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国税庁OBが語る~税務調査の有効な対策~①

税務調査の対応に苦慮される経営者の方はとても多いように思われます。過度な心配やあまり意味のない対策により業務に支障が出ないよう、数回にわたり国税OBにお話を伺った。

調査法人の選定基準

まず、税務調査の対象法人はどのように選ばれていくのでしょうか。

「税務調査に選定されない方法を知りたい」と思われるかもしれません。しかし、規模拡大・利益追求を目的としている以上、税務調査を受け入れる必然性は生じることになります。

税務調査は「課税の公平」を目的にしています。税務調査の指針では「大口・悪質重点の調査を基本とし、調査体制を編成し的確な進行管理により、効果的・効率的な調査を実施する」とも示されています。

具体的には、管轄する法人を売上階級区分・業種・業態・過去の調査結果などにより総合的に管理し、調査の優先度を考慮して調査対象法人を選定します。

1. 大口・悪質な不正計算が想定される法人
2. 特定の項目に誤りがある法人
3. 事業規模が拡大している法人
4. 複数法人を有している法人
5. 海外取引法人
6. 長期未接触法人
7. 設立後未接触法人
8. 稼働無申告法人
9. 消費税の大口還付法人
10. 経済の変化による景況を反映した法人
11. KSK(国税の管理システム)からの調査項目指摘法人
12. 外部情報のある法人

○9番の消費税の大口還付法人は特に注目項目となり必ず調査対象として選定されます。昨今、法人税調査から消費税に重きを置く調査の傾向があります。

○10番の景況を反映した法人として、昨今活発な地金取引があります。急激な価格高騰と活発な取引は先物市場でも魅力的な相場となっており、現金取引が主流であることから調査は困難な条件となっていますが注目されている業種となっています。

○11番のKSKからの調査選定としまして、現在・過去の申告状況、調査結果、関与先税理士などあらゆる情報を集積し棚卸回転率などの数値分析をしています。例えば代表者からの借入金増加は、脱税資金を法人に取り込む場合が多いことから調査項目として指摘します。

当局側でも調査法人の選定を重視

調査の主眼が課税の公平である以上、対象の選定を重要視しています。的確な選定こそが結果に結びつくとして、事務年度開始の指針に「選定の重視」が常に盛り込まれます。

調査結果がその答えとなりますが、全国法人数が約30数万社、調査件数は1万数千社で、その割合は約4%。そして平成27事務年度の法人調査結果による不正所得件数割合は約20%、申告誤りのあった割合は約70%と公表されています。不正件数割合は国税局間で多少差があり、東京国税局(東京・千葉・神奈川・山梨を管轄)と関東信越国税局(埼玉・群馬・栃木・茨城・長野・新潟を管轄)の比較では毎年東京局の割合が2%ほど低い結果となっています。また、毎年これらの数字はほぼ同じである点も興味深いところです。

ここまで読まれ、「多少の税務上の誤りはあるかもしれないが大口の不正所得などは全く無縁、強いて言えば長期未接触で選定されるかもしれない」と思われた経営者の方も多いと思います。適正経理を目指し事実をそのまま数字処理し所得を計算している限り、調査に際し苦慮することは少ないと思います。

調査対象の選定は国税局の選定が優先され、税務署における選定においても、「①総合特別調査官部門(法人税・相続税など複数税目やグループ法人を総合的に調査)」、「②特別調査部門(無通知調査を主体として悪質大口と見込まれる法人を調査)」、「③特別調査官部門(売上階級が高く海外取引や関連法人も含め同時調査)」、「④一般調査部門(調査官1人にて消費税も含め調査)」と部門に分かれています。

東京・大阪圏のように経済の規模、多様性のある地域には当てはまりませんが、このように精緻に選定されていくことから、地方経済圏では真に調査の必要度が高い法人の件数が少なくなります。調査対象の枯渇という現象も、税務署において発生する問題と思われます。


南青山リーダーズ株式会社 編集部

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