラオケやバーは営業を停止している=ホーチミン市

新型肺炎の拡大によって、繁華街のカラオケやバーは営業を停止している=ホーチミン市

「外出を控える人が多く、街は本当に静かになった。とにかく客が来ない」――。飲食店経営者らは口々に話す。テト休み明け(1月29日)以降、観光客は街から徐々に姿を消した。ベトナムの統計総局(GSO)が2月29日に発表した、同月にベトナムを訪れた外国人旅行者数は124万2,700人で前年同月比21.8%減少した。同国を訪れる観光客数でトップの韓国は、前年同月比16%減。2位の中国に至っては62.4%減だった。

ある日系洋食店の経営者は、「客足に影響が出ており、売り上げは30~40%減少した」と話す。特に日本人や韓国人、中華系の客が減ったという。1区などに出店するスイーツ販売店でも、2月以降に利用客が減少している。教育機関の一斉閉鎖でターゲットであるベトナム人の学生が来店しなくなったためだ。展開する店舗の1つでは客数が3分の1にまで減少した。ホーチミン市1区に出店する和食店では、5割も売り上げが減少した。観光客だけでなく、ベトナム人の週末利用も激減し、家族で人が集まる場所に行かなくなったことが顕著に影響を及ぼしているとみられる。

ベトナム政府は22日から原則的に全ての外国人の入国を禁止している。入国禁止措置には期限が定められていないため、観光客の飲食店利用は当分期待できない。また、地元メディアによれば、ホーチミン市は24日午後6時から30人以上収容できる飲食店の営業を31日まで停止する。同市に展開する飲食店の売り上げは一層悪化すると予想される。

■従業員の家族などから不安の声

新型肺炎は売り上げだけでなく、働き手にも影響する。和食店の経営者は「特にホーチミン市で感染者が出たあたりから、スタッフやその家族らが非常に神経質になった」と話す。取材した複数の飲食店では不特定多数の人間が出入りする飲食店でのアルバイトに親が反対し退職する学生や、教育機関の閉鎖が続き、親を安心させるため一時休職して帰省する学生が出てきている。ただ、帰省する学生からは「新型肺炎は怖いが、ホーチミン市で働けないとお金が稼げない」と、学費や生活費について不安の声が聞かれた。

従業員や利用客の不安を和らげるよう衛生管理は一層強化している。和食店では、スタッフの就業開始時には検温や問診を実施し、問題無ければ胸にシールを付けて入店する。洋食店は、アルコール消毒液を入り口に設置するほかスタッフのマスク着用を徹底する。ある日系大手の外食チェーンは、衛生管理は元々従業員向けにやっていたが、アルコール消毒液は利用客も使用できるよう設置場所を変えている。スイーツ店も従業員だけでなく、利用客にも入店前に手の消毒をするよう呼びかけている。

■影響深刻も、デリバリーが好調

「現時点で影響は大きく、既存店舗の年度予算の見直しが必要だ」―。今後の業績に与える影響について、和食店はこう指摘した。また、計画している新規出店の延期も視野に入れている。洋食店の経営者も、「経済的に資金がキャッシュアウトする可能性が高く、今後の出店などに影響が出そうだ」と話す。一方スイーツ店は「新型肺炎の影響が長引くと大変だが、店舗を拡大する直前だったのが幸いした」とそこまで大きな影響はないとした。まだ事業の本格的な拡大に着手していないため、最悪年内まで新型肺炎が終息しなくても、持ちこたえられる見通しだという。今後、営業できなくなることも想定してベトナムにキャッシュを準備している。

新型肺炎の拡大が多くの産業に影響を及ぼす中、新たな需要が生まれている。地元メディアによれば、外出先での感染を避けるため、電子商取引(EC)や料理宅配サービスの利用が急増している。シンガポールの配車アプリ大手グラブなどが提供する出前サービスは、新型肺炎の流行前と比べ約50%利用が拡大したという。

大手外食チェーンでは客足が遠のいたものの、その半面出前サービスや持ち帰りが好調だという。洋食店でも出前の注文が増加している。同店経営者は「営業自体は攻めの姿勢を変えていない」と強調。出前サービスの需要に対応しつつ、状況を見ながら販促プロモーションを実施していく計画だ。

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