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最低雇用賃金について

政府が肝煎りの政策として進める「働き方改革」の下、本年度も最低賃金の引き上げが行われました。本年3月に策定された「働き方改革実行計画」では最低賃金について「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000円になることを目指す」とされましたが、本稿では本年の引き上げ額とともに最低賃金制度の内容を確認していきます。

最低賃金制度とは

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めた場合であっても、最低賃金法によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。したがって仮にこの様な場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはならないこととなります。
さらに、最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法により罰金を科されることとなります。

地域別最低賃金と特定最低賃金

最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。
地域別最低賃金とは、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められているものをいいます。
また、特定最低賃金は、特定の産業について設定されている最低賃金です。地域別最低賃金及び特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、高い方の最低賃金額を適用することとなります。

上記賃金のうち、地域別最低賃金が下表のとおり改定されました。
(特定最低賃金については都道府県労働局又は最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。)


表 平成29年度の最低賃金  ()は前年  単位:円

都道府県名 最低賃金時間額【円】 発効年月日
北海道 810 (786) 平成29年10月1日
青森 738 (716) 平成29年10月6日
岩手 738 (716) 平成29年10月1日
宮城 772 (748) 平成29年10月1日
秋田 738 (716) 平成29年10月1日
山形 739 (717) 平成29年10月6日
福島 748 (726) 平成29年10月1日
茨城 796 (771) 平成29年10月1日
栃木 800 (775) 平成29年10月1日
群馬 783 (759) 平成29年10月7日
埼玉 871 (845) 平成29年10月1日
千葉 868 (842) 平成29年10月1日
東京 958 (932) 平成29年10月1日
神奈川 956 (930) 平成29年10月1日
新潟 778 (753) 平成29年10月1日
富山 795 (770) 平成29年10月1日
石川 781 (757) 平成29年10月1日
福井 778 (754) 平成29年10月1日
山梨 784 (759) 平成29年10月14日
長野 795 (770) 平成29年10月1日
岐阜 800 (776) 平成29年10月1日
静岡 832 (807) 平成29年10月4日
愛知 871 (845) 平成29年10月1日
三重 820 (795) 平成29年10月1日
滋賀 813 (788) 平成29年10月5日
京都 856 (831) 平成29年10月1日
大阪 909 (883) 平成29年9月30日
兵庫 844 (819) 平成29年10月1日
奈良 786 (762) 平成29年10月1日
和歌山 777 (753) 平成29年10月1日
鳥取 738 (715) 平成29年10月6日
島根 740 (718) 平成29年10月1日
岡山 781 (757) 平成29年10月1日
広島 818 (793) 平成29年10月1日
山口 777 (753) 平成29年10月1日
徳島 740 (716) 平成29年10月5日
香川 766 (742) 平成29年10月1日
愛媛 739 (717) 平成29年10月1日
高知 737 (715) 平成29年10月13日
福岡 789 (765) 平成29年10月1日
佐賀 737 (715) 平成29年10月6日
長崎 737 (715) 平成29年10月6日
熊本 737 (715) 平成29年10月1日
大分 737 (715) 平成29年10月1日
宮崎 737 (714) 平成29年10月6日
鹿児島 737 (715) 平成29年10月1日
沖縄 737 (714) 平成29年10月1日
全国加重平均額 848 (823)

本年度は21円以上の引き上げがすべての都道府県で行われました。「働き方改革実行計画」では、全国加重平均が1000円になることを目指すとされていますので、次年度以降も引き上げが予想されます。

最低賃金額との比較

最低賃金は時間額で定められているため、時給以外の給与(日給、月給制など)の場合は、最低賃金額と比較すべき時間額に換算する必要があります。 支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。

(1) 時間給制の場合の比較方法
時間給≧最低賃金額(時間額)

(2) 日給制の場合の比較方法
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、以下の比較方法となります

日給≧最低賃金額(日額)

(3) 月給制の場合の比較方法
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

(4) 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合の比較方法
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

(5) 上記(1)、(2)、(3)、(4)の組み合わせの場合の比較方法
例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記(2)、(3)の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。

比較の結果から賃金を改定する必要がある場合であっても、最低賃金を下回る従業員のみの時給を引き上げることによって、引き上げが行われない従業員のモチベーションを低下させる恐れもありますので、同時に社内の賃金バランスを確認する必要もあります。

最低賃金制度は法律によって定められた制度であり、良好な労使関係は経営に好影響を及ぼすものです。最低賃金は毎年見直される可能性がありますので、経営者は上記比較により、毎年のチェックを心がけましょう。

南青山リーダーズ株式会社 編集部

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