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【台湾】百貨店が「宅経済」に対応[経済](2020/02/19)

台湾の百貨店業界が「宅経済(在宅での消費活動による経済)」への対応に乗り出している。一部の大手は電子商取引(EC)サイトやアプリを通じて、商品や飲食の宅配サービスに着手した。新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大で市民の間に外出自粛の動きが広がる中、デジタルサービスを強化することで、来客減少の穴埋めを図る。

百貨店業界が「宅経済」への対応に乗り出している。新型肺炎に伴い外出を控える動きが市民の間で広がる中、積極的に消費者ニーズを取り込む考えだ=台北(NNA撮影)

百貨店業界が「宅経済」への対応に乗り出している。新型肺炎に伴い外出を控える動きが市民の間で広がる中、積極的に消費者ニーズを取り込む考えだ=台北(NNA撮影)

経済日報など台湾各紙が伝えた。このうち台湾百貨店大手の新光三越百貨は14日、顧客向けの新たなサービスを発表した。新型肺炎の感染を避けるため外出を控える消費のニーズを取り込む考えだ。

今月21日から持ち運び可能な決済端末250台を導入。商品を顧客の元に届けた際に現金支払いのほか、クレジットカードにも対応できる決済方法を提供する。サービス対象は高額商品を購入する富裕層を主体に据える。目の前でカード支払いを確認できることで顧客により安心感を持ってもらう狙いもある。

自社ECサイト「美麗台(ビューティー・ステージ)」は2月末をめどに、取り扱い商品数を拡充する予定。美麗台ではこれまで化粧品・ケア用品を主体としていたが、コンシューマー・エレクトロニクス製品や日用品・健康商品、母親・乳幼児向け用品、スポーツ・レジャー用品、女性向け雑貨の5分野を追加し、幅広い商品を取り扱う。

自社アプリも美麗台と連結し、宅配機能を追加する。これまではアプリ経由で購入しても、店舗に商品を取りに行く必要があった。

店舗に入居する180の飲食ブランドと提携し、2月末から提携先店舗のフードメニューを顧客先まで届ける。自社アプリか提携先のフードデリバリー業者から注文を受け付ける。新光三越がフードデリバリーを手掛けるのは初めて。

同業大手の遠東SOGO百貨(遠東そごう)も、来店せずに商品を購入できる複数のサービスを打ち出した。

高級ブランドの商品や化粧品などを対象に、社員が顧客の元を訪れ、持ち込んだ商品の中から購入品を選ぶサービスを開始。台湾全域を対象とした無料の配送サービスも展開する。フードデリバリーサービス最大手のドイツ系「フードパンダ」と組んで、域内の遠東SOGO百貨の飲食店から顧客の元に商品を配送するサービスを始めた。

ショッピングセンター(SC)の「環球購物中心(グローバルモール)」は月末までに、アプリを通じて商品を顧客に届ける新しいサービスを始める予定だ。

各社は新型肺炎の感染予防商品の販売に注力している。このうち遠東SOGO百貨では2月初めにECサイト上で関連商品を集めた専門コーナーを設けたところ、直近2週間弱の販売は前年同期に比べ4倍に急伸。台北駅北側のSC「京站時尚広場(Qスクエア)」でも、空気清浄機や健康食品、消毒関連商品の販売量は2割伸びた。

■高級ブランドにも活路

百貨店業界は、高級ブランドの引き入れにも力を入れている。来客の減少で飲食の売り上げが期待できない中、今年は高単価の商品で富裕層を呼び込み、挽回を図る考えだ。

遠東SOGO百貨の幹部は、「百貨店企業の売り上げを押し上げるのは新店の開店ではなく、高単価商品の引き入れにある」と指摘。富裕層が高級ブランドを買いに来店すれば、家電など単価の高い商品の販売も伸びるとみている。

今年は「グッチ」や「オメガ」、「オーデマ・ピゲ」といった高級ブランドが域内各地の百貨店に専門店を設ける見通し。このうちグッチは、台北市の「遠東SOGO百貨台北復興館」の1~2階を使う大型店を設け、4月に営業を始める予定だ。

工商時報によると、各百貨店の飲食店の売り上げ比率は近年、平均で約20%となり、直近10年で最高の水準。30~45%に達する大型店もある。一方、高級ブランドの売り上げ比率も高く、「台北101」は全体の6割以上を占め、微風広場実業が運営する「微風(ブリーズ)」ブランドのSCでは昨年55%だった。

■4割減収も

新型肺炎を受けた百貨店の客足の伸び悩みは鮮明化している。

台湾の百貨店の業界団体、中華民国百貨零售企業協会のセン武哲秘書長(セン=膽のつくり)は、会員百貨店の現在の来店者数が平均で2割落ち込み、売り上げが1割減少していると明らかにした。新型肺炎の感染を恐れ、人が集まる百貨店を避ける傾向が出ていると説明した。

新光三越によると、得意客以外で店舗を訪れる一般買い物客からの売り上げは10%弱減少。地域で見ると、得意客を比較的確保している中南部の店舗の売り上げは減少幅がさほど大きくないものの、一般客や観光客の多い桃園市以北に立地する店舗では影響が大きいという。

中国時報によると、京站時尚広場は客足が約3割、環球購物中心と百貨店の「大葉高島屋」でも5~10%それぞれ減っているという。

台北市の「信義商圏」に位置する百貨店の関係者によると、1日当たりの売上高は従来から約4割減少。中でも女性服売り場の不振が目立ち、今月1~12日の女性服売り場の売り上げは前年同期から100万台湾元(約365万円)減少した。

百貨店ではミドルレンジ・ローエンドのブランドが最も打撃を受けているとの指摘もある。域内の百貨店に計50近いテナントを持つアパレルブランドでは、南部での売り上げが4割、中部・北部が4割以上それぞれ落ち込んでいるという。

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