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1年分の家賃を一括で損金にできるか

経営を行う上で必ず発生する経費ですが、毎期一年間に一年分の費用計上ができることはご存知のことと思います。また、当期に発生する費用は当期の費用であり、翌期に発生する費用が翌期の費用となることも同様にご存知のことと思います。しかし、一方で、短期前払費用という言葉がある通り、翌期以降に発生する費用を、当期に支払うこともあるでしょう。必ずしも、当期に発生する費用のみを、当期に支払っているわけではないと思います。

この翌期の費用となるべき費用を当期に一括して支払った場合は、必ず翌期の費用としなければならないのでしょうか? 例えば、3月決算の会社が3月末に一年間分の家賃を一括して支払う場合です。
もし、この一括して支払った翌期のための金額が、当期の費用となれば当期の節税が可能となります。今回は、この期末直前に一括して支払った家賃の税務上の取り扱いについて見ていきたいと思います。

期末直前に一括して支払った一年間分の家賃の取り扱い

まず答えですが、結論から言えば、当期の費用として処理することが可能となるケースがあります。やり方によっては節税が可能となるのです。具体的な事例はあとで見ていくことにして、まずはその適用条件を見ていきたいと思います。

重要性の原則

金額が大きすぎるものは認められませんが、そうでなければ認められるということです。ここについて明確な基準はありません。あくまで相対的な判断となります。イメージをもって頂くため例えばとしての判断基準となりますが、販管費に占める割合や、利益金額に対する割合、利益金額と比較して大きすぎないか、などが考えられます。

等質・等量のサービス

土地、建物の賃借料や生命保険、損害保険など、一定の不変のサービスに対する支払です。経営上の固定費をイメージして頂ければよいと思います。したがって、税理士への顧問料のような等質等量とはいえない経費に該当する場合は、翌期分を一括して当期に支払っても当期の費用としては認められません。
また、等質等量であっても、売上・収益と対応する原価については、認められていません。
例えば、固定費の事務所の家賃は適用できますが、家賃収入と対応するような原価性のある支払家賃には適用できません。

契約内容

そもそも契約内容が一年間分の支払いを認めたものでなければなりません。こちらが勝手に一方的に支払いを行った場合や、口約束だけでは認められません。必ず書面で確認できることが必要です。

毎期継続すること

当期は黒字だから一年間分を一括して支払、翌期は赤字だから支払わないなど毎期支払方法を変更することは認められません。よって、継続して同様の支払方法を行わなければなりません。

支払時期

翌期1年間を対象とした支払いを当期の費用としたいなら、支払時期は決算月でなければなりません。たとえば、3月決算の場合、次月の4月から翌年3月までの家賃を3月に支払えば当期の費用として認められます。しかし、4月から翌年3月までの家賃を“2月”に支払った場合は認められません。あくまで、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係る費用が対象となります。「役務提供の開始」が「支払から1年以内」ではなく、「役務提供の終了」が「支払から1年以内」であることに留意が必要です。

具体例

それでは、具体例を見ていきたいと思います。ここでは、税務署のホームページで掲載されている内容をもとに確認していきます。
なお、毎期の継続性、重要性の原則、契約内容の要件は満たしているとします。

具体例1:期間40年の土地賃借に係る賃料について、毎月月末に翌月分の地代月額100万円を支払う。

具体例2:期間20年の土地賃借に係る賃料について、毎年、地代年額(4月から翌年3月)241,620円を3月末に前払により支払う。

具体例3:期間10年の建物賃借に係る賃料について、毎年年額(4月から翌年3月)100万円を2月に前払により支払う。

具体例1及び2は一括した支払が当期の費用として認められます。一方、具体例3は認められません。
具体例3が認められない理由は、上述の支払時期に記載したとおり、役務提供を受ける終期が3月であり、支払月の2月から1年を超えているためです。
仮に、3月決算の会社が2月の支払を行ったとしても、その支払いの対象期間が当期3月から翌期2月であれば、翌期4月から2月分は費用計上可能となります。

消費税の取り扱い

一定の要件を満たせば法人税法上は損金処理されることが分かったところで、消費税の取り扱いについてもみていきます。
消費税は、法人税法上で一括費用処理される場合、その処理に合わせます。したがって、費用処理額全額に対応する消費税を計上します。すなわち、翌期の役務の提供に紐づく消費税であっても、当期に発生した消費税として認識されます(当期に受け取った消費税から控除ができる)。


最後に

今回見てきた方法は節税対策が十分に行える方法ではあり、決算月に保険料の年額払いを行う会社も多いようです。ただし、重要性の原則の判断や等質等量のサービスである必要があることなど、判断基準が明確でなく、後々の税務調査で否認されるリスクも十分にありえます。
この辺のリスクを考えたうえで、皆様の会社の節税対策に活用して頂きたいと思います。

南青山リーダーズ株式会社 編集部

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