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【ベトナム】アジア新興国の成長鈍化、低迷リスク=世銀[経済](2019/10/11)

世界銀行は10日、東アジア・太平洋地域(EAP)新興国の経済成長率が、鈍化基調になるとの見通しを明らかにした。2018年実績は6.3%。19~21年は5%台に下がると予測する。米中貿易摩擦のあおりで輸出や投資が落ち込み、低迷リスクが高まっている。貿易自由化やインフラ支出の拡大など、下支え策が急務との見方を示した。

EAP新興国の経済成長率は、19年が5.8%、20年が5.7%、21年が5.6%になるとの予測を示した。19~20年は、今年4月の発表値からそれぞれ0.2ポイント、0.3ポイント下方修正した。

中国(18年実績=6.6%)の予測値は、19年が6.1%、20年が5.9%、21年が5.8%。対米輸出が滞り、「世界の工場」としての活力が鈍る。

EAP担当のリードエコノミスト、アンドリュー・メイソン氏は「高関税回避に向け、中国から域内他国への生産シフトが進められるものの、新興国が中国の代替となることは厳しい」と指摘した。これまで適切なインフラ投資が実施されておらず、生産能力が比較的低いとみている。

中国を除くEAPの成長率は、18年実績が5.2%。19~20年がともに4.9%(4月発表値からそれぞれ0.3ポイント下方修正)に、21年が5.0%になると予測する。18年に成長率7%台となったカンボジアとベトナムは、今年は0.5ポイントずつ下がり、それぞれ7.0%、6.6%になると予測。フィリピンでは19年度予算の成立が遅れ、マレーシアの巨額インフラ事業の見直し、タイの不透明な政治先行きなど、各国で成長率を鈍化させるリスクがくすぶっている。

■ベトナム、投資誘致の正念場

世銀のモリセ氏(左)は「アジア全体では経済成長率が鈍化しているもののベトナムは比較的堅調」との見解を示した=10日、ハノイ

世銀のモリセ氏(左)は「アジア全体では経済成長率が鈍化しているもののベトナムは比較的堅調」との見解を示した=10日、ハノイ

世銀のメイソン氏は「ベトナムやマレーシアなど、中国からの生産移管先として製造業への投資が増えた国もある」と語った。ただ、米中貿易摩擦の恩恵は短期的なもので、貿易自由化やインフラ投資などを進めなければならないと強調した。

ベトナム担当のリードエコノミスト、ジャック・モリセ氏はNNAに対し、「ベトナムが対米輸出の代替国として恩恵を享受したが、既に『調整』がされるようになっている」と指摘。他のアジア新興国と同様に、輸出成長率は鈍化基調にあると説明した。

一方、ベトナムは新興国の中で高成長を続けており、「比較的堅調で、リスクが高まるアジアの中で見通しが明るい」(モリセ氏)。ベトナムの今年1~9月の国内総生産(GDP)成長率は6.98%。高成長を続けるための経済改革の正念場を迎えている。

同国担当のシニアエコノミスト、ファム・ミン・ドゥック氏は「中堅企業の不在がベトナムの課題だ」と話す。大規模な国営企業グループの存在感が大きい一方、地場企業の大半は中小・零細企業となっている。外資企業と地場企業との連携を促進して中堅企業を育て、輸出拡大につなげるべきと訴えた。

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