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国税庁OBが語る~税務調査の有効な対策~②

camera_alt (写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

税務調査の対応に苦慮される経営者の方はとても多いように思われます。過度な心配やあまり意味のない対策により業務に支障が出ないよう、数回にわたり国税OBにお話を伺った。

今回は、調査体制と業種です。

当局の組織体制

今回は国税局、税務署の組織を説明し、国税側からの視点で税務調査を紹介したいと思います。
財務省全体で71,000人が国税庁、国税局、税務署に組織されており、国税局は全国11局、その下部組織440の税務署へ事務運営など指示命令をしています。局においても調査機能を有しており、課税第一部は個人調査を、課税第二部は法人調査を対象としています。
課税第二部の組織は以下の通りとなっています。

人事異動は7月10日となっていますが、当局ではこの時期を境に年間計画を立て、課、部門における発議担当者は準備に時間をかけます。そして先輩のアドバイス、上司からの指示を受け調査着手日を迎えます。

代表者への聞き取り、課税に必要な証拠収集、反面調査、金融機関調査、外国税務当局への照会など経て、参加調査官から課税処理の書類を収受し、整理、更正文書の作成を行い、そして最終的な決議書を作成します。その事務作業は税法に適合した課税処理が必要であり、審理部門の審査、検討を経て決済へと決議書が運ばれて行きます。

発議担当者はその事案の決済において全責任を負うことになります。先輩が担当した調査項目も全て咀嚼しておく必要があり、不備がある場合は遠慮なく尋ね、納税者が納得していない事案の場合は特にその後の反論に十分耐える証拠を収集し、課長、部長からの決裁時の質問に明瞭に答えることが不可欠です。初めて局に異動となった調査官は先輩からの厳しい洗礼を受け、大きく成長する調査官もいれば自信を無くし1年で去るものも珍しくありません。時に精神的な病に陥ることもあるようです。
なお、署の組織は大まかに次のように編成されています。(大きな署を例として)

業種区分による調査選定

年度初めの人事異動でメンバーが入替わり、調査選定作業に入ります。局からは「事務運営にあたり特に留意すべき事項」の文書が示され、「大口悪質重点。売上階級・業種・業態に応じた管理をすること。一般調査と調査項目を限定した重点調査を行うこと。電話・書面など効率的な接触を図ること。必要あれば事案に応じ複数部門と協力し調査を実施すること。不正還付など消費税固有の非違の把握に努めること。署長、副署長、特官、統括官は豊富な知識経験を発揮し事案選定、進行管理に的確なマネージメントを実施すること」などと通知されます。

また、「社会的関心が高く好況業種や不正の潜在化が見込まれる調査困難事案業種を的確に指定し業種、地域、など波及効果のある調査に取り組むこと」としています。

例えばこのようなことがありました。ある署で養豚業の不正が報告され業種の洗い出しを実施。波及的に不正所得が把握されました。局へ「不正発見連絡表」を提出。その後指示を受け臨機応変に業種、地域を検討。結果、国税庁からお褒めの言葉をもらったとのことです。
 ① 従前全く注目されてこなかった業種
 ② 経済の変化、急激な取引の増大による業種
 ③ 従前からの注目業種であるが連年不正所得が把握されている業種
署では業種管理という言葉を用い業種区分による調査選定に重きを置いています。

調査についての実態

署の特殊な部門として繁華街部門があり全て無予告調査となります。ラブホテル、エステ、ホストクラブ、料理店などを対象とし着手日までに内定調査を実施します。ホストクラブでは一般部門から女性調査官に協力を求めることがあります。一般部門の統括官に了解を得なければならず、何かあれば統括官の責任になることから同意してもらうのに苦労する場合があるようです。

内偵調査はスマホのおかげで便利になりました。誰でもどこでもスマホをいじっていても何の違和感もありません。レジの近くにあえて座り、現金支払いの状況、時間、人数など記憶しトイレでメモしていた時代から格段に内偵が容易になりました。
税務調査において調査官にはノルマがあるか否かの質問を受けることが多いですが、上司から調査結果の数字を提示されることはありません。あなたのノルマの金額は○○○との指示はありません。調査官は調査結果の復命を統括官にする必要はあり、どのような観点から調査し実態はどうであるか。統括は指示を与え調査継続か終了かの判断を決定します。調査が不得手な調査官も多く、一方で調査のたびに不正所得を把握してくる調査官もいます。

年度末で局は署からの報告を基に事績を連絡します。署は他署との比較で事績がどうであったかなど話題になります。成績は良いに越したことはありません。調査官は毎年4月に提出する「身上申告書」に私的な事情、「母の介護で遠方への転勤はできない」「局の調査部で上場企業の調査に携わりたい」などの希望を記載します。その調査官の進路は必然的に決まっていきます。

南青山リーダーズ株式会社 編集部

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