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国税庁OBが語る~税務調査の有効な対策~④

camera_alt (写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

税務調査の対応に苦慮される経営者の方はとても多いように思われます。過度な心配やあまり意味のない対策により業務に支障が出ないよう、数回にわたり国税OBにお話を伺った。

今回は、無通知調査と税務調査において重要なことです。

1 無通知調査

無通知調査は少ない傾向にあると考えます。公表されてはいませんが、無通知調査の実行には署長の決済が必要であり統括官の判断のみでは行えません。現金取引法人で外観調査から好況かつ現金管理に疑問がもたれる、信憑性のある通報があるなど、集まった情報を検討した後、決定されます。
では、納税者側では無通知調査の対応はどのようにすべきでしょうか。一般的に税理士と顧問契約のある法人では税理士の同席を得るまで調査の承諾はしないことが望ましいでしょう。税理士の日程がつかない場合、社長はこれから得意先の商談に出向く予定があるなど営業を優先すべき場合は日程の変更を強く求めるべきです。単なる調査拒否では無く説明をすれば調査官は理解をしてくれます。承諾なく現況調査をした場合、たとえ脱税が立証されたとしても違法調査であるとして無効になることを調査官は理解しています。

2 任意調査中の現況調査

任意調査の只中において、現況調査を行うこともあります。社長の机やロッカー、車の中などを了解を得て確認し、申告漏れとなっている客観的な証拠を収集します。いきなり現況調査は行いません。任意調査である以上会社側からの了解が必要です。
優れた調査官は矛盾点を突くことで、目的の書類が存在すると断言できる状況に追い込み、「会社の書類が保管されている個所を確認します」として納税者側が了承せざるを得ない状況を作り出します。
また、調査の過程において社長の嘘を追及します。社長が苦し紛れに答えた事柄が一度でも嘘とわかった場合、今までの回答が全て信頼を失います。そのため、裏付けとなる書類を全て確認させてもらうことになるとして、社長のパソコン、机、書棚、車、貸金庫の確認へと現況調査が広がっていくことになります。中でもパソコンは調査官が最も関心を持つものとなります。全ての事務がパソコン処理される現在、過去を記録するものとして証拠の宝庫と考えられるからです。
任意調査中に現況調査がされることは避けたいものです。
① 社長の説明は資料との比較において矛盾がない。
② 社長の対応は好感がもてる。
③ 社長の話に積極性が感じられる。
と調査官が感じれば、印象は良好で調査の終了も近いと考えられます。

3 現金調査

製造業や建築業、卸売業、商社など決済が銀行間でされる業種ではほとんど調査官は関心を持ちませんが、小売業・ホテル業などの業種では現金調査は重点項目となります。現金の流れを聴取し預金経路に問題はないか、顧客伝票とレジの記録や元帳計上額に差はないか、売上の多い金曜日などを含めた約1週間の売上が適正に計上されているかなど、あらゆる角度から検討します。
調べるうちに除外ではなく従業員の使い込みが明確になることがあります。納税者側は被害者で被害額は損金になり、従業員に対する債権が発生します。しかし社長や関与税理士にとっては驚くべきことであり、信頼していた事務員に任せきりにしていたのを悔やむことになります。
税務調査で従業員ではなく役員の不正が発覚することもあります。役員不正は現金ではなく外注先を利用した形態となり、発覚するまでに年数が経過し多額の不正になることが多いようです。役員の不正は内部調査からの発見は困難であり、税務調査による指摘から発覚するケースが時折あります。上場会社の課長が定期預金を解約し流用していたが、金融機関の残高証明書と証書の比較をするなどのチェック機能がなく、長年発覚しなかった事例もあります。

4 納得できない税務調査

無通知調査において、日時の都合が悪いと申し出たにも関わらず調査を実行し始めた。資料・帳簿は後日の調査で提示すると説明しているにも関わらず現況調査を強行しようとした。このように納得できない調査を受けた場合には、取るべき方法があります。
① 調査官の身分証明書・質問検査証を再確認し名前、番号を記録します。
② 税務調査を時系列に記録しておきます。
③ 承諾していないにも関わらず勝手に現況調査行為に出たときなど、強く中止を要求し応じないときは記録する旨を告げ、書いた事項を読み上げます。場合によっては録音しておくことも後日効果を発揮することがあります。
一般的に承諾を得ないで現況調査を実行する調査官はほとんど皆無になったと思います。調査手順が明確になり手続法が整備されたためです。適正申告にも関わらず違法調査に従う理由はないので、常識に反する調査に対しては毅然とした態度を取るべきと認識してください。

5 税務調査の終結に向けて

調査も日数が重なるにつれ相手の心情に通うものが得られるかもしれません。適正申告を心がけていても、組織拡大で管理が不十分となったことによる予想外の誤りや勘違いによる指摘も予想されます。税は法律に細部まで規定され、数字が自動的に算定、結果は有無をいわず確定すると考える経営者も多いと思います。
しかし話を聞いてくれる調査官は多いものです。税務調査においてもコミュニケーションが重要であり、それは一般社会と変わりありません。

南青山リーダーズ株式会社 編集部

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