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国税庁が取締強化 タワーマンション節税のいま

camera_alt (写真=Volodymyr Kyrylyuk/Shutterstock.com)

ここ数年、相続税の節税策として「タワーマンション節税」が富裕層を中心に利用されていた。しかし、昨今、タワーマンション購入による過度な相続税の節税について、国税庁が課税を強化するよう全国の国税局に指示したとされている。階層や購入価格にかかわらず一律となっている相続税の「評価額」を高層階ほど引き上げ、節税効果を薄める方針だ。

タワーマンション節税とは

タワーマンションはなぜ相続税の節税策に利用できるのだろうか。それは、相続資産のうち、現預金等の金融資産をタワーマンションに組み替えることで相続税評価を下げ、相続税を節約することができるためである。タワーマンション節税のポイントを3つに分けて解説しよう。相続税法上、相続財産は原則として、相続で取得した際の時価を課税標準としている。

1. マンションの相続税評価額の決定方法を利用
マンションの相続税評価額は、建物と土地、別々に計算される。居住用建物の評価額は、固定資産税評価額と同額になる。 土地の評価額は、敷地全体の面積を専有部分の面積で按分して各戸の持分が決まるのが一般的である。つまり、階数が高いマンションほど居住戸数が多くなりやすく、各戸の土地の持分は小さくなり、土地の評価額も小さくなる仕組みとなっている。

2. 賃貸にだして評価額を圧縮
相続税法では、賃貸にだしている不動産は、実需の不動産よりも評価額を下げる計算方法を採用している。購入したタワーマンションの部屋を賃貸にだすことにより、さらに評価額を下げることができるわけだ。マンションを賃貸物件にしていれば、土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」となり、借地権割合と借家権割合に応じて評価額が圧縮される。

3. 階数による実勢価格の格差を利用
マンションの評価額は、相続税評価において、間取りや広さが同じ部屋であれば、固定資産税評価額が変わらないため、相続税評価額も変わらないのが現状であった。1階でも中間階でも最上階でも同じである。一方、実勢価格(売買価格)は階数が上になるほど高くなるのが一般的である。特に階数の高いタワーマンションでは、その価格差が大きくなりやすい。つまり、タワーマンションの最上階や上層階の住戸を購入すると、より大きな評価額の圧縮効果が得ることができる。

タワーマンション節税のいま

平成29年度税制改正の大綱では、タワーマンションの階層による実勢価格の違いを考慮し、高層階の部屋ほど固定資産税額の負担を増やす見直しが公表された。

具体的には、「20階建て(高さが60m)を超える超高層建築物のうち、複数の階に住戸が所在しているタワーマンションについては、1棟のタワーマンションに係る固定資産税額を按分する基準となる各専有部分の床面積を階層別専有床面積補正率により補正する」という見直しが行われた。階層別専有床面積補正率とは、階層が1階上がると税額の按分の基となる床面積が約0.26%大きくなるように設定された補正率を言う。つまり、高層階ほど按分の基準となる床面積が増え、固定資産税額が増額し、増税となる。

タワーマンション節税の今後

なお、上記は固定資産税額の按分についての見直しであり、固定資産税評価額について、見直しはないことからタワーマンションに係る財産評価については、現状においては特に影響はない(2017年1月現在)。

ただタワーマンションに限らず相続財産の評価は、財産評価基本通達に基づき、その価値を評価する。同通達第6項には「この通達の定めにより評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定されている。国税当局はこれを根拠に課税を強化する方針とのことである。

今後も当局の解釈によって、評価額は変わってくる可能性がある。タワーマンションに限らず、節税や資産の圧縮を考えているようならば、自分だけで判断せず、税理士など専門家にしっかり相談して頂きたい。

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