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【日本】日本も「一帯一路」参画を[経済](2018/09/21)

中国の巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマに、日中をはじめとする各国企業代表らが一堂に会した講演会がこのほど、東京都内で開催された。中国の国営建設大手やシンガポールの海運大手代表は、日本の一帯一路への協力に期待を示す。10月下旬の安倍晋三首相の訪中では、日中連携による第三国市場開拓での協力が討議されることも追い風になりそうだ。

日本企業との連携を求める中国交通建設の孫副総裁=14日、東京・江東区(NNA撮影)

日本企業との連携を求める中国交通建設の孫副総裁=14日、東京・江東区(NNA撮影)

中国国営の建設大手、中国交通建設集団(CCCC、中国交建)の孫子宇・副総裁は、豊富な経験を持つ日本と協力したい姿勢を鮮明に示す。「10月の安倍晋三首相の訪中に期待する。日中両国企業が第三国(一帯一路の対象国など)で活躍し、第三国にも貢献したい」と述べた。中国交建には日本で学んだエンジニアもおり、技術面でまだまだ日本に学ぶべき点があるという。中国交建が世界各地で進める一帯一路の関連事業での、日本企業の建機やトラックの利用、水処理や建設技術の活用、資金協力を想定している。一帯一路が提唱されてからの5年間、中国交建は一帯一路関連で延べ630億米ドル(約7兆円)の工事を受注したほか、50億米ドル以上の対外投資をした。

■欧州勢とアフリカ開発、スリランカ港湾も

中国交建は既に、多くのグローバル企業との協業を進めている。アフリカだけでもケニアのモンバサ―ナイロビ間の鉄道建設では英国エンジニアリング大手のアトキンス、モザンビークのマプト大橋ではドイツのガウフ・エンジニアリング、カメルーンのクリビ港湾では仏物流大手ボロレと連携している。

中国交建が手掛けたスリランカのハンバントータ港開発では、スリランカ側が債務を払えないため99年間の権益を中国に引き渡した問題が起きた。これについて孫氏は、スリランカでは同社のコロンボ港湾開発をはじめとするインフラ整備によって8万人の雇用を生んでおり、(中国が軍事拠点化を進めるといった)米国が懸念するような事態にはなっていないと強調した。

中国交建は、工業団地開発でも日本と連携したい考えだ。同社は一帯一路事業として23の工業団地開発に携わっているが、日本の工業団地開発がアジア各国で成功事例が多いことに着目している。

同社はミャンマーのヤンゴン管区内で工業団地建設を含む新都市開発を計画している。同管区内には、日本・ミャンマーの官民が運営しているティラワ経済特区(SEZ)がある。これについて孫氏は、「中国交建が手掛ける工業団地は労働集約型であり、ティラワSEZとは入居企業のターゲットが異なる」と述べ、「日本の事業と対立するものではなく、むしろ団地間の相互補完が可能だ」と配慮を見せる。

■東南アと中国内陸結ぶ「南向通道」、広西に注目

「広西チワン族自治区とASEANの結びつきが強まる」と話すシンガポール海運大手PILのテオ社長=14日、東京・江東区(NNA撮影)

「広西チワン族自治区とASEANの結びつきが強まる」と話すシンガポール海運大手PILのテオ社長=14日、東京・江東区(NNA撮影)

シンガポールの海運大手パシフィック・インターナショナル・ラインズ(PIL)社長で同国最大の経済団体であるシンガポール事業連盟(SBF)会長のテオ・ションセン氏は、日本企業はシンガポールと連携しながら一帯一路への参加を検討すべきだと話す。同氏によると、一帯一路の事業の多くはシンガポールの企業や資本が参画しているという。

PILなどシンガポール官民が力を入れているのは、シンガポールを含む東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国内陸部の重慶を海上輸送と鉄道輸送で結ぶルート「南向通道」だ。ベトナムと国境を接する中国・広西チワン族自治区の欽州港で船から鉄道に積み替える。テオ氏は、南向通道と中国―欧州のコンテナ鉄道輸送「中欧班列」が重慶経由で結ばれることで、(東南アジアから中国を経て欧州へと)地域を越えた産業の物流網が構築できると強調した。

テオ氏はNNAに対し、南向通道によって、ASEANから中国内陸部へはベトナム産コーヒーをはじめ農水産品、中国内陸からASEANへは二輪車や太陽電池関連製品の輸送が加速すると話す。また、広西チワン族自治区は海・陸でASEANと結ばれており、同区とベトナムとの結びつきにも注目している。昨年の中国からベトナムへの輸出額は585億米ドル。このうち広西チワン族自治区からの輸出は約137億米ドルと全体の23%を占めている。

■日新、日本発「中欧班列」を実現

物流会社、日新(横浜市)の国際営業第一部の尾関誠次長は、日本発中国経由欧州行きの「中欧班列」に対する同社の取り組みを紹介した。日新は今年6月、中欧班列のコンテナを日本に初上陸させて、横浜港から独ハンブルクまで海上・鉄道で34日かけトライアル輸送した。中国・連雲港(江蘇省)で陸揚げし、国境の新疆ウイグル自治区霍爾果斯(コルガス)からカザフスタン、ロシア、ベラルーシ、ポーランドを経由しドイツまで鉄道で輸送した。一方、欧州発中国・日本行きの復路は、中欧班列の便数が少ないため、運行スケジュールが流動的で、利用しづらいという。

日新は昨年11月、中国・江西省南昌市からベトナム・ハノイ近郊のイエンビエンまでの中越間の鉄道貨物輸送のトライアルも実施している。

中欧班列は沿線の中央アジアにもメリットがあるようだ。日本ウズベキスタン・シルクロード財団(東京・港区)のバヒリディノフ・マンスール代表理事は、中欧班列の運行回数が増えることによって、(中欧班列が通過するカザフスタンの隣国である)ウズベキスタン発着の物流コストも下がり、投資や貿易が促進されることに期待を示す。

講演会は一帯一路経済フォーラムとして日本能率協会が主催したもので、このほか日本通運や中国海運大手の中国外運(シノトランス)日本法人の代表者らも講演した。(遠藤堂太)

<メモ>

■欽州港

シンガポール港湾管理大手のPSAインターナショナルとPIL、広西北部湾国際港務集団(BPG)が出資した港湾会社、北部湾・PSA国際コンテナターミナル(BPCT)が運営している。2015年開業。重慶と欽州港を結ぶ鉄道貨物の輸送ルートは昨年開通した。

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