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慎重に検討したい 医療法人設立のメリット・デメリット

個人で開業した場合と医療法人を設立して開業した場合、どちらのメリットが大きいのだろうか。これは開業検討時や、その後の事業承継等を考慮した際に必ず考える事項だろう。

医療法人設立のメリットはどのようなもので、また注意点はないのだろうか。今回は、医療法人設立のメリットとデメリットについて解説していこう。

医療法人のメリットとは?

医療法人のメリットには、大きく分けると事業展開の側面と税制面にある。まずは、事業展開の側面から解説していこう。

複数の地域に診療所等を出したいという希望がある場合には、医療法人化する必要がある。なぜなら、個人では分院開設(複数の診療所等を開設すること)が認められていないためだ。将来的に各都市で開設したい場合や、親族で経営展開を図りたい場合などには、医療法人設立を検討したほうがいいだろう。

さらに、個人の場合は事業用と個人の収入・支出や資産・負債が混在してしまうことが多いが、法人は事業用のみの計算となるため、経営管理が行いやすいと言える。

また、相続事業承継対策にも医療法人は適している。個人の場合は、手続き上、一度、診療所を廃止し、新たに開設しないといけない。法人の場合には、出資持ち分を計画的に譲渡や贈与していくことで次世代への経営にバトンタッチがしやすくなる。特に、設備投資に多額の資金がかかる場合や退職金支給に多く支払った年においては、純資産を減らすことが可能となるため、譲渡や贈与における評価額を減らして次世代につなげることが可能だ(ただし医療法第54条によって持分評価が高くなる可能性もある。詳細は後述)。

次に、税制面についてみていこう。個人で開業した場合、所得には所得税がかかる。所得税では最大45%の課税となるが、法人税は中小法人では課税所得が800万円超の部分で一律23.4%、普通法人では課税所得に対し一律23.4%となっている(特定医療法人除く)。そのため、高額所得者になればなるほど、医療法人を設立したほうが税制面ではメリットがあるといえる。

また、個人の場合は事業主(院長)に対する給与の概念がなく、所得(収入"経費)に対して税額が計算されるが、医療法人化することにより、院長にも給与(役員報酬)を支払うことができ、給与所得控除を活用できる。さらに、親族を役員に据えて、給与の支払いを行えば、所得の分散が可能となり、トータルで見た税率の引き下げの効果をもたらすことができる。

医療法人のデメリットとは?

一方で、医療法人設立にはデメリットも存在する。個人の場合、従業員が5名以下であれば社会保険への加入は任意であるが、法人の場合は、従業員の数に関わらず加入が必須だ。従って、保険料負担がのしかかることになる。

都道府県による検査や指導監督権限が強化されているのもデメリットだろう。個人の場合は、管轄税務署以外に決算情報を提出する必要性はないが、法人の場合は、決算後3ヶ月以内に、都道府県知事へ所定の情報を報告しないといけない。さらに、資産総額や理事長の変更などを一定のサイクルで法務局に登記し、その後、都道府県知事に届け出ないといけない。

交際費の損金算入が制限される点も忘れてはならない。個人開業の場合には、必要経費と認められれば交際費は全額経費計上できるが、医療法人では交際費に上限がある他、すべてを費用計上できるわけではなくなる。

医療法人は、医療法第54条により余剰金の配当を行うこともできない。従って、毎年の利益は内部留保されるため、出資持分の評価は思いのほか高額になる可能性がある。出資持分の評価が高額になることで、出資持分の移転が難しくなったり、相続時の税負担が大きくなったりする場合もある。

メリット、デメリットのどちらに軍配があがるかを見定める

医療法人は、基本的に事業展開、税制面でのメリットが大きいと感じられれば設立をすべきといえる。デメリットのほうが上回る場合には、展開計画を検討しなおす必要もある。将来的にどのようにしたいかをハッキリさせることで、メリット、デメリットのどちらに軍配があがるかを見定めていくことが重要といえる。

南青山リーダーズ株式会社 編集部

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