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歴史に学ぶ!会計不祥事の変遷

camera_alt (写真=Billion Photos/Shutterstock.com)

戦後の会計不祥事

現在東芝の決算を巡る諸問題が世間を賑わせていますが、最終的に会計処理の適正性がどこまで問われるかは不透明です。しかし過去には企業の会計不祥事が大きな社会問題となった事例がいくつか見受けられます。

戦後最初の大きな会計不祥事といえばやはり山陽特殊精工の事件が挙げられるでしょう。山崎豊子の小説「華麗なる一族」のモデルとなったことでも知られるこの企業で行われていたのは、架空売上や費用の過少計上という単純なものでした。しかしこういったことを1958年から64年までの7年間繰り返し、その間に計上された架空利益は判明しているだけでも28億円。それでも最終的には累積赤字が72億円以上になって倒産しました。

この頃はまだ監査法人が存在せず、監査は個人の会計士が担当していましたが、当初から粉飾の事実を把握していながら社長からの懇願を受け入れて見逃したものとされています。典型的な馴れ合い監査ですね。この事件をきっかけに監査法人制度の導入が加速され、また様々な監査手続も必須のものとなりました。

その後平成に入り不動産バブルが弾けるまで、それほど大きな会計不祥事というものは見当たりません。短期間の景気後退はあったものの全体的に経済はまだ右肩上がりで、企業も会計的な不正を行う必要がなかったか、行っても業績回復時に修正できたか、といったところでしょう。

監査に対する「期待ギャップ」

次に歴史に残るほどの大きな企業の不正は1997年に山一證券において発覚しました。山一證券の破綻自体があまりにも大きな事件で、また同時期にわが国全体が金融危機に陥るかといった状況であったため、これを会計不祥事とし記憶している人は少ないかも知れません。しかし破綻に至るまでの数年間、やはりここでも粉飾としかいえない会計上の操作が行われていました。

この際の手口は資産価値が下がった金融商品を連結決算の対象となっていない子会社などに時価以上で売りつけることにより利益を計上する、「飛ばし」と言われるものでした。このやり方は他の証券会社や信託銀行などでも広く行われていたようですが、山一證券は経営が破綻したばかりに表面化したのですね。

ただ、この事件では監査を担当していた会計士が責任を問われて起訴されたものの、その後監査手続に遺漏はなかったとして勝訴しました。社会が監査に対して抱く機能や責任と、実際に監査が果たしている機能や嫁されている責任の差異、いわゆる「期待ギャップ」が議論される発端となったように思います。

巧妙さを増す不正手法

2005年に発覚したカネボウの粉飾決算は、会社が100年以上続く名門企業であったことは話題になっても、その粉飾の方法などはあまり記憶に残っていないかもしれません。

カネボウは様々な手法で利益の水増しを行いましたが、中でも特徴的であったのは「連結はずし」という手口でした。山一證券のところでも触れたように損失を連結対象でない子会社に付け替える手法はそれまでにも多く行われてきました。しかし会計制度の変更により、持株比率は低くても実質的に支配力を持つ会社は連結決算の対象とされるようになったにも関わらず、カネボウは相変わらず業績の悪い子会社を連結の対象に含めないことで利益を過大に見せかけていたのです。

この時監査を担当していた会計士は逮捕され、最終的にも有罪判決を受けました。判決では会計士も「不正経理に加担」していたとされましたが、当人たちにその自覚があったのかどうかは不明です。

2011年に元社長の内部告発という異例の事態から粉飾が明らかになったオリンパスの事件も歴史に残るものの一つでしょう。

この場合も投資の失敗による損失をなかったことにするために表面上はオリンパスと無関係なファンドに海外子会社を通じて資金を流し、価値の下がった金融商品を元の価格で購入させるという仕組みを作りました。さらにそのファンドに生じた損失を補填するために見せかけの巨額企業買収を行い、買収資金の一部をファンドに還流させるという手の込んだことも行っています。

しかしこの時の監査法人は金融庁から業務改善命令を受けただけで、刑事責任を問われることはありませんでした。会社の手法が通常の監査では見抜けないほど巧妙だった、ということでしょうか。

不正会計の代償

いくつかの事例を見てきましたが、いずれの場合も不正を始めた当初は経営者は短期で業績は回復し、損失はその際に穴埋めすればいい、という考えだったのでしょう。しかし不動産バブル崩壊後の日本は5年、10年といった業績不振が続くことがもう当たり前になりました。そうなると粉飾に要する費用や粉飾によって生じる本来なら納めなくて良い税金費用などがさらに会社の業績を悪化させることになります。

粉飾することも、それを見逃すことも、たとえ短期でも決して割に合うものではないということを、関係者たちは肝に銘じるべきでしょう。

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