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【ベトナム】売上減や部品調達に不安拡大[経済](2020/02/20)

ベトナムで新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が拡大し、メーカーや飲食店にも影響を及ぼしている。街中では人通りや交通量が減り、小売店やレストランからは売り上げ減少の声も聞かれた。現時点では目立った損害は見受けられないものの、終息のめどが立たたないため、今後の業績への懸念が広がっている。日系企業の責任者や飲食店の経営者らに、新型肺炎による事業への影響と対策について聞いた。

マスクを着用して街を歩く女性ら=18日、ホーチミン市

マスクを着用して街を歩く女性ら=18日、ホーチミン市

「自粛ムードが漂っている印象だ」――。ホーチミン市1区レタントンにある日系飲食店の店主は、最近の街の様子をこう表現した。同市は、テト(旧正月)期間終了直後から活気を徐々に取り戻したようだが、人通りや交通量はまだ完全に戻っていない。「テト明けは通常売り上げが良いが、街に人がいないので、売り上げが2~3割減少している」。従業員にはマスク・手袋・アルコール除菌を徹底し、従業員にも客にも不安を与えないように努めているが、向こう1カ月で通常通りに戻らないとキャッシュフローに影響すると危機感をあらわにした。一方で、特別な変化が見られない飲食店もあった。主にすしを提供する別の店では、普段から手洗い・消毒を徹底しているため特別な変化はないという。客足に影響は見られないが、今後状況を注視する必要はある。

オフィスビルには、マスク着用を義務付けるポスターが貼られている=ホーチミン市

オフィスビルには、マスク着用を義務付けるポスターが貼られている=ホーチミン市

ベトナムで初めて新型コロナウイルスの感染が確認されたのは、1月31日。それから約3週間後の19日時点での国内の感染者は16人になった。飲食店以外にも影響は及ぶ。

■人やモノの移動制限に懸念

日系の電子機器製造業では、従業員への健康チェック、社内での感染予防対策に追われている。出勤時に38度以上の熱がある従業員や顧客、業者は入館不可にするほか、社内医療室を受診し、風邪の症状がある従業員にはマスク着用を義務化。健康な従業員にはマスク着用を推奨している。また日本でウイルス感染が拡大しているため、労働組合よりベトナム人スタッフから日本人とベトナム人の居室を分けるよう要望があったという。

生産体制に支障はないが、労働許可書の発給停止の範囲が日本人に拡大された場合や、ベトナムへの渡航禁止の範囲が日本に拡大された場合に影響があると懸念を示した。

ある自動車メーカーでは、工場の作業員と内勤のスタッフ全員が出社の際に受付で熱をはかり、マスクの着用を奨励する。来社する人に対しても同様の措置を取る。生産への影響について同社の幹部は「中国から輸入している部品に欠品が出るという話がいくつか来ている」と話す。「タイや日本などから代替できれば問題ないのだが、中国からしか入手できないものもある」とし、今後の生産に不安があると話した。別の自動車メーカーも一部部品を中国の生産に頼っているため、同様の懸念を口にした。人やモノの移動が停滞し、自動車需要が減ることが心配だという声も聞かれた。工業団地の運営会社は、新型肺炎の情報は常にチェックしているが、対策は入居企業に任せていると回答した。

■教育機関は休みを延長

教育機関も対応に追われている。政府公式サイトによれば、ベトナムの全63省市で、教育機関が2月末まで閉鎖されることになった。ホーチミン市日本人学校も、当局の指示に従い休校となっている。児童・生徒の家庭からは、テトを含めて1カ月以上となる予想外の「長期休暇」に、学習カリキュラムへの影響を心配する声も聞かれる。学校側では、教師による児童・生徒の家庭訪問を実施し、課題を与えることで学習進度の一部を補っていく方針だ。

ベトナムの感染者数は中国や日本などと比べれば多くない。これまでの感染者の平均年齢が約36歳と比較的若いことが幸いしてか、重症化した患者や死者も報告されていない。ただ、終息の兆しや経済への影響は依然不透明であり、当分不安な日々が続きそうだ。

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