【香港】国慶節デモ、経済不振に拍車=破壊被害も[経済](2019/10/03)
中国国慶節(建国記念日)の1日に香港で行われた激しい抗議活動は、低迷する経済活動に追い打ちを掛ける結果になった。デモ隊は中国本土と関係のある一部店舗を破壊。香港地場の宝飾品販売大手や商業施設約30カ所は安全面に配慮して営業を停止した。国慶節の記念レースが行われた競馬場の来場者は前年比で4割超減った。
2日付信報など地元各紙が伝えた。
1日の抗議活動では、本土と関わりのある企業の店舗が破壊されるなどの被害が相次いだ。新界・セン湾(セン=くさかんむりに全)では、旅行代理店大手の香港中国旅行社の近くでデモ隊が放火。中国移動(チャイナ・モバイル)なども被害に遭い、中銀香港は現金自動預払機(ATM)が破壊された。
デモ隊は、警察を支持しているとされる飲食店などでも破壊行為を行った。標的になった地場外食大手、美心集団(マキシム・グループ)では、傘下の中華料理レストラン、美心皇宮(マキシムズパレス)の店舗の装飾が壊されたほか、ベーカリーチェーンの東海堂(アローム)は火炎瓶を投げ付けられる被害を受けた。美心は創業者の長女が国際会議でデモ参加者を「暴力分子」呼ばわりした発言などを受けて、最近も不買運動呼び掛けの対象になっていた経緯がある。
「警察支持」と指摘されたことのある日系牛丼チェーンの吉野家も破壊の被害に遭った。香港の吉野家は現地企業の合興集団(ホップ・ヒン・グループ)が運営している。
■「もはや黄金週ではない」
宝飾品販売大手のプリンス・ジュエリー&ウオッチ(太子珠宝鐘ヒョウ、ヒョウ=金へんに表)は1日、来店客や従業員らの安全に配慮し営業停止を余儀なくされた。トウ鉅明(トウ=登におおざと)会長によると、「逃亡犯条例」改正案に端を発した社会的混乱によって本土客が減少しており、9月の売上高は半減した。国慶節連休と10月の売上高はさらに減少するとみている。従業員には長期の休暇取得を求めているほか、店舗の営業時間を1時間短縮した。
同業の周生生集団国際は、香港鉄路(MTR)の駅閉鎖によって従業員の通勤に支障が出ることから、大部分の店舗の営業を午後2時~3時ごろに終了した。劉克斌・中華圏営業部門責任者は国慶節の売上高が前年同期比で3割程度減ると見込んでいる。
化粧品業界でもMTR沿線を中心に閉店が相次いだ。業界団体の香港化粧品同業協会の何紹忠(ジョセフ・ホー)会長は「台風が上陸したのと同じ状況だ。例年はゴールデンウイークと呼ばれる国慶節だが、今年はまったく違う」と肩を落とした。
■新鴻基は9カ所で営業中止
各紙によると、香港域内で1日に営業を取りやめた大型の商業施設は約30カ所に上った。
地場デベロッパー大手、新鴻基地産(サンフンカイ・プロパティーズ)は、香港島・セントラル(中環)のIFCモール、コーズウェーベイ(銅鑼湾)の世貿中心、九龍・観塘のapm、新界・沙田のニュータウンプラザ(新城市広場)など9カ所の施設を臨時休業とした。大規模な抗議活動が行われる可能性があり、来店客と従業員、テナントの安全を優先したと説明した。
MTRを運営する香港鉄路公司(MTRC)傘下の商業施設では、九龍湾のテルフォードプラザ(徳福広場)、MTR九龍駅に直結するエレメンツ(圓方)、新界・青衣地区のマリタイムスクエア(青衣城)が臨時休業を発表した。
一方で、不動産投資信託(REIT)大手、リンク・リアル・エステート・インベストメント・トラスト(リンクリート、領展房地産投資信託基金)は、運営する商業施設90カ所のうち、九龍・黄大仙の施設の営業を途中で取りやめた。付近でデモ隊と警官隊が衝突したためだ。その他の施設に影響は出なかったという。
■競馬来場者は4割減
1日に国慶節の記念レースが行われた競馬場でも、新界・沙田と香港島・ハッピーバレーの両競馬場の来場者が前年比42.5%減の2万1,914人に落ち込んだ。賭け金は2.1%減の14億7,400万HKドル(約202億6,000万円)だった。
MTRCは1日、最終的にMTRの47駅を閉鎖した。全94駅の半数に当たる。
香港政府入境事務処(入境管理局)によると、1日に香港に入境した延べ人数は32万6,528人だった。このうち本土客は9万3,097人。2日付信報によると、昨年の10月1日の入境者数は65万5,000人、本土客は24万7,000人で、いずれも半分以下に落ち込んだ。