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【台湾】新金宝、米中摩擦で東南アでの商機拡大[電機](2018/08/02)

プリンターなどコンシューマーエレクトロニクス製品を手掛ける新金宝集団(キンポ・グループ)が、米中貿易摩擦による関税引き上げ措置の影響が少ない東南アジアでの事業を商機とみて、フィリピンでの投資を加速している。台湾政府が推し進める「新南向」政策を追い風に、台湾企業が相次いで東南アジアでの投資を活発化させている。

経済日報が伝えた。新金宝傘下の電子製品大手、金宝電子工業(キンポエレクトロニクス)の沈軾栄総経理によると、タイ工場とフィリピン工場では受注好調が続いており、とりわけフィリピンでは向こう2年で3工場の拡張を計画しているという。

同社傘下でフィリピン工場の運営を手掛けるカルコンプ・テクノロジー・フィリピン(CCPH)は、今年下半期(7~12月)にもフィリピン証券取引所(PSE)で上場を計画している。1億2,600万米ドル(約140億円)を調達し、うち7割を工場拡張に充てる方針。

新金宝は中国から生産能力を移管し、フィリピンを東南アジアの主要な生産拠点にする方針。現在の従業員数はタイとフィリピンが2万8,000人になのに対し、中国は9,000人程度。中国を研究開発(R&D)拠点とするため、生産を徐々にフィリピンに移管する。

沈総経理は、「米中貿易戦争は、われわれにとっては新事業発展の好機。影響があるとすれば、工場建設の速度が鈍化する程度」とコメント。フィリピンのペソは12年ぶりの安値水準に下落しており、原材料価格がさらに安くなることもプラス要因とみて、向こう1年半以内にフィリピンで5,000人の就業機会を創出する見通しも明らかにした。

■ASEAN向け輸出は2年で13%増

台湾政府が推進する東南アジアやインドなどとの関係強化を図る「新南向(新南進)」政策の後押しもあり、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国やインドへの輸出額はプラス成長で推移している。

自由時報のまとめによると、2017年のインド向け輸出額は33億100万米ドルで、15年比で8.7%増加。ASEAN向けは585億7,300万米ドルで、13.4%増えた。18年上半期(1~6月)では、インド向けは前年同期比39.0%増の19億4,500万米ドルに達し、同期ベースの過去最高を更新。ASEAN向けも290億3,000万米ドルで、4.6%増とプラス成長を維持している。

台湾企業の東南アジアやインドでの投資案件も増えている。インドでは、不織布を手掛ける南六企業や、プラスチック用射出成形機大手の富強キン精密工業(キン=金3つ)、ゴム材大手の中国合成橡膠(CSRC、中橡)がそれぞれインド工場建設を計画。台湾政府系の貿易振興機関、中華民国対外貿易発展協会(TAITRA)は、インド国内に台湾の石化事業者の産業パークを設置する方針を固めており、実現すれば関連投資は東南アジアでは最大級の1,800億台湾元(約6,530億円)規模に上るとされる。

ベトナムでは製紙台湾大手の正隆がビンズオン省に建設していた新施設が5月から試験生産を始めたほか、台湾電機大手の東元電機(TECO)も同省で小型モーター工場を着工した。製造業だけでなく近年ではサービス業の進出も続き、タピオカミルクティー飲料チェーンの出店も増加している。

インドネシア向け投資も活発化している。TAITRAのデータによると、17年のインドネシアへの投資案件は585件で、投資額は約4億米ドル。中・小規模の投資案件が主要で、うちタイヤ製造台湾大手、建大工業(ケンダ・ラバー・インダストリアル)と正新橡膠工業(CST)が半数を占めたという。

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