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令和4年度与党税制改正大綱

camera_alt Shutterstock_ 寄稿者 New Africaさん

はじめに

2021年12月10日、与党税制改正大綱が公表されました。新型コロナウィルスの発生から2年が経過し、景気の動向が思わしくない中、小粒な改正にとどまりました。その中で特に注目すべき改正点をピックアップします。

賃上げ税制

一定以上の賃上げを行った企業については従来よりも有利な税額控除を認めるとともに、賃上げに消極的な大企業については研究開発税制等の適用を受けられなくし、賃上げを促進するためアメとムチの対応をしています。

(1)新規雇用者に係る措置の改組

従来は新規雇用者に対する給与等を対象としていましたが、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合で判定されることとなりました。

この増加割合が3%以上である場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額を税額控除できます。更に増加割合が4%以上である場合は税額控除率が10%増加し、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であるときは、税額控除率が5%増加します。つまり最大30%の税額控除が可能であり、従来の最大20%より有利な制度となっています。

(2)中小企業者等における所得拡大促進税制の強化

従来は雇用者給与等支給額の増加と教育訓練費の増加の両方を満たす場合にのみ上乗せが受けられましたが、それぞれに対して上乗せが認められるようになりました。

原則の税額控除が15%であることは従来と同じですが、雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が2.5%以上である場合には税額控除率が15%増加します。教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上である場合には税額控除率が10%増加します。つまり最大40%の税額控除が可能であり、従来の最大25%より有利な制度になっています。

(3)大企業に対する研究開発税制等の継続雇用者給与等支給額に関する要件の厳格化

従来は、継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額を超えていれば適用が受けられましたが、令和4年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度では0.5%以上、それ以降は1%の増加を求められることとなりました。

住宅ローン控除

低金利が長期間継続している状況を鑑み控除率の減額が行われると共に、厳しい財政状況を踏まえ適用対象者の所得要件を厳格化しました。対象となる家屋についてSDGsの観点からか、中古物件や狭い物件について対象を広げるとともに新築物件について一定の省エネ基準を求める内容になっています。

(1)控除率

1%から0.7%に引き下げられます。

(2)借入限度額と控除期間

住宅の種別

居住年

借入限度額

控除期間

認定住宅

令和4年・令和5年

5,000万円

13年

令和6年・令和7年

4,500万円

ZEH水準
省エネ住宅

令和4年・令和5年

4,500万円

令和6年・令和7年

3,500万円

省エネ基準
適合住宅

令和4年・令和5年

4,000万円

令和6年・令和7年

3,000万円

①~③の
中古物件

令和4年・令和5年

3,000万円

10年

令和6年・令和7年

上記以外
の新築物件

令和4年・令和5年

3,000万円

13年

令和6年・令和7年

2,000万円

10年

上記以外の
中古物件

令和4年・令和5年

2,000万円

令和6年・令和7年

(3)所得要件

合計所得金額3,000万円以下を2,000万円以下に引き下げます。

(4)合計所得金額が1,000万円以下の年分の特例

床面積が40㎡以上50㎡未満である新築住宅についても適用があります。

(5)令和6年7月1日以降の新築住宅に対する制限

一定の省エネ基準を満たさない場合は適用できなくなります。

(6)中古住宅に対する築年数要件の廃止

従来は新築後20年以内等の制限がありましたが、昭和57年1月1日以降に建築された家屋は新耐震基準に適合していることとするという取り扱いに変更されました。

住宅取得等資金の贈与の特例

適用期限が2年延長になるとともに、非課税限度額の縮小や家屋の要件の変更、民法の改正に即した対象年齢の変更が行われました。

(1)非課税限度額の縮小

従来は、消費税率が10%か否か、契約日がいつか、省エネ住宅か否かにより、非課税限度額が500万円から2,500万円まで10の区分がありました。

改正により、省エネ住宅1,000万円とそれ以外の住宅500万円に簡素化されました。

(2)中古住宅に対する築年数要件の廃止

住宅ローン控除と同様の変更が行われました。

(3)受贈者の年齢要件の変更

民法の成年年齢の変更に伴い、令和4年4月1日以降は受贈者の年齢が20歳以上から18歳以上に変更されます。

商業地等の固定資産税等の軽減

商業地等の固定資産税及び都市計画税は、負担水準が60%未満の土地については、従来は課税標準額を前年の課税標準額に本年の評価額の5%を加算して計算していますが、この加算する金額が評価額の2.5%に軽減されます。

令和3年度は住宅地も商業地等も前年の課税標準額と同額とする軽減措置が講じられていましたが、令和4年度は商業地等に限定し、軽減額も縮小されました。

財産債務調書制度等

令和5年分以後の財産債務調書と国外財産調書について下記の変更が行われます。

(1)財産債務調書の提出義務者の拡大

対象年の年末に財産の総額が10億円以上である居住者も対象に加わりました。

(2)提出期限の変更

翌年3月15日が翌年6月30日に変更されました。

(3)宥恕規定の見直し

提出期限後に提出された場合に宥恕規定が適用されるのは調査通知前に提出された場合に限るものとされました。

(4)記載事項の見直し

記載省略できる「その他の動産の区分に該当する家庭用財産」の取得価額の基準を、従来の100万円未満から300万円未満へと緩和されました。

減価償却の特例を利用した節税策の封じ込め

ドローン等の少額な固定資産を多量に取得し他に貸し付けることにより、取得価額を即時ないし3年で損金算入できることを利用して、本業の所得を圧縮し課税を将来に繰り延べるという手法に対策が取られました。

所得税においても法人税においても、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度・一括償却資産の損金算入制度・青色の中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例は、主要な事業として行われる場合を除き、貸付の用に供した資産には適用されないことになりました。これにより損金算入時期を前倒しして課税を繰り延べる手法が封じられることになります。

おわりに

前回の与党税制改正大綱P.18に「②資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」という項目があったため、贈与税の改正があるのではないかとご心配になった方が多かったようです。結果的に今回改正はなく、前回と同様の文面がP.10に掲載されています。

税制は単に税金を集めるためだけではなくあるべき社会を構築するための手段として用いられています。税制改正を見ることで政府の将来に対する考え方を知ることができますのでご注目いただければと願っております。


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