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【ベトナム】ダイハツ、ベトナム人整備士を日本で活用[車両](2020/01/13)

ダイハツ工業は、ベトナム人整備士の日本での活用を進める。日本の街を走る自動車の数が増える一方、整備士業界では「若者の車離れ」が起こっている。ダイハツは、新たに整備士1,500人を確保する方針で、総合人材サービスのワークスタッフ(徳島市)やベトナムの大学などと協力し、同国の人材育成に取り組んでいる。

寄贈したカットエンジンとトランスミッションについて説明するダイハツの生駒氏(右から2人目)=10日、ハノイ

寄贈したカットエンジンとトランスミッションについて説明するダイハツの生駒氏(右から2人目)=10日、ハノイ

ダイハツの生駒勝啓エグゼクティブ・アドバイザー(次世代車両の研究機関「くらしとクルマの研究所」の特命担当)は10日、ハノイのトゥイロイ大学(元・水利大学)を訪れ、機械工学部にエンジンのカットモデルとトランスミッションを寄贈した。同大学では毎年650人が同学部に入学し、このうち250人が自動車工学を学ぶ。日本で働いてもらうことを視野に、授業に役立ててもらう考えだ。

生駒氏は「ダイハツは約5,000人の整備士を抱えるが、自動車の仕組みを知り尽くす整備士は他部門でも需要が高い」と指摘した。元整備士が販売員となれば、顧客に車両の情報を正しく伝えられる。キャリアアップもあるため、整備士を持続的に確保していく必要があると訴えた。

ワークスタッフのベトナム法人ワークスタッフ・ベトナムの山部剛社長によると、日本人の間では、整備作業による汚れなどを敬遠し、整備士を目指す人が減っている。ワークスタッフがベトナム人を採用して派遣する事業モデルにより、整備士の需給バランスの是正に貢献することができる。

自動車検査登録情報協会によると、2019年3月末時点の日本の自動車保有台数(二輪車除く)は、前年同期比0.3%増の7,814万台だった。前年を超えたのは、9年連続。

ワークスタッフが、ベトナム人従業員をダイハツに派遣する事業を始めたのは2017年。現在は4期生の派遣の準備を進めている。ベトナム人には日本人と同等の給与を支払っており、「安い労働力とはみていない」(山部氏)。ダイハツの日本の販売拠点では、既にベトナム人20人が整備作業に従事している。

ダイハツが寄贈したカットエンジンとトランスミッションを学ぶ学生=10日、ハノイ

ダイハツが寄贈したカットエンジンとトランスミッションを学ぶ学生=10日、ハノイ

■言語の壁、大学と連携で打破

「実直でまじめで、日本人と合う」。山部氏をはじめ、日本人の企業関係者はベトナム人材をこのように評する。ただ、課題の一つとしてよく挙げられるのは、「言語の壁」だ。

トゥイロイ大のチン・ミン・トゥ学長は「企業のニーズをつかみ、必要とされる人材を輩出していきたい」と意気込む。機械工学部では18年、日本企業への就職を見据えた日本語プログラムを開始した。同年の第1期生は78人、翌19年の2期生は100人。このうち約半数は自動車工学を専攻している。今後は、毎年120人を同プログラムで育てていく考えだ。

生駒氏は、機械工学部の学生とも話し、「よく勉強しており、基礎的な日本語能力は申し分ない」との見方を示した。これからは、正確さが求められる現場でのコミュニケーションをより円滑にしていくための取り組みを、トゥイロイ大などベトナムの高等教育機関と連携して進めていく。

山部氏によると、ワークスタッフが採用し、日本に派遣しているベトナム人は現在計300人。ダイハツとは整備部門の他、開発などでも連携している。自動車メーカーのほか、半導体メーカーなどでもベトナム人が活躍している。

厚生労働省によると、日本で働く外国人労働者数は、18年10月末時点では中国人が最多だが、製造業に限ればベトナム人が最も多い。製造業に従事する外国人労働者43万4,000人のうち、ベトナム人は11万5,000人だった。

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