知らなきゃ損!消費税の本則課税制度と簡易課税制度
消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供によって課税される税です。消費者は支払う義務があり、一定の事業者に納付の義務があります。
消費者は、消費税の6.3%、地方消費税の1.7%の合計8%を商品購入時に支払っていますが、納税者である事業者が支払う税金はどのように計算されているかご存知でしょうか。実は計算方法には『本則課税計算』と『簡易課税計算』の2種類が存在します。どちらの計算方法も選択できる場合は、計算方法によって納税額が大きく変わることもあるので、ぜひ知っておきましょう!
本則課税と簡易課税って?
本則課税とは、消費税の原則的な計算方法で【実際に預かった消費税 実際に払った消費税=納める消費税】となります。基準期間(※1)の課税売上高(※2)が5,000万円超の事業者は、この方法で計算しなければなりません。
一方の簡易課税とは、消費税納税義務のある事業者のうち、5,000万円以下の事業者が選択できる計算方法です。大まかな計算方法は本則課税と同じですが、【実際に支払った消費税】を【実際に預かった消費税×みなし仕入率(※3)】として算出します。
選択できる事業者は次の通りです
(※3)みなし仕入率とは
簡易課税では仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするものですが、この一定割合をみなし仕入率といい、売上げを卸売業、小売業、製造業等、サービス業等、不動産業及びその他の事業の6つに区分し、それぞれの区分ごとにみなし仕入率が定められています。
それぞれのメリット
本則課税で計算すると【預かった消費税】より【支払った消費税】が多くなることがあります。例えば、高額な設備投資を行った年度は支払った消費税額が増えるので、還付を受けられ有利になることがあります。また、適用期間の強制がないため、簡易課税の対象事業者であれば、今年度は本則課税で申告し、翌年度は簡易課税で申告することも可能です(期限内に届出書の提出が必要です)。
簡易課税の方が節税になるのは、【実際に支払った消費税】より【みなし仕入率で計算された消費税】が多くなるケースです。
上記のみなし仕入率が80%以上となる卸売業や小売業に該当する事業者は、簡易課税を検討してみてはいかがでしょうか。
また、みなし仕入率が低くても、人件費が経費の大部分を占める様な、弁護士や税理士などの士業、医療・介護・不動産賃貸業などの事業者も検討してみるといいでしょう。
具体的なケースで比較してみよう!
① 簡易課税が有利のケース
小売業で課税対象となる仕入額が600万円、売上が1,000万円(いずれも税抜金額)
簡易課税の場合
現在の消費税率は8%、小売業のみなし仕入率は80%のため、計算式とその結果は以下の
通りです。
(1,000万円×8%)-(1,000万円×8%×80%)=16万円
本則課税の場合
(1,000万円×8%)-(600万円×8%)=32万円
この場合、簡易課税16万円<本則課税32万円となり、本則課税の計算の場合と比較して16
万円の税額がお得となります。
② 本則課税が有利のケース
飲食業で課税対象となる仕入額が2,500万円、売上が4,000万円(いずれも税抜金額)
簡易課税の場合
飲食業のみなし仕入率は60%なので、
(4,000万円×8%)-(4,000万円×8%×60%)=128万円
本則課税の場合
(4,000万円×8%)-(2,500万円×8%)=120万円
この場合、簡易課税128万円>本則課税120万円となり、簡易課税の計算の場合と比較して
8万円の税額がお得となります。
上記のように、簡易課税によるか本則課税によるかによって算定される消費税額は異なります。ただし、簡易課税制度の適用は税務署への事前の届出が必要であり、単純に期末に計算した有利不利の結果のみで適用することはできません。
簡易課税のここに注意!
簡易課税を選択すると、仕入に係る消費税区分をする必要がないので手間が省けるというメリットがあります。ただし、簡易課税で計算をするためには、適用課税期間の開始の日の前日までに税務署へ「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。また、いったん簡易課税制度を選択すると、選択した課税期間と翌課税期間は変更ができません。
まとめ
本則課税も簡易課税も、事業内容や取引内容で違ってきますので、少しでも有利になるよう、シミュレーションしてみるといいと思います。判断に困ったときは、専門家である税理士に相談してみましょう。
南青山リーダーズ株式会社 編集部