【香港】金融市場に調整リスク、HKMA総裁[経済](2019/05/07)
香港金融管理局(HKMA)の陳徳霖(ノーマン・チャン)総裁は6日、トランプ米大統領の対中強硬姿勢を踏まえ、「米中貿易交渉には依然変動リスクがあり、交渉が破談すれば世界の金融市場に大きな悪影響を与える」との認識を示した。香港は米中間の影響を避けられないとして、金融市場の調整リスクなどに警戒を呼び掛けた。香港経済日報などが伝えた。
立法会(議会)財経事務委員会の会議で発言した。トランプ大統領は5日(米東部時間)、中国からの輸入品2,000億米ドル(約22兆2,100億円)相当に課している追加関税の関税率を、10日に現在の10%から25%に引き上げると明らかにした。
陳総裁は、米中貿易交渉が失敗に終われば、香港の貿易パートナーであるアジアの貿易に悪影響を与えると指摘。向こう数四半期はHKMA傘下の外貨基金の投資にも影響が出るとみている。たとえ交渉がうまくいったとしても、米中間にはハイテク技術、第5世代(5G)移動通信システムを巡って大きな矛盾が存在するとの見方も示した。
資金流出に伴い香港の金利が米金利を上回るとの市場の懸念については、HKMA傘下の外貨基金が潤沢な資金を抱えていることを挙げ、「香港の金融システムは穏健で、市場の変動に耐えられる能力を持つ」と強調。金利上昇への懸念の払拭(ふっしょく)に動いた形だ。
■「輸出に強い打撃」
シンガポール系のDBS銀行(香港)の謝家曦エコノミストは、関税率が上がる10日まで数日あり、最終的に交渉がどう着地するかは見通せないものの、「双方が交渉を取りやめれば、関税率の上昇によって中国本土と香港の輸出は非常に強い打撃を受ける」と分析した。交渉の決裂は株安を生み、香港の小売市場にも下落圧力が強まるとみている。
中小企業で構成する業界団体の香港中小型企業聯合会(HKSMEA)の麦美儀会長によると、会員企業の間では貿易交渉に変動が出ることを織り込み済みで、現在までに大きな混乱は起きていない。貿易摩擦による影響を緩和しようと、会員の一部メーカーは新たな市場の開拓に動き出しているという。