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税金対策として「資産管理会社」を持つ意義とは

camera_alt (写真=PIXTA)

「資産課税」という考え方が、日本の税体系に本格的に導入され始めようとしている。以前から、企業の内部留保への課税が議論されることはあったが、個人資産にも適用され始めてきた。2015年1月から適用が開始された相続税の改正が、その第一の矢と言えるかもしれない。

相続税の実質増税が進む

相続税は、課税される相続財産の額が相続税の基礎控除を超える場合にかかる。平成29年1月時点で相続税の基礎控除は3,000万円と法定相続人あたり600万円の合計額となっている。平成27年1月の相続税の改正以前は、5,000万円と法定相続人あたり1,000万円の合計額だったことから、相続税納税の対象となる課税割合は上昇した。これまで資産家が主な対象だったところから、一般的なサラリーマン世帯までが対象になりえる範囲に拡充された。今般の税制改正が大きな転換点であるといえよう。

今まで余り馴染みのない資産管理会社という存在も、資産課税という考え方が更に強化されるならば、より身近な存在になっていくだろう。場合よっては、親から受け継いだ土地を所有しているだけであっても、年間の手取り・納税額に大きな開きが出てくる可能性があるのだ。

資産管理会社とは何か

資産管理会社とは個人の資産を管理することを目的にした会社で、現行の会社法の下では、株式会社で設置されることが多く、2つの形態に分けられる。個人で保有する現預金や有価証券、不動産といった資産を資産管理会社の所有にして運用をする方法と、資産を個人所有にしたままで資産管理会社が預かり、個人に代わって運用する方法だ。どちらも、資産を管理する上での必要経費が全て経費と認められるという意味では、大きな差は無いといえる。必要経費の例を挙げるなら、保有している不動産の保守管理にかかる交通費などである。

資産管理会社を設置していれば、資産を管理・運用する目的にかなうものであれば、その全てを会社の必要経費として処理することが出来る。これによって、税金の計算の際に益金から控除する損金処理をすることが出来るのだ。

もちろん会社を登記する以上、登記に必要な費用、毎年必要になる法人住民税や税理士報酬などがかかる。そのため、保有している資産はどの程度あって、損金処理できる可能性がある費用はどの程度あるのかといった費用対効果の兼ね合いが重要だ。

資産管理会社での税金対策はどれくらい効果的か

個人で所有する有価証券や不動産、預貯金は配当や家賃収入、利息などの収益を生み出し、その所得は課税対象となる。個人の場合、必要経費として認められるものは非常に限られる。一方、資産管理会社を設置して、これらの資産を全て資産管理会社の所有とした場合、そこから発生する収益は法人の所得となり課税されることになる。法人の収益は法人所得税で計算されるため、もし所得を生み出す為に使用した経費が所得を上回れば、一部を除き税金が掛かることはない。

仮に上場株式1億円を所有しており、その株式の配当利回りが2%だとしよう。
1億円(時価)×2%(配当利回り)=200万円(配当益)
ここから配当課税分(復興税は考慮せず)を差し引くと、
200万円(配当総額)−200万円(配当総額)×20%(配当課税率)=160万円(手取り額)

単純計算で手元に残るのは160万円だ。一方、資産管理会社でこの株式を所有した場合でも配当益200万円は変わらない。ここでポイントになるのが、資産管理会社の経費である。仮に専業主婦の妻が資産管理会社の役員として月額8万円の役員報酬で管理にあたり、年間15万円程度で顧問税理士を置いていたとしよう。これ以外に、飲食店での会議費、文書通信費、交際費などで100万円の経費が掛かれたとする。

8万円(妻の役員報酬)×12ヵ月+15万円(顧問税理士報酬)+100万円(諸経費)=211万円

この211万円が200万円の配当益を得るためにかかった必要経費である。この場合、200万円の配当収入はその全てが課税対象とならないのだ。加えて、妻に支払った役員報酬は給与所得控除の範囲内であれば、課税対象とならない。

より節税効果が高いのは収益性の高い資産がある場合

収益性の高い資産の場合、たとえば給与所得者である夫が、父母が住んでいた家の土地や建物で家賃収入を得ている場合を考えよう。所得税は家賃収入と給与所得の合算で計算されるため、給与所得だけの場合に比べて高額になる可能性が高い。

もし、この土地建物を資産管理会社の所有とし、資産管理会社の経営と実際の管理を専業主婦の妻に任せ役員報酬を支払った場合、夫の所得に対する課税は給与所得のみになり、所得税が上がることはない。妻の役員報酬などの諸経費は、家賃収入をあげるための必要経費に算入することができるため、これらが家賃収入を上回れば、一部を除き税金が掛かることは無くなるだろう。

資産管理会社を有効活用しよう

日本では、高齢世帯が資産を多く所有しているため、相続税を始めとした資産課税は今後も強化される可能性が高い。資産に対する課税が強化されるのであれば、資産を管理するためには資産管理会社を設置し、必要経費を使ってでもマネジメントをした方が有利になる可能性がある。

世代間で資産を移転する手段としても、資産管理会社は十分なメリットがある場合が多いので、ぜひ一度検討をしてみてもいいだろう。

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