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【日本】【外国企業の日本戦略】欧州・中国の両ハブと日本を直結[運輸](2018/07/27)

欧州最大の貨物専用航空会社、カーゴルックス航空(CLX)は今年3月、本社のあるルクセンブルクと成田を結ぶ直行便を週1便で開設した。現在は週3便への発着枠拡大に向けて関係当局などと協議中だ。同社は日本線の強化とともに、ルクセンブルクとスマートフォンの一大生産拠点である中国の鄭州(ジェンジョウ、河南省)両拠点のハブ機能強化を狙う。

カーゴルックス航空日本支社の神谷靖・総支配人=東京(NNA撮影)

カーゴルックス航空日本支社の神谷靖・総支配人=東京(NNA撮影)

欧州の中心に位置しドイツとフランス、ベルギーに囲まれた人口59万人のルクセンブルク。CLXのハブであるルクセンブルク・フィンデル空港は、旅客は域内運航の小型機が中心だが、貨物は大型の貨物専用機(フレーター)がメインで、CLXを含め数社が運航している。空港として世界で最も早く医療・医薬品の輸送品質基準である「GDP(医薬品の適正流通基準)」認証を取得。ルクセンブルク発着貨物は保税扱いで第三国に輸送できるほか、ドイツ・フランスにつながる高速道路が空港にほぼ直結し、空港待機時間を最大限短縮して輸送できるスピードが売りだ。

カーゴルックス航空日本支社の神谷靖・総支配人によると、例えばドイツ向けの場合、成田―フランクフルトのようにルフトハンザ航空の直行便が飛ぶところではスピード面でかなわないが、直行便が飛んでいない都市だと、CLXと同社のトラック定期便を組み合わせた方が早く着くケースが多いという。ドイツの空港が旅客も貨物も混雑していることや、フィンデル空港のトラックへの積み替え、高速道路へのアクセスがスムーズなためだ。

■成田線、週3便に増やしたい

今年3月、週1便の成田線の運航を開始した。飛行経路はルクセンブルク―成田―韓国・仁川―ルクセンブルクだ。復路が仁川経由なのは欧州発日本行きの貨物は多いが、逆は少ないため。仁川を経由して韓国発欧州への貨物を搭載する。

CLXの成田以外への日本乗り入れは石川県小松便が週3便あり、このうち1便はルクセンブルク―小松―仁川―ルクセンブルク、残り2便は以遠権を行使しルクセンブルク―鄭州―小松―米シカゴ―ルクセンブルクと北半球を一周する。このほか子会社のカーゴルックス・イタリアがミラノ―関西―香港―ミラノを週3便運航している。

成田―ルクセンブルクは週3便に増やしたいと話す神谷氏。両国の航空当局間の今後の交渉に期待している。成田空港、関西空港、小松空港、名古屋を結ぶトラック便も設けていることから、成田の週3便が実現すれば、日本発の貨物については、ルクセンブルク行きは成田に、北米行きは小松に集約したいという。

日本ではフォワーダー(貨物利用運送事業者)への営業活動が中心だが、自動車部品メーカーなど荷主への知名度向上や物流ニーズの把握も今後の課題だ。

日本航空が2010年にフレーター事業から撤退した。それだけにベリー(定期旅客便の下の貨物室)では運べない大型品を運べる日本発着のフレーターのメリットは大きくなっている。神谷氏は、緊急輸送品への迅速な対応、大量・大型品などフレーターの優位性を荷主に知ってもらいたい、と話す。

神谷氏によると、欧州からの貨物は日本向けが衣服・薬品・完成車、中国向けが粉ミルク、おむつ、半導体製造装置の取り扱いが多く、日本から欧州へは自動車部品、中国から欧州へはパソコンやスマホが多いという。

■スマホの鄭州から「空のシルクロード」

CLXはルクセンブルクとともに鄭州のハブ機能を強化する。CLXの出資比率は、ルクセンブルク政府出資の旅客航空会社であるルクスエアーが35.1%、中国・河南省政府系の投資会社である河南民航発展投資(河南省鄭州市、HNCA)が35.0%などとなっている。

CLXは来年、鄭州を拠点とする「河南貨物航空」をHNCAとの合弁で設立し、運航を開始する計画だ。バンコクなどCLXが就航している都市に、ボーイング747の3機を運航する。欧米など長距離線はCLX、東南アジアなどへは新会社が運航することで鄭州のハブ機能を強化する。

鄭州にはEMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手の台湾・鴻海精密工業グループが進出し、スマホの主力生産拠点となっている。

17年の年次報告でポール・ヘルミンガー会長は、「鄭州ハブの拡大は、(中国政府が推進する現代版シルクロード経済圏構想の)『一帯一路』を支援することになる。『空のシルクロード』と呼ばれる経済回廊の活用を促進し、多くの成果が実るだろう」とコメントしている。(遠藤堂太)

<メモ>

■カーゴルックス航空

1970年3月創業の貨物専用航空会社。従業員2,027人のうち1,436人はルクセンブルクで雇用。保有機材28機は全て、ボーイング747シリーズ(積載量120~135トン)。2017年の売上高は前年比28.9%増の22億6,355万米ドル(約2,508億円)。純利益は22.1倍の1億2,230万米ドル。

13年にカーゴルックス航空株のカタール航空持ち分(35%)を、河南民航発展投資が引き継いだ。昨年にはエミレーツ・グループとの戦略提携も発表済みだ。

アジアでは上海やシンガポール、ハノイなどの主要都市のほか、アフリカや南米大陸にも就航している。

日本では1985年に福岡便を就航。94年7月に小松に変更した。日本線の一部では、日本貨物航空とコードシェア提携している。

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