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【韓国】韓国車、中国依存の課題露呈[車両](2020/02/18)

中国発の新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大の影響で、韓国の完成車メーカー5社全ての国内生産ラインの稼働が一時停止し、中国依存のサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)さが改めて浮き彫りとなった。各社は、地理的に近く人件費の安い中国を活用し、在庫を持たない「ジャストインタイム方式」による生産体制でコスト競争力を高めたものの、予想外の事態になすすべがない。中国依存のサプライチェーンの見直しは簡単ではなく、自動車業界のジレンマは続きそうだ。

韓国の完成車メーカーは、世界最大の自動車市場である中国に構築したサプライチェーンへの依存を深めている。

韓国自動車産業共同組合に加盟している約140の部品メーカーが現在、中国で約320の工場を運営中で、その多くは現地で自動車を生産する現代・起亜自の関連会社とされる。韓国貿易協会によると、韓国の自動車部品の2019年の対中輸出額は21億7,500万米ドル(約2,389億6,600万円)と、14年(67億645万米ドル)と比べて7割近く減少した。その半面、中国からの輸出額は15億5,958万米ドルと、同期間に17.7%増えた。

韓国の完成車メーカーが今回、国内の生産ラインの稼働を一時停止した背景には、主に車体に取り付けるワイヤハーネス(組み電線)の調達に支障が出たためだ。ワイヤーハーネスは、複数の電線を束ねるなど手作業の割合が大きいため、他の部品に比べて中国で生産する費用対効果が大きく、9割近くを中国から輸入している。

■京信「ひっきりなしに対応」

韓国関税庁は中国のサプライチェーンの乱れに対応しようと、1~14日までに1,813トン、金額にすると3,323万米ドル相当のワイヤーハーネスを通常の検査なしに通関させた。現代自動車は韓国国内の工場を11日から段階的に再稼働し、17日には商用車を生産する全州工場を除く全ての工場で稼働が再開した。ただ、中国からの部品調達は依然として不十分で、予断を許さない状況だ。特に、現代・起亜自の中国依存度は「親会社を中心とするグローバルなサプライチェーンを持つ韓国GMやルノーサムスン自動車以上」(業界関係者)とみられる。

中国からひっきりなしに電話がかかってきて対応に追われている――。中国の4工場でワイヤーハーネスの製造を手掛ける韓国企業の京信の広報担当者はこう言って頭を抱える。京信は、現代自が使うワイヤーハーネスの5割を生産している。ところが、新型肺炎の影響で春節(旧正月)休暇明け後も自社の中国工場の休業状態が続いたことで、納品予定に大幅な遅れが生じた。京信の広報担当者によると、14日までに4つの工場全てで稼働が再開したものの、稼働率は50%にとどまっている。交通規制や外出制限で従業員が十分に集まらない状況だ。

京信が生産する各種ワイヤーハーネス(同社提供)

京信が生産する各種ワイヤーハーネス(同社提供)

京信は現在、スケジュールの遅れを取り戻そうと、韓国工場をフル稼働中だ。納期の短縮に向け、「米国、インド、カンボジアにある工場で生産したワイヤーハーネスを飛行機で韓国に空輸する案も検討している」(同広報担当者)という。

大林大自動車学科の金必洙(キム・ピルス)教授は韓国メーカーの中国依存のサプライチェーンについて「部品の調達先の多様化は管理費や調達コストの上昇につながるだけに、見直しは簡単ではない」と話す。LG経済研究院の金ボムジュン研究員は「万が一の時に備え、在庫を増やすなど、ジャストインタイム方式に弾力性を持たせる必要がある」とコメントした。

韓国の完成車メーカーは調達先の多様化に踏み込むのか。各社の経営判断に注目が集まりそうだ。

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